隣席の亥清くんと友達になりました
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店員さんは片付けの手を止めて小走りでキッチンカーに戻り、カウンターからひょこっと顔を出した。
「すみません、まだやってますか?」
「もちろん! ……とは言っても切らしてる材料も多いから出せないものが多いけどね」
ごめんね、と謝りながらメニュー表を指さしまだ提供できる商品を教えてくれた。
話を聞きながら、片付け作業をしていたくらいだから今日はこのまま店仕舞いをしようとしていたのかもしれないと思った。学校を出た時は明るかった空は、今や日が落ちかけていることで若干薄暗くなってきている。この時間帯はお客さんの人数も減ってくるだろう。飲食店でアルバイトをしているおかげで培った知識が脳内を過った。
「じゃあ、イチゴホイップで」
「オレは――バナナチョコ」
今食べたら夕飯が――と思いつつ、メニュー表に載っている写真に惹かれてイチゴがたっぷり乗せられたクレープを潔く注文した。
亥清くんはというと、迷っているのかメニュー表に視線を落としたまま数秒沈黙。そして、口を開く前に私の方を見た亥清くんと目が合い、少し肩を揺らして言い淀んだ。私が首を傾げると、サッと目を逸らされてしまう。その妙な反応に更に傾げた。
その後、何事もなかったかのように注文を終えてレジのディスプレイに金額が表示されると、私は素早く財布からお金を取り出してトレーに乗せる。亥清くんは、店員さんがトレーを引き寄せたことに気付いたのか財布を片手に持ったまま「あっ」と驚いた声を出した。
「ありがとう。すぐに準備するね」
お釣りの受け渡し後に店員さんが車内に引っ込んでいくのを見送っていると、すぐ横から無言の圧力を感じて思わず冷や汗をかいた。
「いや、これお礼だから! さっき亥清くんも言ってたじゃん!?」
「……そうだけどさ」
まだ何も言われていないのにひとりで慌てる私が面白かったのか、それとも呆れているのか――最終的に亥清くんは笑って財布を鞄に戻した。
「お待たせしましたー!」
暫く他愛ない話を交わしながら待っていると割と早く店員さんが戻ってきて、カウンター越しにひとつずつクレープが差し出される。
「ありがとうございます!――おぉ」
「ありがとう、ございます」
思っていたよりボリュームのあることに驚いていると亥清くんの手にも渡った。――その時、一瞬亥清くんを見て店員さんが目を見開いたのが見えて思わず「あっ」と声が自分の口から溢れた。
「――今月いっぱいは出店してるから、また時間がある時に寄ってくれたら嬉しいな」
だがそれはほんの一瞬のことで、すぐに笑顔に戻りそれ以上のことは何も言わなかった。他のお客さんにも言っているであろう当たり障りのない言葉で締め括られた。
すぐに背を向けて歩き出した亥清くんを追いかける。が、ふと気になってしまい後ろを振り向いた。すると、まだキッチンカーのカウンターから顔を覗かせていた店員さんと目が合った。
「――――」
店員さんは私と目が合ったことに一瞬驚いていたが笑顔で軽く手を振り、今度こそ姿が見えなくなった。
「だ、大丈夫かな……」
「気付かれるのって、なにも悪いことばかりじゃないんだよね」
「え?」
そんなことを考えていると背後からそう声が聞こえて振り向く。すると、亥清くんがクレープに食らいつきながらこちらを見つめている。首を傾げながら彼をじっと見ているとあることに気付いた。
亥清くんのクレープに刺さっている数本の棒状のお菓子。これはメニュー表に載っていた写真には乗ってなかったものだった。
――もしかして、これのことを言ってる?
何ともまぁ、楽観的な。
苦笑いを溢しながら亥清くんの横顔を見る。甘い、と小さく頬を緩める表情から目が離せないでいると、
「ちょっ、潰れてる!」
「えっ――うわっ」
どうやら無意識のうちに手に力が入っていたらしい。持っていたクレープを強く握ってしまっていたようで、中身のフルーツやクリームが上に押し上げられていた。幸い中身が溢れることはなくホッと息をはくと、亥清くんに笑われてしまった。
「すみません、まだやってますか?」
「もちろん! ……とは言っても切らしてる材料も多いから出せないものが多いけどね」
ごめんね、と謝りながらメニュー表を指さしまだ提供できる商品を教えてくれた。
話を聞きながら、片付け作業をしていたくらいだから今日はこのまま店仕舞いをしようとしていたのかもしれないと思った。学校を出た時は明るかった空は、今や日が落ちかけていることで若干薄暗くなってきている。この時間帯はお客さんの人数も減ってくるだろう。飲食店でアルバイトをしているおかげで培った知識が脳内を過った。
「じゃあ、イチゴホイップで」
「オレは――バナナチョコ」
今食べたら夕飯が――と思いつつ、メニュー表に載っている写真に惹かれてイチゴがたっぷり乗せられたクレープを潔く注文した。
亥清くんはというと、迷っているのかメニュー表に視線を落としたまま数秒沈黙。そして、口を開く前に私の方を見た亥清くんと目が合い、少し肩を揺らして言い淀んだ。私が首を傾げると、サッと目を逸らされてしまう。その妙な反応に更に傾げた。
その後、何事もなかったかのように注文を終えてレジのディスプレイに金額が表示されると、私は素早く財布からお金を取り出してトレーに乗せる。亥清くんは、店員さんがトレーを引き寄せたことに気付いたのか財布を片手に持ったまま「あっ」と驚いた声を出した。
「ありがとう。すぐに準備するね」
お釣りの受け渡し後に店員さんが車内に引っ込んでいくのを見送っていると、すぐ横から無言の圧力を感じて思わず冷や汗をかいた。
「いや、これお礼だから! さっき亥清くんも言ってたじゃん!?」
「……そうだけどさ」
まだ何も言われていないのにひとりで慌てる私が面白かったのか、それとも呆れているのか――最終的に亥清くんは笑って財布を鞄に戻した。
「お待たせしましたー!」
暫く他愛ない話を交わしながら待っていると割と早く店員さんが戻ってきて、カウンター越しにひとつずつクレープが差し出される。
「ありがとうございます!――おぉ」
「ありがとう、ございます」
思っていたよりボリュームのあることに驚いていると亥清くんの手にも渡った。――その時、一瞬亥清くんを見て店員さんが目を見開いたのが見えて思わず「あっ」と声が自分の口から溢れた。
「――今月いっぱいは出店してるから、また時間がある時に寄ってくれたら嬉しいな」
だがそれはほんの一瞬のことで、すぐに笑顔に戻りそれ以上のことは何も言わなかった。他のお客さんにも言っているであろう当たり障りのない言葉で締め括られた。
すぐに背を向けて歩き出した亥清くんを追いかける。が、ふと気になってしまい後ろを振り向いた。すると、まだキッチンカーのカウンターから顔を覗かせていた店員さんと目が合った。
「――――」
店員さんは私と目が合ったことに一瞬驚いていたが笑顔で軽く手を振り、今度こそ姿が見えなくなった。
「だ、大丈夫かな……」
「気付かれるのって、なにも悪いことばかりじゃないんだよね」
「え?」
そんなことを考えていると背後からそう声が聞こえて振り向く。すると、亥清くんがクレープに食らいつきながらこちらを見つめている。首を傾げながら彼をじっと見ているとあることに気付いた。
亥清くんのクレープに刺さっている数本の棒状のお菓子。これはメニュー表に載っていた写真には乗ってなかったものだった。
――もしかして、これのことを言ってる?
何ともまぁ、楽観的な。
苦笑いを溢しながら亥清くんの横顔を見る。甘い、と小さく頬を緩める表情から目が離せないでいると、
「ちょっ、潰れてる!」
「えっ――うわっ」
どうやら無意識のうちに手に力が入っていたらしい。持っていたクレープを強く握ってしまっていたようで、中身のフルーツやクリームが上に押し上げられていた。幸い中身が溢れることはなくホッと息をはくと、亥清くんに笑われてしまった。