隣席の亥清くんと友達になりました
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「こんな道のど真ん中で何やってんの?」
肩を叩かれたことで身体を大きく揺らし、咄嗟に前に一歩進みながら後ろを振り向くと、そこには亥清くんがいた。
「ビックリし過ぎだろ」
「まだ残ってると思ってなかったから……」
「それこっちのセリフだから」
驚いた衝撃で肩からずり落ちた鞄を掛け直していると、亥清くんはグラウンドの方をじっと見つめながら口を開く。
「……サッカー部?」
「そう」
亥清くんの視線を辿ると、部員の誰かがシュートを決めたところだった。残念ながらクロスバーに当たってしまい、ゴールとはならなかったようだ。
「なんか、こうやって見てるとあの人が女子に人気な理由が分かるな」
この学校は基本的に容貌が優れている人がたくさんいる。それは芸能活動をしており、人一倍気にかけている人が多いからだ。
そして、あのサッカー部のキャプテンも例外ではなかった。先程ほんの少しだけだが彼の人柄に触れてみて、皆が言う『かっこいい』が分かった気がする。
「……ああいうの好きじゃないの」
「え?」
グラウンドから聞こえてくる掛け声に負けてしまうくらいの小さな声を拾い、隣に立っている亥清くんを見た。いつの間にか少し動いたら肩が触れ合う距離にいたようで思わず目を見張る。近くから見る亥清くんの表情は、丁度横髪が掛かっていたせいでよく見えなかった。
「あんたも女子でしょ。興味ない?」
「あぁ……」
数秒前に自分が言った言葉を思い返せば、かなり他人行儀だったかもしれない。
だって、実際他人事なのだから仕方がない。
「だって、近くに亥清くんがいるんだよ? 嫌でも目が肥えちゃうよ」
「嫌でも、は余計だろ」
実をいうと、目が肥えてしまったのはこの学校に入学してからすぐだったように思う。最初の数ヶ月は校内のどこを歩いても美男美女ばかりで、廊下で同級生と談笑している人達全員が輝いて見えた。しかし、最初どんなに新鮮に見えても数日経てば慣れてしまう。
最近では、亥清くんと仲良くなってから更に目が肥えたように感じる場面が増えてしまった気がするのは気のせいではないだろう。
「えっ、どうしたの?」
「別に!」
いきなり静かになった隣を不思議に思い、再び亥清くんを見る。相変わらず表情は分からなかったが、声を掛けると目が合った。その一瞬目を見開いたかと思えば、ふいっと顔を背けて私を追い越し先を行ってしまう。
気を悪くさせた――のか? 目が合った時はそうは思わなかったが。
どうにかして感情を読もうと唸っていると、亥清くんが数歩行った先でいきなりくるりと身体を半回転させてこちらを向いた。さっきとは違い、しっかり私の目を見つめた状態で。
「ねぇ、クレープ食べに行こ」
前触れもなく放たれた言葉に、思わず目を丸くした。クレープといえば、先日話した件――試験勉強に付き合ってもらったお礼がしたいと私が言った、あれのことだ。
確かに先程休憩時間に「今日は予定が無いから暇だ」というような話はしたが、驚いてしまった。なんだかんだで有耶無耶になるのではと思っていたからだ。
「……今から?」
「そう」
返ってくる言葉は分かりきっていたが、念の為に聞いてみた。言うまでもなく予想通りの返事だった。
それに加え彼の表情と声色は妙に自信がありげな様子に見え、思わず笑みを溢す。亥清くんの頭の片隅に私との約束を置いておいてくれたことが嬉しかったのだ。
「お礼してくれるんじゃなかったの?」
私がいつまでも何も言わないからか、次第に眉を顰める亥清くんを見て慌てて口を開く。
「するする!」
「じゃあ決まりな」
目の前には、優しい笑顔が浮かんでいた。
「この時間でもやってるかな」
「どうだろう。最悪終わってるかも」
「無駄足踏むことになりそうな予感がする……」
肩を叩かれたことで身体を大きく揺らし、咄嗟に前に一歩進みながら後ろを振り向くと、そこには亥清くんがいた。
「ビックリし過ぎだろ」
「まだ残ってると思ってなかったから……」
「それこっちのセリフだから」
驚いた衝撃で肩からずり落ちた鞄を掛け直していると、亥清くんはグラウンドの方をじっと見つめながら口を開く。
「……サッカー部?」
「そう」
亥清くんの視線を辿ると、部員の誰かがシュートを決めたところだった。残念ながらクロスバーに当たってしまい、ゴールとはならなかったようだ。
「なんか、こうやって見てるとあの人が女子に人気な理由が分かるな」
この学校は基本的に容貌が優れている人がたくさんいる。それは芸能活動をしており、人一倍気にかけている人が多いからだ。
そして、あのサッカー部のキャプテンも例外ではなかった。先程ほんの少しだけだが彼の人柄に触れてみて、皆が言う『かっこいい』が分かった気がする。
「……ああいうの好きじゃないの」
「え?」
グラウンドから聞こえてくる掛け声に負けてしまうくらいの小さな声を拾い、隣に立っている亥清くんを見た。いつの間にか少し動いたら肩が触れ合う距離にいたようで思わず目を見張る。近くから見る亥清くんの表情は、丁度横髪が掛かっていたせいでよく見えなかった。
「あんたも女子でしょ。興味ない?」
「あぁ……」
数秒前に自分が言った言葉を思い返せば、かなり他人行儀だったかもしれない。
だって、実際他人事なのだから仕方がない。
「だって、近くに亥清くんがいるんだよ? 嫌でも目が肥えちゃうよ」
「嫌でも、は余計だろ」
実をいうと、目が肥えてしまったのはこの学校に入学してからすぐだったように思う。最初の数ヶ月は校内のどこを歩いても美男美女ばかりで、廊下で同級生と談笑している人達全員が輝いて見えた。しかし、最初どんなに新鮮に見えても数日経てば慣れてしまう。
最近では、亥清くんと仲良くなってから更に目が肥えたように感じる場面が増えてしまった気がするのは気のせいではないだろう。
「えっ、どうしたの?」
「別に!」
いきなり静かになった隣を不思議に思い、再び亥清くんを見る。相変わらず表情は分からなかったが、声を掛けると目が合った。その一瞬目を見開いたかと思えば、ふいっと顔を背けて私を追い越し先を行ってしまう。
気を悪くさせた――のか? 目が合った時はそうは思わなかったが。
どうにかして感情を読もうと唸っていると、亥清くんが数歩行った先でいきなりくるりと身体を半回転させてこちらを向いた。さっきとは違い、しっかり私の目を見つめた状態で。
「ねぇ、クレープ食べに行こ」
前触れもなく放たれた言葉に、思わず目を丸くした。クレープといえば、先日話した件――試験勉強に付き合ってもらったお礼がしたいと私が言った、あれのことだ。
確かに先程休憩時間に「今日は予定が無いから暇だ」というような話はしたが、驚いてしまった。なんだかんだで有耶無耶になるのではと思っていたからだ。
「……今から?」
「そう」
返ってくる言葉は分かりきっていたが、念の為に聞いてみた。言うまでもなく予想通りの返事だった。
それに加え彼の表情と声色は妙に自信がありげな様子に見え、思わず笑みを溢す。亥清くんの頭の片隅に私との約束を置いておいてくれたことが嬉しかったのだ。
「お礼してくれるんじゃなかったの?」
私がいつまでも何も言わないからか、次第に眉を顰める亥清くんを見て慌てて口を開く。
「するする!」
「じゃあ決まりな」
目の前には、優しい笑顔が浮かんでいた。
「この時間でもやってるかな」
「どうだろう。最悪終わってるかも」
「無駄足踏むことになりそうな予感がする……」