病院の中庭を散歩していると、子ども達の歓声が聞こえてきた。

「わーっ、すごぉい！」
「せんせー！もっかいやって！」

声のする方向を見ると、部屋着やパジャマを着た子ども達に囲まれ、一人の若い医者がゲーム機で遊んでいるのが見えた。

(あ、宝生先生だ...！)

その人は私の密かな想い人でもあり、近付いて声をかけようと思ったが、ゲームに夢中になっている表情をしばらく見ていたくて、そのまま眺めてみることにした。

片想い中の相手、宝生永夢先生は1年前に私がこの病院に診察に訪れた時に研修医として見てもらったことのある人だった。正直に言うと完全に一目惚れだった。功か不幸か、１ヶ月前に病で入院した際も一度しか会ってない私をしっかりと覚えていてくれて、小児科医として活躍している現在も院内で会えば声を掛けてくれるような、素敵な先生だった。

近くのベンチに座って眺めていると