02. The first step is always the hardest.
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化粧を教える目処が立ったからと前回と同じカフェで待ち合わせ、場所は幸恵の家の一室を使うと伝えるとユーリは盛大に顔をしかめて難色を示した。
「あなた、一人暮らしと言っていませんでしたか?」
「確かに言いたいことはわかるけど、他に良い場所もないからさ」
「僕が強盗でも働いたらどうするつもりですか」
「その時は速やかに通報してヒーローに登場してもらおうかな」
「ヒーローの出動要請を承認するのは司法局です。それも事件が発覚し、現行犯であることが確認されてやっとヒーローへの出動指示が下されます」
「さすが法学部。詳しいね」
「つまり僕が、天宮さんを襲って殺したのちに自宅を物色して逃げるだけの時間の余裕があると言うことです。お姉さんに僕が来ることを伝えていたとしても、事件の発覚までには相当時間が空く事になる。大体、僕が凶悪な能力のNEXTである可能性を考慮していないでしょう」
眉間に深くシワを寄せたユーリがあんまりにも真面目にそんなことをいうものだから、幸恵はつい笑ってしまった。
「僕はふざけて言ってるわけじゃ」
「ごめんごめん、わかってる。だけど私の想像の百倍は凶悪な想像してるから、つい。っていうかホントにそんなこと考えてる人なら、そんなこと言わないでしょ」
「天宮さん、あなたブロンズステージで一人暮らしの女性が犯罪被害に遭うケースがどれほどあるか」
「わかってるわかってる。もちろん男の人を家に呼ぶって事のリスクについてもちゃんと考えた上で、ペトロフさんなら大丈夫だと思って提案してるよ」
「とてもそうは見えませんが」
しかし他にいい考えがあるわけでもないからか、ついには化粧を教わるのを考え直した方がいいかもしれないと言い始めたユーリに今度は幸恵の方がきちんと考えてのことだと言葉を尽くす事になった。
そうして最後には苦々しく頷いたユーリだったが、そこからまた一悶着あった。
化粧を教わる日は必ず事前に電話かメールで約束すること。
家に行くときは先日と同じカフェで待ち合わせをすること。
ユーリが直接家に行くことはないので、ユーリの名前を騙る誰かが尋ねてきたらすぐに通報すること、など。
細かくルールを決め出すものだから、幸恵はその真面目さにうっかりにやけてしまわないよう必死で表情を引き締める事になったのだった。
そしてユーリ・ペトロフという人間の本質は、姉の友恵や虎徹と同じ善き人であるのだろうと思った。
自分よりもまず最初に他者のことを思う。
相手が危険に晒されるとなれば、自分が不利益を被ってでも相手の為の行動をとる。
言葉にすればたったそれだけのことだが、実際にそうできる人というのはほとんどいない。
ユーリは幸恵こそまるで警戒心のないお人好しのように言うが、たとえユーリが何かをしようと目論んだとしても対処できる自信があるからこその提案でもあった。
なんなら幸恵は電話一本でワイルドタイガーを呼び出すことだってできるのだ。
それにユーリ一人なら幸恵でも制圧できるだけの手段がある。
そうとは知らないユーリが真剣に幸恵の防犯意識について頭を悩ませているのをみると、なんとも言い難いくすぐったさで顔がにやけそうになった。
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