01. So many people So many colors
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ユーリに化粧を教える事自体はいい。
幸恵#も化粧や服の合わせ方などは天宮姉妹のおしゃれな方と名高い友恵に色々相談しながら身につけて来たのだから、今度は幸恵が同じことをユーリにするだけだ。
そうなるとユーリはまるで妹のようなものかもしれない、なんて一瞬よぎった冗談はさておき。
「お願いした上で教えていただくのですから、報酬をお支払いするのは当然でしょう」なんて言い出したユーリを思いとどまらせるのが最初の難関だった。
幸恵が美容部員だとかメイクアップアーティストであるなら、仕事の報酬として受け取ることもできるが、できるのはそれっぽく見せる素人の日常メイクだ。
もちろん教えると言ったからには言葉にしか聞いたことのないメディカルメイクについても調べるつもりではあるが、それでも付け焼き刃のアドバイスどまりでしかない。
でも、だけど、払う、いらない。
そんな押し問答を続けた末、少々ズルイとは思いつつも勤労すらできない苦学生から受け取るわけにはいかないという方向でどうにか鉾を収めさせた。
「そしたら今度は相談料としてここは僕は支払いますので、って最後まで譲らなくて。気弱そうに見えてほんと頑固ったらないんだから」
「きっとその人も幸恵が頑固だって思ってるかもしれないわね
「えー、私そんな頑固かな。フツーだと思うんだけど」
納得がいかないと唇を尖らせれば、背を向けてハーブティーを入れているはずの友恵は「そういうとこよ」とまるで見えているかのようにくすくす笑った。
「てゆーか、本当にお腹大丈夫? いきなり来てる私が言うのもアレだけど。お茶くらい自分で淹れるのに」
「いいの。虎徹くんなんて家にいたら私をソファに座らせっぱなしで一歩も歩かせてくれないんだから。幸恵にお茶淹れるぐらいさせてちょうだい」
言いながら振り返った友恵は幸せいっぱいだと隠す気もないような柔らかな顔をしていた。
それもそのはず友恵は現在妊娠四ヶ月。
つまりそのお腹の中には幸恵にとって甥か姪になる命が宿っているということでもある。
妊娠発覚直後はそれはもう大騒ぎだった。
特に義兄の虎徹は喜びと心配で全く落ち着かず、むしろお前が落ち着けと周囲から諭され叱られ、直属の上司のベンからはゲンコツを一つ頂戴したほどだ。
幸恵もこれから大変になるだろうと育児書や、妊娠中の過ごし方などについて調べて姉夫婦をしっかり支える心づもりだったが、天宮姉妹の活発な方と有名な友恵はつわりもほとんどない元気な妊婦として日々を過ごしていた。
流石に仕事は在宅に切り替えて外出は控えているらしいが、それでも家事をテキパキこなすので義兄には「幸恵ちゃんからも言ってやってくれよぉ」と縋り付かれる毎日だ。
ユーリには出版社の事務職だと名乗ったが、実際の肩書きは少し違う。
出版社トップマグに在籍するヒーロー、ワイルドタイガーの専属マネージャーというのが、幸恵の本当の仕事だ。
本来虎徹が自分でやるべき事務作業や書類手続きの一部も代行しているため事務職というのも嘘というほどではないが、メインはワイルドタイガーのスーツや装備品のメンテナンスや改良などを専門とする技術職だ。
虎徹の能力を知り、かつ妻の妹という身近な存在であることに加えて、理工学部に在籍していたという経歴。
まさに御誂え向きだと虎徹経由でベンに紹介され、虎徹の雇用と同時にトップマグにヘッドハントされて現在に至る。