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いつしか二人でいるのが当たり前になった。互いの不完全な部分を埋めて、喜びも痛みも分かち合った。それでも足りなくて、見えないものがある。人間であるうちはそうなのだろう。すべてが溶けて同じになることなどなく、アインはアインの、彼女は彼女の形をしている。今も並んで同じ音楽を聞いているけれど、きっと違う世界を聞いている。音楽は、聞く人によって変わるものだから。
「あ、あれ……?」
声の主につられ、どうしたんだと疑問を口に出す前に、思考が止まった。ほろほろと溢れた水滴が、呆然とした表情の娘を彩って、絵画のように美しくしていた。喜怒哀楽にあふれる彼女の、だが哀を見る機会は殆どない。意味もなく、じっと見つめてしまう。そのうちに気づく。
彼女が湛える涙はまるで、キラキラしてる飴玉みたいだ。かがんで、彼女の頬に唇を這わせて舐めとる。甘じょっぱい味が口の中に広がって、心までゆっくりと伝っていく。
音楽というのは時折人の心に味付けをする。彼女と二人聞くこの音色に、一抹の寂しさが紛れていたのなら、飴玉が転がることもあるのだろう。イヤホンを分け合っているだけではわからない些細な感情の流れが、目の前に形として表れてはじめて、アインは彼女の世界を感じ取るのだ。
「アイン……?」
小さく、縋りつくような音色が。じんわりと耳を伝って己の内側に響いていく。流れていた音楽は止まっている。世界から隔絶された、二人ぼっちの庭園にいるみたいだ。ずっとこのままだったらいいのにと思う。なににも邪魔されず、ただお互いを享受するだけのこの瞬間を、永遠にできたらいいのに。
「」
名前を、呼ぶ。溢れだしそうな感情を余すことなく籠めて。吹く風にかき消されそうなほど小さなそれは、彼女の耳に届いたのだろうか。不意にふに、と頬に頬をくっつけられた。珍しい。確かに愛情表現の一環であるそれを、アインは好んでいる。恋人にだけ許した甘える仕草。それを彼女の方からやってくるなんて、どうしようもなくかわいらしくて、愛おしくなる。
「アイン、あのね」
「なんだ」
「寂しくなっちゃったから、手を繋いで?」
「それだけでいいのか?」
「うん、そう」
言うとおりにしてやると、指と指がするすると絡まっていく。慣れた手つきで居心地のいい場所を確保した彼女は、先ほどまでの顔はどこへやら笑顔になっていた。ただそれだけの事に、アインは幸福感に満たされる。
どうせ泣くなら隣にいてほしい。キラキラ光る涙の飴玉を拭って、その瞳に僕だけを映して、笑顔に変えてみせるから。
「あ、あれ……?」
声の主につられ、どうしたんだと疑問を口に出す前に、思考が止まった。ほろほろと溢れた水滴が、呆然とした表情の娘を彩って、絵画のように美しくしていた。喜怒哀楽にあふれる彼女の、だが哀を見る機会は殆どない。意味もなく、じっと見つめてしまう。そのうちに気づく。
彼女が湛える涙はまるで、キラキラしてる飴玉みたいだ。かがんで、彼女の頬に唇を這わせて舐めとる。甘じょっぱい味が口の中に広がって、心までゆっくりと伝っていく。
音楽というのは時折人の心に味付けをする。彼女と二人聞くこの音色に、一抹の寂しさが紛れていたのなら、飴玉が転がることもあるのだろう。イヤホンを分け合っているだけではわからない些細な感情の流れが、目の前に形として表れてはじめて、アインは彼女の世界を感じ取るのだ。
「アイン……?」
小さく、縋りつくような音色が。じんわりと耳を伝って己の内側に響いていく。流れていた音楽は止まっている。世界から隔絶された、二人ぼっちの庭園にいるみたいだ。ずっとこのままだったらいいのにと思う。なににも邪魔されず、ただお互いを享受するだけのこの瞬間を、永遠にできたらいいのに。
「」
名前を、呼ぶ。溢れだしそうな感情を余すことなく籠めて。吹く風にかき消されそうなほど小さなそれは、彼女の耳に届いたのだろうか。不意にふに、と頬に頬をくっつけられた。珍しい。確かに愛情表現の一環であるそれを、アインは好んでいる。恋人にだけ許した甘える仕草。それを彼女の方からやってくるなんて、どうしようもなくかわいらしくて、愛おしくなる。
「アイン、あのね」
「なんだ」
「寂しくなっちゃったから、手を繋いで?」
「それだけでいいのか?」
「うん、そう」
言うとおりにしてやると、指と指がするすると絡まっていく。慣れた手つきで居心地のいい場所を確保した彼女は、先ほどまでの顔はどこへやら笑顔になっていた。ただそれだけの事に、アインは幸福感に満たされる。
どうせ泣くなら隣にいてほしい。キラキラ光る涙の飴玉を拭って、その瞳に僕だけを映して、笑顔に変えてみせるから。
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