retake sammer

 課題の山から解放された私は、ぐーっと腕をあげて背伸びをした。視界に入った窓の外には鮮やかな青空が見える。今日も平和だ。特にすることもなかった私は、スマホを開いてアインにメッセージを送った。
『今日はなにか予定ある?』
『なにも』
 返信は一瞬だった。反応の速さに流石と言わざるを得ない。
『お前は?』
『なにも決まってないんだよね』
 やっと課題が終わったところで、と伝える前にピコンと電子音が鳴る。喋るよりも文字を打つ速度の方が早いんじゃないかと思うくらい、彼のメッセージは特急便だ。
『もし僕が今すぐ会いたいと言ったら?』
 そんなの返事は一つだ。
『会いに行くよ』
 当たり前だ。アインと過ごす時間は私にとっては貴重で、どれだけあっても足りないものなのだから。よし、念押しで聞こう。『会いたいの? 今、この瞬間に?』スマホの向こうの彼もそうだとしたら、これほど嬉しいことはない。
『そうかもしれないな』
 肯定の言葉が返ってきて、自然と口元がほころんだ。
『会いたくなったら、いつだって、どこまでだって探しに行く。そして、必ずお前を見つける』
 続けて送られてきた文章に、アインの本気が伺えた。彼は、きっと私がどこに行っても、本当に探しに来てくれるだろう。理由なんてシンプルでいい。会いたいから。たったそれだけの気持ちが、私たちを無限に動かす動力源になる。
『ほら、お望み通り会いに来いよ。僕はもうお前の家の前につくけどな』
 画面に流れる言葉に導かれるように、勢いよく外へと飛び出した。暖かな風が髪を揺らす。笑顔の彼と目が合う。たまらず、私は飛び込むようにしてアインに抱きついていた。

 予定は未定。今日は彼と、なにをしようか。
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