retake sammer

 ロタツ先輩は、海が似合う。爽やかな印象だとか、スポーツが得意だとか、とにかく色々あって似合うのだ。私の視界の中で、海から上がってきた先輩がにこやかに笑う。ああ、こんな表情を見せられたら普通の女の子はあっという間に恋に落ちるだろう。しかも本人に自覚はないときた。
「どうしたの? そんなに真剣に見られたら視線が気になっちゃうよ」
「先輩が素敵すぎるんだよ」
「僕が?」
 隣に座った先輩にそう伝えたら、若草色の目を瞬かせ、きょとんとした顔をした。一つ一つの仕草があどけなく、こちらを魅了してやまない。このままだと彼の顔を見ていて一日が終わりそうだ。
「ねえ先輩」
 せっかく隣に来てくれたのだからと、そっと呼びかける。夏の砂浜は暑い。ビーチパラソルの影が、私たち二人を日差しから守ってくれている。その下で手に持ったラムネ瓶を掲げた。ここに来る途中で買ったそれは、今の時代となっては物珍しいものだ。
「こうしてるとさ、海の中を見てる気持ちになる」
「ラムネの瓶が、海?」
「そう」
 瓶越しに見れば、海が海底のように見える。世界が青に染まって、美しく鼓動しているようだ。この光景を切り取って額縁に入れられたら、どれだけ美しいことだろうか。
「それなら、ラムネの海の底を泳ぐのも、悪くないかもね」
 先輩に言われて気づく、海の青を通したラムネの瓶に、映る二人の姿。閉ざされた瓶の世界を彩る私たちは、視線を海からお互いに向ける。
「それは水中デートのお誘い?」
「そうだね。君が行きたいのなら、どこまでだって付き合うよ」
 そう言って先輩は私の手を取り、指を絡めた。繋がる一瞬を心から喜び、微笑んで、幸せそうに腕を揺らす。行こう、あのラムネの底へ。私たちはせーので立ち上がった。
 二人でなら何処へだって、何処までだって行けるから。
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