retake sammer
夜、眠れない日もある。理由は定かではないが、どうしたって目が冴えて、意識は闇の中ではっきりとしたままだ。理由が思い当たらない。この場所は世界で一番暖かくて、安心できる場所のはずなのに。
最近はなにかあったっけ。先輩と過ごす日々は穏やかで、時間が過ぎていくのを時々忘れてしまうほどだ。世界の命運など関係のないところで、この優しい時が続けばいいのに。そう思わずにはいられない。
「……眠れないのか?」
隣で寝ていたシーラン先輩の声がした。私がいつまでたっても眠れていないから、起こしてしまったのかもしれない。申し訳ない気持ちで顔を合わせれば、彼は眼鏡をかけていないからか、いつもより近い距離でこちらを見た。整った顔つきが、暗闇の中でもはっきりと見える。
「先輩、シーラン先輩」
名前を呼ぶ。彼との繋がりはこうして保たれている。相手を認識する魔法の言葉で、名前で。
「もの足りない……という顔をしているな」
そう言って彼は唇を重ねた。じんわりと伝わる熱が、思考をゆっくりと落ち着けていく。口づけはほんの数瞬で、そっと離れれば、私の視界に彼の背の向こうの窓に輝く月が見えた。
「月、満月だったらよかったのに」
欠けた月に、不思議なほど心が乱される。その様子を見ていた先輩が私の頭に手を乗せ、そっと撫でた。まるで子供をあやすように。
「こればかりはすぐに叶えてあげられないが、そうだな……」
「先輩?」
「なら、次の満月は二人で見よう」
約束がまた一つ、増える。これも彼との繋がりになる。相手が何処かへ行ってしまわないように。傍にいられるように、願いを込めて。彼の手に自分の手を重ねる。
その一連の動作を経て、シーラン先輩は私に笑いかけた。それはどんな星々よりも美しく、私の心を照らした。
「それなら君も、満足できるかもしれないからな
最近はなにかあったっけ。先輩と過ごす日々は穏やかで、時間が過ぎていくのを時々忘れてしまうほどだ。世界の命運など関係のないところで、この優しい時が続けばいいのに。そう思わずにはいられない。
「……眠れないのか?」
隣で寝ていたシーラン先輩の声がした。私がいつまでたっても眠れていないから、起こしてしまったのかもしれない。申し訳ない気持ちで顔を合わせれば、彼は眼鏡をかけていないからか、いつもより近い距離でこちらを見た。整った顔つきが、暗闇の中でもはっきりと見える。
「先輩、シーラン先輩」
名前を呼ぶ。彼との繋がりはこうして保たれている。相手を認識する魔法の言葉で、名前で。
「もの足りない……という顔をしているな」
そう言って彼は唇を重ねた。じんわりと伝わる熱が、思考をゆっくりと落ち着けていく。口づけはほんの数瞬で、そっと離れれば、私の視界に彼の背の向こうの窓に輝く月が見えた。
「月、満月だったらよかったのに」
欠けた月に、不思議なほど心が乱される。その様子を見ていた先輩が私の頭に手を乗せ、そっと撫でた。まるで子供をあやすように。
「こればかりはすぐに叶えてあげられないが、そうだな……」
「先輩?」
「なら、次の満月は二人で見よう」
約束がまた一つ、増える。これも彼との繋がりになる。相手が何処かへ行ってしまわないように。傍にいられるように、願いを込めて。彼の手に自分の手を重ねる。
その一連の動作を経て、シーラン先輩は私に笑いかけた。それはどんな星々よりも美しく、私の心を照らした。
「それなら君も、満足できるかもしれないからな
