retake sammer

 暑い日は冷たいアイスクリームが食べたくなる。移動販売のワゴンを見つけた私は駆け寄った。どの味にするか悩み、結局三段アイスにして楽しむ味を増やすことにした。
「あれ、アインはそれだけでいいの?」
「お前ほど欲張りじゃないからな」
 そんなアインの手に握られてるのはストロベリーチョコレートのアイスクリームだ。ピンクとチョコ色の合わさったコントラストが食欲をそそる。あれも美味しそうだ……。私がじっと見ていると、赤い瞳が呆れたように瞬いた。
「早く食べないと溶けるぞ」
 手元を見ると、三段に積まれた色とりどりのアイスが早く食べてと訴えている気がした。陽射しがじわじわと私たちを照らす。それに呼応してアイスもちょっとづつ溶けていく。よし、食べよう。ぱくっと一口齧れば、ふんわりとした甘いバニラの味が口いっぱいに広がる。
「美味しい」
 率直に感想が漏れ、私はアインの服の裾を引っ張った。
「アインこれ凄く美味しいよ」
 その言葉を確かめるかのように、彼の目線が私の手元に注がれる。じっと見つめ返され、吟味するように赤い瞳が瞬く。
「なら一口貰っても?」
 急なその言葉に私は固まった。そ、それって間接キスになるのでは。よこしまな考えが私の頭の中をぐるぐる回って、いいともだめとも答えられない。その隙に、アインは私のアイスに口を近づけると ──一口、齧った。
「落とすなよ、僕に全部食べられたくないならな」
 美味しい、と呟きながら彼の顔が離れる。思考の上を行く一瞬の出来事に、私は完全に固まった。
「お、落とさないもん!」
 これ以上からかわれる前に早く食べてしまおう。そう決意した私を横目にアインは笑った。齧れば口の中に甘くて心地よい味が広がる。でもきっと、それはアイスクリーム以外の要因もあるんだろう。彼といるその瞬間、引力のように惹かれていく私は、とても甘いのだから。
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