幸せの先には、優しい花が咲いていた。

「本当に行っちゃうんだね……」

 部屋の窓から顔を出して夜空を眺める。頬に当たる風は寂しさのせいか、いつもより冷たく感じた。

「一緒に居たいよ」

 また弱音を吐いてしまった。あの人はあたしとの幸せのために、この星を護るために渡米しようとしているのに。

「ダメだな、あたし」

 まもちゃんと違って視野が狭いというか、ワガママというか。いつもみんなに助けてもらってばかりで、自分のことばっかり言って。

「ちゃんと、笑えてるよね?」

 デートを断られた時の「大丈夫だよ」も「頑張って」も必死に作り出した笑顔も、きっとバレてる。

「じゃあ、何が正解なの?」

 月を見ながら自問自答する。自分の守護星だけど、答えは返ってこない。

「まもちゃん……」

 夜空の先にはいつも貴方がいる。それなら彼が見上げる空の先にも。

「あたしが、いる?」

 思えば前世の時代からそうだった。エンディミオンは地球から、あたしは月からお互いの星を眺めていたっけ。

「ふふっ。あたしたち、生まれ変わっても全然変わってないね」

 性格は違うのに、そんなところばかり似ている。それなら今頃、きっと彼も。

『うさ……オレはどうしたらいい?』

 月を通して見えたビジョン。それはまもちゃんが悩み苦悩している姿だった。

「待ってて、今行くから!」

 あたしは上着を羽織って玄関へ駆け出した。





 さっきのビジョンが何だったのか分からないけれど、きっと繋がっているから起きた奇跡なんだ。今ちゃんと伝えなきゃ後悔すると直感したあたしは、急いでまもちゃんの元へ向かっていた。

「いつまで甘えてんだ、オレは!」

 道角を曲がると、ピシャリと頬を叩く音が聞こえた。貴方は甘えてなんかいない。いつだってあたしを護ってきてくれたじゃない。あたしはゆっくりと彼に近づきながら口を開いた。

「いいんだよ、甘えて」
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