あの唄を覚えてる
「うさ、もう一度、あの唄を唄わないか?」
うさなら、あの唄を覚えていると思って訊いた。少しでも歌詞やメロディを聞けば、オレも思い出せるはずだと思っていた。
「うん。……でも、どんな歌詞だっけ? タイトルすら覚えてないの」
「あ、ああ……実はオレもうさに聞こうと思ってた」
オレとうさは互いに目を合わせて、苦笑いをした。オレは静寂に耐えきれず、アイスコーヒーを一口含んだ。
「うーん、それじゃ唄えないね」
オレンジジュースを飲み干して、うさは溜息をついていた。何か手がかりがあれば思い出せそうなのに、これっぽっちもあの唄について思い出せなかった。
「今のオレたちの唄で良いんじゃないか?」
少しでもあの唄を思い出すため、オレはうさに提案してみた。
「思い浮かんだままの唄を唄うってことだよね。唄うにしても、昼間の人がいる中では恥ずかしいよ。ねえ、もう少し思い出してから夜の海岸で唄ってみない?」
「あ、ああ……そうだな」
うさに言われるまで、オレは焦るあまりに周囲を見ていなかったことに気付いた。確かに、周りに人がいる中で唄うのは、子供か歌手やよっぽど唄に自信がある者、或いは酒に溺れた者ぐらいだろう。朧おぼろげな唄をこんな場所で披露するほど、オレも度胸はなかった。オレたちはあの唄についての話を止めて、精算することにした。
それから、レストランを出て、オレたちはこの街の散策を続けた。うさが気になると話していた洋服屋に行って帽子やシャツを買ったり、ジェラート屋やカフェでスイーツを食べ歩いたりと、久々の旅行を満喫した。そして、こうやって他のことをしていれば、何かの拍子にあの唄を思い出すんじゃないかと思っていた。しかし、遂には日が沈みかかっても、オレたちは何も思い出すことは出来なかった。
うさなら、あの唄を覚えていると思って訊いた。少しでも歌詞やメロディを聞けば、オレも思い出せるはずだと思っていた。
「うん。……でも、どんな歌詞だっけ? タイトルすら覚えてないの」
「あ、ああ……実はオレもうさに聞こうと思ってた」
オレとうさは互いに目を合わせて、苦笑いをした。オレは静寂に耐えきれず、アイスコーヒーを一口含んだ。
「うーん、それじゃ唄えないね」
オレンジジュースを飲み干して、うさは溜息をついていた。何か手がかりがあれば思い出せそうなのに、これっぽっちもあの唄について思い出せなかった。
「今のオレたちの唄で良いんじゃないか?」
少しでもあの唄を思い出すため、オレはうさに提案してみた。
「思い浮かんだままの唄を唄うってことだよね。唄うにしても、昼間の人がいる中では恥ずかしいよ。ねえ、もう少し思い出してから夜の海岸で唄ってみない?」
「あ、ああ……そうだな」
うさに言われるまで、オレは焦るあまりに周囲を見ていなかったことに気付いた。確かに、周りに人がいる中で唄うのは、子供か歌手やよっぽど唄に自信がある者、或いは酒に溺れた者ぐらいだろう。朧おぼろげな唄をこんな場所で披露するほど、オレも度胸はなかった。オレたちはあの唄についての話を止めて、精算することにした。
それから、レストランを出て、オレたちはこの街の散策を続けた。うさが気になると話していた洋服屋に行って帽子やシャツを買ったり、ジェラート屋やカフェでスイーツを食べ歩いたりと、久々の旅行を満喫した。そして、こうやって他のことをしていれば、何かの拍子にあの唄を思い出すんじゃないかと思っていた。しかし、遂には日が沈みかかっても、オレたちは何も思い出すことは出来なかった。