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あの唄を覚えてる

 ランチをするため、うさと入ったレストランは海の見える洋食の店だった。オレたちは海を横目にテラス席で向かい合って座ると、レストランで一番人気のデミグラスハンバーグ、シェフオススメのふわとろオムライスに舌鼓を打っていた。

「このお店の料理、美味しい! ハンバーグ、オムライス、どっちも食べれて良かったー」

 口を大きく開けて、うさはオムライスを頬張った。
 
「どっちか一つって言ったら、あのままずっと迷ってただろ? 日が暮れるかと思ったよ。うさは食いしん坊だな」

「えへへ……でも、シェアすればいいって言ってもらって、良かったよ」

 からかわれたうさは照れながらオレに笑いかけた。うさにつられてオレもクスッと笑った。オレはアイスコーヒーを口にすると、ぼんやりと海と空の境界を見ていた。

 ──海と唄。一面に広がる青い景色と忘れかけていたメロディ。そして、波の音の中で聞こえた君の唄声。

 そんなことを何気なく考えていた。何故か懐古的な気持ちになっていた。そして、その理由を掴みかけて、オレはハッとした。

「まもちゃん、どうしたの?」

 オレの表情が変わった事に気付いて、うさは尋ねた。

「うさ、オレたちは以前この街に来たことはないか?」

 うさは首を傾げた後、周りの景色を見回した。そして、何か思い出そうとうさは一考すると、オレの質問に答えた。

「この街かは分からないけれど、海を見ながらエンディミオンと唄った想い出があるわ」

 うさの一言で、オレの心の奥底から過去のビジョンが浮かんできた。

「そうだ、そんなことがあった」

 オレはうさの言葉に頷いた。そして、オレの中で過去の記憶が再生されようとしていた。
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