未来からの贈りもの
翌朝。寝ぼけ気味のうさをちびうさがたたき起こして車に乗せる。
「んん……まだ眠いよぉ」
「ほらっ、シャキッとしなさい!」
「後部座席で寝かせてやろうか」
「全く……しょうがないんだから」
「よし、行こう」
車を走らせて十分程ドライブすると、目的地らしき場所に到着した。
「うさぎ、着いたわよ」
「むにゃむにゃ……わぁ、綺麗な場所!」
車から降りたオレたちは改めてちびうさに確認をする。
「この場所で合ってるか?」
「うん。池に景色が反射してて、色とりどりの薔薇……白い洋館と天使の像。間違いないよ!」
「やったな」
「うん!」
暫くの間景色を眺めた後、不意にうさが疑問を口にする。
「でも、どうしてここが思い出の場所なんだろう?」
「確かに……」
「こうやって三人で来たから思い出の場所なんじゃない?」
「でも、先に未来でこの風景画を見たからここに来たのよね?」
「タイムパラドックスっていうやつだな」
「たいむ……?」
「矛盾が起きてるってことだよ」
三人で頭を悩ませていたが、いくら考えても答えは出なかった。
「まぁいいじゃない。細かいことは気にしないでさ」
「それもそうだな」
「うん。今回の旅行は楽しかったし」
「じゃあ、ここにシートを敷いて朝ごはんでも食べるか」
「さんせーい!」
あまり深く考えても仕方ないと判断したオレたちは持ってきたレジャーシートを池のそばに敷いて、コンビニで買っておいたサンドイッチを広げた。
「いただきまーす!」
「本当に良い眺めだな」
「うん。薔薇も洋館も素敵だね」
「鏡面反射か。条件が上手く合わないと見れないものだから、しっかり目に……」
「このタマゴサンド、とってもボリューミーだよ!」
「あたしのツナサンドも具がいっぱい入ってる」
焼き付けておこうな。と言い終える前にうさたちのグルメレポが始まったので、この旅で何度目かの汗をかく。花より団子の遺伝子は確実に受け継がれているようだな。よし、それならオレも。
「このカツサンドも分厚くて美味いぞ?」
「ホント? 取り換えっこしよう」
「ほら」
持っていたカツサンドとうさのタマゴサンドを交換した様子を見て、ちびうさもツナサンドを差し出しながらおねだりしてくる。
「まもちゃん、あたしとも!」
「ははっ、いいよ」
「わーい!」
オレのカツサンドは全て手元から離れてしまったが、美味しそうにサンドイッチを頬張る二人を見て心が満たされていく感覚を覚えた。
「まもちゃーん。セットできた?」
「あぁ。もう撮るぞ」
食事を終えたオレたちは景色が映るように記念写真を撮ることにした。
風景を反射する池と色とりどりの薔薇。天使の像と白い洋館。
思い出の謎は解けなかったけれど、こんなに素敵な旅を経験させてくれた未来の風景画には感謝しかないな。
「はい、チーズ」
「うさぎ、目が半開きだったわよ?」
「そ、そんなことないわよ!」
「あははっ」
「次はあっちの山や森をバックに撮らないか?」
「うん」
その後、角度を変えて何枚か写真を撮ったオレたちは、車に戻って旅館への帰路に着いた。
旅館をチェックアウトし、月野家へ車を走らせる道中。
「うさぎ。まもちゃん」
「ん? どうしたの?」
「ありがとね。とっても楽しかった」
顔を赤らめながら呟くちびうさ。そんな様子を見たうさが目いっぱいの愛情を込めて愛娘を抱きしめる。
「これが……家族なんだよな……」
「まもちゃん?」
「いや、何でもないよ」
オレの心から抜け落ちていたもの。
それは家族との思い出。
両親はもういないけれど、今のオレには二人がいる。
だから。
「ありがとう。うさ……ちびうさ……」
「まもちゃんまで?」
「うさも言うか?」
「うん! まもちゃん、ちびうさ……ありがとね」
はたから見れば少し変かもしれないが、親子三人でお礼を言い合いながら笑える家族関係も良いよな、なんて。
そんな風に思えた夏の日だった。
「んん……まだ眠いよぉ」
「ほらっ、シャキッとしなさい!」
「後部座席で寝かせてやろうか」
「全く……しょうがないんだから」
「よし、行こう」
車を走らせて十分程ドライブすると、目的地らしき場所に到着した。
「うさぎ、着いたわよ」
「むにゃむにゃ……わぁ、綺麗な場所!」
車から降りたオレたちは改めてちびうさに確認をする。
「この場所で合ってるか?」
「うん。池に景色が反射してて、色とりどりの薔薇……白い洋館と天使の像。間違いないよ!」
「やったな」
「うん!」
暫くの間景色を眺めた後、不意にうさが疑問を口にする。
「でも、どうしてここが思い出の場所なんだろう?」
「確かに……」
「こうやって三人で来たから思い出の場所なんじゃない?」
「でも、先に未来でこの風景画を見たからここに来たのよね?」
「タイムパラドックスっていうやつだな」
「たいむ……?」
「矛盾が起きてるってことだよ」
三人で頭を悩ませていたが、いくら考えても答えは出なかった。
「まぁいいじゃない。細かいことは気にしないでさ」
「それもそうだな」
「うん。今回の旅行は楽しかったし」
「じゃあ、ここにシートを敷いて朝ごはんでも食べるか」
「さんせーい!」
あまり深く考えても仕方ないと判断したオレたちは持ってきたレジャーシートを池のそばに敷いて、コンビニで買っておいたサンドイッチを広げた。
「いただきまーす!」
「本当に良い眺めだな」
「うん。薔薇も洋館も素敵だね」
「鏡面反射か。条件が上手く合わないと見れないものだから、しっかり目に……」
「このタマゴサンド、とってもボリューミーだよ!」
「あたしのツナサンドも具がいっぱい入ってる」
焼き付けておこうな。と言い終える前にうさたちのグルメレポが始まったので、この旅で何度目かの汗をかく。花より団子の遺伝子は確実に受け継がれているようだな。よし、それならオレも。
「このカツサンドも分厚くて美味いぞ?」
「ホント? 取り換えっこしよう」
「ほら」
持っていたカツサンドとうさのタマゴサンドを交換した様子を見て、ちびうさもツナサンドを差し出しながらおねだりしてくる。
「まもちゃん、あたしとも!」
「ははっ、いいよ」
「わーい!」
オレのカツサンドは全て手元から離れてしまったが、美味しそうにサンドイッチを頬張る二人を見て心が満たされていく感覚を覚えた。
「まもちゃーん。セットできた?」
「あぁ。もう撮るぞ」
食事を終えたオレたちは景色が映るように記念写真を撮ることにした。
風景を反射する池と色とりどりの薔薇。天使の像と白い洋館。
思い出の謎は解けなかったけれど、こんなに素敵な旅を経験させてくれた未来の風景画には感謝しかないな。
「はい、チーズ」
「うさぎ、目が半開きだったわよ?」
「そ、そんなことないわよ!」
「あははっ」
「次はあっちの山や森をバックに撮らないか?」
「うん」
その後、角度を変えて何枚か写真を撮ったオレたちは、車に戻って旅館への帰路に着いた。
旅館をチェックアウトし、月野家へ車を走らせる道中。
「うさぎ。まもちゃん」
「ん? どうしたの?」
「ありがとね。とっても楽しかった」
顔を赤らめながら呟くちびうさ。そんな様子を見たうさが目いっぱいの愛情を込めて愛娘を抱きしめる。
「これが……家族なんだよな……」
「まもちゃん?」
「いや、何でもないよ」
オレの心から抜け落ちていたもの。
それは家族との思い出。
両親はもういないけれど、今のオレには二人がいる。
だから。
「ありがとう。うさ……ちびうさ……」
「まもちゃんまで?」
「うさも言うか?」
「うん! まもちゃん、ちびうさ……ありがとね」
はたから見れば少し変かもしれないが、親子三人でお礼を言い合いながら笑える家族関係も良いよな、なんて。
そんな風に思えた夏の日だった。