未来からの贈りもの
「三人で旅行に行こう!」
夏休みが迫るある休日の午後。トラベル雑誌を片手にオレの部屋へやって来たうさとちびうさ。オレは二人から告げられた突然の提案に、一瞬体が固まった。
「どうしたんだ? いきなり」
「だからぁ、夏休みにまもちゃんとちびうさとあたしで旅行に行きたいの」
「行きたいの」
甘えた声で話すうさに続けと言わんばかりにちびうさもねだってくる。
「もちろん構わないけど、何かあったのか?」
「実はね? ちびうさが面白い話を持ってきたんだ」
「面白い話?」
オレがちびうさに目を合わせると、にこりと微笑みながら頷く。
「未来で宝物庫に入った時にね、ステキな風景画を見たの」
「へぇ、どんなだ?」
「森の中に色とりどりの薔薇が咲いててね、白い洋館も描かれてたの」
「それで?」
「そばには大きな池があって、周りの景色が逆さまに映ってたんだぁ」
鏡面反射か。逆さ富士みたいな感じだろうか。確か日本にはそういった場所がいくつかあったな。
「遠くには森と山も見えたんだよ」
「じゃあ自然が豊富な土地なんだな」
「うん!」
「それでね、ここからが面白いのよ」
会話に入ってきたうさが、ちびうさに先を促すよう頭を撫でる。
「その風景画を見た時にパパがね、ここは思い出の場所なんだって言ってたの」
「思い出か……」
「ねっ! あたしたち、まだそんな場所に出かけたことないじゃない。だからその謎を解きに行こうよ」
なるほど、面白い。その場所にはオレたちにとって思い出となる何かが隠されてるって訳か。
「行ってみるか」
「わぁい!」
「まもちゃん、愛してる!」
「あたしも、愛してる!」
二人からのラブコールをもらって満更でもなかったオレは雑誌をめくったり、パソコンで調べたりしながら目的の場所を導き出すことにした。
「ここじゃないか?」
「あっ、あの絵とおんなじだ!」
ちびうさから情報を訊きながら検索を続けて、それらしき場所を見つけ出したオレは最後の確認を取る。
「うん、洋館のそばに天使の像が置いてあるし間違いないよ!」
「よし!」
「でもさ、こんな森の中まで電車で行くの?」
「安心してくれ。実はハーバードの受験を終えた後、時間ができたから免許を取っておいたんだ」
「えぇっ!? すごーい!」
「まもちゃんの車でお出かけできるの?」
「いや……流石に車はまだ持ってないからレンタカーを借りるかな」
熱い視線を向けられるが現実はそんなに甘くないことを伝えると、うさから意外な提案を受けた。
「じゃあパパの車を借りようよ」
「謙之さんの?」
「うん。きっと喜んで貸してくれるよ」
「ならお言葉に甘えようかな。お願いできるか?」
「まっかせといて!」
こうして、夏休みに親子三人で旅行へ行く計画が決まった。これから何かにつけて必要になるだろうと取った車の免許が早くも役に立つ時が来るとはな。車にはあまり良い思い出がないけど、愛する未来の家族となら素敵な思い出になるだろう。
オレは年甲斐もなくワクワクする気持ちを抑えながら、旅行話に花を咲かせる二人を見つめ続けた。
夏休みが迫るある休日の午後。トラベル雑誌を片手にオレの部屋へやって来たうさとちびうさ。オレは二人から告げられた突然の提案に、一瞬体が固まった。
「どうしたんだ? いきなり」
「だからぁ、夏休みにまもちゃんとちびうさとあたしで旅行に行きたいの」
「行きたいの」
甘えた声で話すうさに続けと言わんばかりにちびうさもねだってくる。
「もちろん構わないけど、何かあったのか?」
「実はね? ちびうさが面白い話を持ってきたんだ」
「面白い話?」
オレがちびうさに目を合わせると、にこりと微笑みながら頷く。
「未来で宝物庫に入った時にね、ステキな風景画を見たの」
「へぇ、どんなだ?」
「森の中に色とりどりの薔薇が咲いててね、白い洋館も描かれてたの」
「それで?」
「そばには大きな池があって、周りの景色が逆さまに映ってたんだぁ」
鏡面反射か。逆さ富士みたいな感じだろうか。確か日本にはそういった場所がいくつかあったな。
「遠くには森と山も見えたんだよ」
「じゃあ自然が豊富な土地なんだな」
「うん!」
「それでね、ここからが面白いのよ」
会話に入ってきたうさが、ちびうさに先を促すよう頭を撫でる。
「その風景画を見た時にパパがね、ここは思い出の場所なんだって言ってたの」
「思い出か……」
「ねっ! あたしたち、まだそんな場所に出かけたことないじゃない。だからその謎を解きに行こうよ」
なるほど、面白い。その場所にはオレたちにとって思い出となる何かが隠されてるって訳か。
「行ってみるか」
「わぁい!」
「まもちゃん、愛してる!」
「あたしも、愛してる!」
二人からのラブコールをもらって満更でもなかったオレは雑誌をめくったり、パソコンで調べたりしながら目的の場所を導き出すことにした。
「ここじゃないか?」
「あっ、あの絵とおんなじだ!」
ちびうさから情報を訊きながら検索を続けて、それらしき場所を見つけ出したオレは最後の確認を取る。
「うん、洋館のそばに天使の像が置いてあるし間違いないよ!」
「よし!」
「でもさ、こんな森の中まで電車で行くの?」
「安心してくれ。実はハーバードの受験を終えた後、時間ができたから免許を取っておいたんだ」
「えぇっ!? すごーい!」
「まもちゃんの車でお出かけできるの?」
「いや……流石に車はまだ持ってないからレンタカーを借りるかな」
熱い視線を向けられるが現実はそんなに甘くないことを伝えると、うさから意外な提案を受けた。
「じゃあパパの車を借りようよ」
「謙之さんの?」
「うん。きっと喜んで貸してくれるよ」
「ならお言葉に甘えようかな。お願いできるか?」
「まっかせといて!」
こうして、夏休みに親子三人で旅行へ行く計画が決まった。これから何かにつけて必要になるだろうと取った車の免許が早くも役に立つ時が来るとはな。車にはあまり良い思い出がないけど、愛する未来の家族となら素敵な思い出になるだろう。
オレは年甲斐もなくワクワクする気持ちを抑えながら、旅行話に花を咲かせる二人を見つめ続けた。
1/7ページ