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トランプの死神と小悪魔的な天使

 最後の状況整理をしよう。

 今あたしのカードは1枚。ジョーカーを持つちびうさちゃんは2枚。

 ここでジョーカーを引かなければ、あたしの勝ち。

 行くしか……ない。

「はい……どうぞ」
「っ!?」

 ここで、ちびうさちゃんが勝負に出る。
 2枚のカードを両手に持って前に差し出し、目を瞑ったのだ。

 ポーカーフェイスは通じない。
 これは完全な賭け。

 落ち着かなきゃ。
 2択なんだから確率は1/2。
 50%であたしは勝てる。

 ここで、終わらせる!

 あたしから見て、左のカードを引く。

「……くぅ~」
「あ、やっぱりほたるちゃんに渡ったね」
「期待を裏切らないよね、ほたるっちは」

 くっ……また、あたしは負けるの?
 半分の確率すら掴めないなんて。

「諦めるなんて、ほたるちゃんらしくないよ?」

 ちびうさちゃんが、あたしを見ながら言う。

 そうだ。あたしはどんな苦境も乗り越えてきたセーラー戦士なんだ。

 もう、昔のあたしじゃない。
 だから、この手で勝利を掴むのよ!

「じゃあ、こっちを引くね」

「えっ……」

「あっ……」

「わ~い、あがり~」

 決着の瞬間は、あっさり訪れた。
 ちびうさちゃんが、両手を上げて喜んでいる。

「ガクッ……」

 力尽きて、机に突っ伏す。

「やっぱり……負けたぁ……」
「で、でも……今回はいい勝負だったよ?」

 桃ちゃんがフォローしてくれる。
 でも、そういう問題じゃないの。
 これは、あたしが死神という通り名から卒業するための勝負でもあったのだから。

「さ、5時間目が始まるね~」
「げっ! 算数の宿題、忘れてた……」
「全くしょうがないんだから……ほら、あたしのノート見せてあげる」
「サンキュー、桃!」

 みんな、散り散りに席へと戻って行く。

「はぁ……やっぱりあたしは死神なのかな……」
「ほたるちゃん」
「ちびうさちゃん……」
「あたしは……死神のほたるちゃんも素敵だと思うよ?」
「えっ……」
「またババ抜きしようね!」
「……うん!」

 どういうことだろう。
 あれだけ嫌がっていたのに。

 ちびうさちゃんに認めてもらえただけで、死神の名前も悪くない。

 そう思ってしまった。

「あたしが死神なら……ちびうさちゃんは天使だね……」

 あたしは席へ戻って行くちびうさちゃんに、小さな声で感謝の言葉を呟いた。



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