このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

トランプの死神と小悪魔的な天使

 きっかけは、桃ちゃんの一言だった。

「ねぇねぇ……トランプ持ってきたんだけど、みんなでやらない?」

 お昼休みに暇を持て余していたので、あたしたちは二つ返事でオーケーした。

「うん、いいよ~」
「何にする?」
「色々あるからね~」

 なるるとるるなが、何のゲームで勝負するか持ちかけてきたので、あたしは誰よりも早く提案をする。

「神経衰弱!」
「え~っ!?」

 みんなが、一斉に嫌がる反応をする。

「だって神経衰弱だと、ほたるちゃんの圧勝なんだもん……」
「そんなに強いのか?」

 ちびうさちゃんのボヤキに、九助が疑問を投げかける。

「強いなんてモンじゃないよ?」
「一度めくったカードは、完全に覚えてるんだもん」
「じゃあ、つまんねーなー」

 マズい。
 この流れだと、アレになる。

「じゃ、じゃあ大富豪は?」

 あたしは慌てて、別の提案を持ちかける。

「それもほたるっちの圧勝じゃん」
「必ずジョーカー持ってるんだもん」
「うぐっ……」

 そう。
 あたしはどういうわけか、死神の絵柄が書かれたジョーカーのカードを引き寄せる能力をもっていた。

 そして学校でついたあだ名が「トランプの死神」。
 これも死神みたいな鎌を持つ、セーラーサターンとしての宿命なのかと考えていると。

「やっぱ定番だけど、ババ抜きにしようか?」
「ま、待って!?」

「どうしたんだ? ほたるのやつ」
「ほたるちゃんはね……死神の絵柄が描かれたジョーカーだと、手札に引き寄せちゃう性質を持ってるの」
「めっちゃ弱いもんね、ババ抜きだけは……」

「桃ちゃん、ジョーカーの絵柄を確認させて……」
「あはは、ほたるちゃんにとっては死活問題だもんね」

 あたしは、桃ちゃんからカードを借りてジョーカーを探す。
 そして、見つけた。しっかりと鎌を持った、死神のカードを。

「や、やっぱり……」
「ごめんね、あたしも買ってから気づいて……」
「いや、桃ちゃんが悪いんじゃないよ!? こういうトランプを作ったメーカーが悪いんだから……」

 あたしは慌てて、申し訳なさそうに謝る桃ちゃんをフォローする。
 でも、このババ抜きの流れを変えるためには、みんなに頼み込むしかない。

「お願い……別のゲームにして!」

 両手を合わせて頼みこんでも、みんなからの返答は非情だった。

「いや、もう時間もないし……ババ抜き一回戦で丁度いいよ?」
「そうだね……ほたるっちには頑張ってもらうということで……」
「そんなぁ……」

 こうして、あたしが最も苦手とするババ抜き対決が始まった。
1/4ページ
スキ