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幸福の音色

 学園の屋上。他に人影がないことを確認した私は、目星をつけた子の名前を口にした。

「土萠ほたる……」
「教授の一人娘か」

 その子がセーラーサターンであるとタリスマンが導いてくれた。
 まだ幼いその体に破滅をもたらすパワーが秘められているなんて。

「どうするの……はるか」
「決まってるだろ……」
「そう、よね……」

 命を奪うことでしかシナリオを止められないのなら、やるしかない。

「十字架は僕が背負う」

 その言葉の意味するところは、最期は自分の手で。そんな意味を含んでいるように思えた。

「はるか」
「んっ……」

 だからそれ以上言わせないよう、唇をふさぐ。

「何だよ、こんな時に」
「このタイミングじゃなきゃ、分かち合えないと思ったの」

 あなたの心が知りたかったから。

「みちる?」
「大丈夫……すべて伝わってきたわ」

 抗えない焦燥。
 あの子への罪悪感。
 自分に対する怒り。
 そして未来への希望。

 色々な感情が渦巻く心の中には、確かに「私への愛」もあった。

「たとえどんな結末になっても、二人で幕を閉じましょう」
「みちる……」
「愛してるわ、はるか」

 もう一度、深い口づけをする。
 今度は私の想いを伝えるために。

「君は……強いな」
「あなたがいるからよ」
「なら永遠に君を護れるくらい鍛えるさ」
「あら……じゃあいつまでも私はお姫様の方がいいかしら?」
「……敵わないな」

 心地よい風が全身を包む。
 それは最愛の人が呼び寄せてくれたような。
 安らかな旋律だった。
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