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どっちのヒーリングが好き?

 今日はいつにもまして、にぎやかだった。

 久しぶりに帰国したオレを迎えてくれたうさたちが、パーラークラウンでプチ歓迎会を開いてくれていた。残念ながらはるかたち三人は都合で来れなかったけれど、代わりにほたるが出席してくれた。
 オレたちが楽しく飲み食いをしているなか、それまでパフェを食べていたちびうさが不意に口を開く。

「まもちゃんのヒーリングと、ほたるちゃんのヒーリングって……どっちがスゴイの?」
「えっ?」

 思わず、ほたると顔を見合わせる。

「スゴイって、どういう意味だ?」
「どっちが心地良いのかなって……」
「心地良い?」

 目を閉じて、物思いに耽るちびうさ。きっとオレとほたるのヒーリングを思い出しているんだろう。

「それは……してもらった人によるんじゃないかなぁ」

 ほたるが言う。確かにオレもそうだと思ったが、ちびうさの疑問は治まっていないようだった。

「でもさ、光り方が違うよね……性質も違うんじゃないの?」

 性質。そんなこと考えたこともなかった。オレたちの能力に違いなんてあるのだろうか。

「そういうちびうさは、どっちのヒーリングが好きなのよ?」
「どっちの?」
「そう! 二人からヒーリングしてもらったことがあるちびうさの意見が聞きたいわよ」

 うさがニヤニヤしながら意地悪な質問をする。実の父親と親友を比べろと言われても答えに困ると思うが。

「う~ん……まもちゃんのヒーリングは力強くて、頼もしくて、護ってもらえてる感じ」
「じゃあ、ほたるちゃんは?」
「ほたるちゃんは……優しくて、温かくて、包み込んでもらってる感じかな?」

 いわゆる、父性と母性の感覚なのかもしれない。まだまだ子どもっぽい感覚を持っているちびうさに、思わず笑みが零れる。

「あっ、まもちゃん笑った!」
「いや、すまん……」
「むぅー」

 プクっと頬を膨らます我が娘が可愛くて、再び零れそうになる笑みを我慢する。

「で……結局、どっちが好きなの?」

 美奈が話を戻す。答えなんて出ないのだから流せばよかったろうにと思うが、オレも父として気になる所だ。

「う~ん……」

 腕を組みながら唸るちびうさ。やはり答えを出すのに困っているようだった。

「ムリに考える必要はないぞ?」
「そうだよ、その時の気分で選んでね」

 ウインクしながら言うほたる。まるでジュースでも選ぶようなノリで言うので、少し汗をかく。

「やっぱり……どっちも好き……」

 頬を紅く染めながら言うちびうさ。

「全く、浮気性なんだから」
「八方美人のうさぎちゃんがソレを言う?」

 呆れ顔でルナがツッコミを入れる。

「親子で似てるってことか」
「ふふっ、面白いわね」

 まことと亜美が笑いあう。どうやらこの話題は治まりそうだ。そう思っていたら。

「似てるって言えば……衛さんとほたるちゃんも、共通点多いわよね」

 レイがオレとほたるを交互に見ながら言う。

「そうか?」
「あぁ~、そういえばそうだね!」

 うさとちびうさが声を揃える。

「どういうこと?」
「あのね、二人とも生まれつきヒーリングが使えるでしょ?」
「あぁ」
「趣味は読書で……将来の夢はお医者さんと看護師さん」
「そうなのか?」
「うん……こういう力があるのなら、誰かの為に役立てたいなって……」

 自分の手を見ながら言うほたるに、思わず口元が綻ぶ。

「なら……オレと一緒だな」
「うん!」

 満面の笑みで応えるほたる。

「あらあら……これは二人が急接近?」
「えっ!?」

 ミーハー根性まる出しの美奈に、うさが過剰反応する。

「だ、ダメだよ!? あたしのまもちゃんなんだから!」
「うさぎ……8歳の子にやきもち妬くなよ……」
「あたしだって困るよ!」

 珍しく声を大にして言うほたる。オレってそんなに嫌われてたのかな。なんて思っていると。

「だって、うさぎお姉ちゃんとまもちゃんが結婚しないと……あたしとちびうさちゃんが出逢えないじゃない!」
「ほたるちゃん……」

 再び頬を紅く染めて、嬉しそうにするちびうさ。そういう問題でいいのか。

「それにしても、ちびうさ……あんたエリオスといいほたるちゃんといい……好きになる人にまもちゃんを重ねてるんじゃないの?」
「そう……なのかな?」

 確かにそうなのかもしれない。最初はオレに。次は共通点の多いほたるに。そして次はオレの分身ともいえるエリオスに。

「まだまだ甘えたい年頃なんだな」
「そ、そんなことないもん!」

 ふくれっ面で言うちびうさを見て、みんなが微笑む。

「あたし、ちょっと外に出てくる……」

 そう言ってちびうさは席を立ち、外へ駆けて行った。

「言い過ぎたかな」

 焦って追いかけようとするオレを、小さな手が止める。

「大丈夫、あたしに任せて?」
「ほたる」
「行ってくるね!」

 そう言って、ほたるはちびうさの後を追いかけて行った。
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