想い出は月の中に
話の内容を聞いて、あたしの脳みそはショート寸前だった。ここにいるみんなはあたしも含めて正義の戦士で、悪と戦いながら地球や月を護ってきたらしい。今は平和になったけど、ついこの間まで戦いの連続だったせいで記憶を失くしたのかもしれないというのがみんなの見解だった。
「はぁ……何だか壮大なお話だね……」
「一気に話しちゃったから、わけわかんないよね?」
「まぁ、今は平和になったからそんなに身構えなくても大丈夫よ? もし敵が現れても、あたしたちで倒してあげちゃうから!」
まこちゃんと美奈Pはあたしの様子を見て、心配しながら気遣ってくれた。でもその後ろで口元に手を当てながら難しい顔をしているレイちゃんの方に気が向いてしまう。
「レイちゃん?」
「あ、ううん……ごめんね? 少し考え事をしていたの……」
「レイちゃん的には今回の件、どう感じる?」
「美奈……おそらく新たな脅威とか、誰かに攻撃されたとかじゃない……」
「じゃあ何で?」
「今回の記憶喪失は、本人が重大なカギを握っているんだと思う」
「あ、あたし?」
原因は自分にあると言われ、動揺する。確かに敵が迫っているという感覚じゃないし、どちらかと言えばこういう症状は心の問題だったりするし。
「ごめんなさい……迷惑かけちゃって……」
「いいんだよ、気にしなくて!」
「ほら、いつもの笑顔が見たいな」
「笑顔?」
「うさぎちゃんは、甘いものか衛さんがいれば満面の笑みを浮かべる子なのよ?」
今までコンピュータを操作していた亜美ちゃんが、こちらに来てあたしの特徴を教えてくれる。
「亜美ちゃん……あたしって、そんなに単純な人間だったの?」
「えぇ」
なんと亜美ちゃんだけじゃなく、その場に居た全員の返答が綺麗なハーモニーを生み出す。なるほど、やっと自分の性格がわかってきた気がする。
「だから、これからうさぎちゃんにしてほしいことは一つ……」
「してほしいこと?」
「衛さんとデートしてもらいたいの」
「へっ……?」
突然何を言い出すのだろう。勉強が好きって言ってたけど、何か深い意味でもあるのかな。
「デート?」
「えぇ……愛する人との想い出をキッカケに、記憶を刺激しようと思って……」
「あたしはもちろん、いいけど……」
チラッと衛さんの方を見る。すると、あたしの目の前まで来て手を取りながら口を開いた。
「参りましょうか……お姫様……」
「は、はい……」
お姫様なんて呼ばれたから赤面しちゃったけど、みんなはそんなあたしの様子を微笑ましく見守ってくれていた。
「じゃあ、行ってくる」
「うさぎちゃんのこと、お願いね」
「あぁ」
「い、行ってきます」
あたしはぎこちなく衛さんの手を握って、司令室を出た。
「いい天気だな」
「あ、はい」
外へ出ると、雲一つない晴天だった。心にモヤモヤがかかっているあたしとは大違いだ。いつかあたしも記憶を取り戻して、晴れやかな気持ちになれるかな。
「まずはアイスでも食べながら街をブラブラするか?」
「アイス、ですか?」
「食べ歩き、大好きだろ?」
そう言って衛さんは、握っていたあたしの手を引きながらアイスクリーム屋さんに連れて行ってくれた。
「わぁ、たくさんありますね!」
「どれでも好きなものを頼んでいいよ」
「どれにしようかなぁ」
「五段重ねにするか?」
「さすがにそんなに食べれませんよ……三段でいいです」
「そ、そうか」
あたしはバニラとチョコレート、それにラムレーズンを加えた三段アイスを買ってもらった。
「おいし♪」
「ふふっ」
「どうかしました?」
「いや、記憶がなくてもやっぱりうさはうさだと思ってな」
衛さんはクスッと笑いながら、アイスを食べるあたしを眺めていた。
それからあたしたちは衛さんのリードでデートを続けた。
ひと通り遊んでみたけれど、記憶が刺激されて何かを思い出すようなことはなかった。
「……そうか、わかった」
「誰と通信してたんですか?」
「アルテミスだよ……こっちに来てほしいって言われたんだ」
アルテミス。確か美奈Pの所にいる白猫って話だけど、はるかさんという人の所へ行ったと聞いた。もしかして何かわかったのかな。
「とにかく行こうか」
「はい」
「はぁ……何だか壮大なお話だね……」
「一気に話しちゃったから、わけわかんないよね?」
「まぁ、今は平和になったからそんなに身構えなくても大丈夫よ? もし敵が現れても、あたしたちで倒してあげちゃうから!」
まこちゃんと美奈Pはあたしの様子を見て、心配しながら気遣ってくれた。でもその後ろで口元に手を当てながら難しい顔をしているレイちゃんの方に気が向いてしまう。
「レイちゃん?」
「あ、ううん……ごめんね? 少し考え事をしていたの……」
「レイちゃん的には今回の件、どう感じる?」
「美奈……おそらく新たな脅威とか、誰かに攻撃されたとかじゃない……」
「じゃあ何で?」
「今回の記憶喪失は、本人が重大なカギを握っているんだと思う」
「あ、あたし?」
原因は自分にあると言われ、動揺する。確かに敵が迫っているという感覚じゃないし、どちらかと言えばこういう症状は心の問題だったりするし。
「ごめんなさい……迷惑かけちゃって……」
「いいんだよ、気にしなくて!」
「ほら、いつもの笑顔が見たいな」
「笑顔?」
「うさぎちゃんは、甘いものか衛さんがいれば満面の笑みを浮かべる子なのよ?」
今までコンピュータを操作していた亜美ちゃんが、こちらに来てあたしの特徴を教えてくれる。
「亜美ちゃん……あたしって、そんなに単純な人間だったの?」
「えぇ」
なんと亜美ちゃんだけじゃなく、その場に居た全員の返答が綺麗なハーモニーを生み出す。なるほど、やっと自分の性格がわかってきた気がする。
「だから、これからうさぎちゃんにしてほしいことは一つ……」
「してほしいこと?」
「衛さんとデートしてもらいたいの」
「へっ……?」
突然何を言い出すのだろう。勉強が好きって言ってたけど、何か深い意味でもあるのかな。
「デート?」
「えぇ……愛する人との想い出をキッカケに、記憶を刺激しようと思って……」
「あたしはもちろん、いいけど……」
チラッと衛さんの方を見る。すると、あたしの目の前まで来て手を取りながら口を開いた。
「参りましょうか……お姫様……」
「は、はい……」
お姫様なんて呼ばれたから赤面しちゃったけど、みんなはそんなあたしの様子を微笑ましく見守ってくれていた。
「じゃあ、行ってくる」
「うさぎちゃんのこと、お願いね」
「あぁ」
「い、行ってきます」
あたしはぎこちなく衛さんの手を握って、司令室を出た。
「いい天気だな」
「あ、はい」
外へ出ると、雲一つない晴天だった。心にモヤモヤがかかっているあたしとは大違いだ。いつかあたしも記憶を取り戻して、晴れやかな気持ちになれるかな。
「まずはアイスでも食べながら街をブラブラするか?」
「アイス、ですか?」
「食べ歩き、大好きだろ?」
そう言って衛さんは、握っていたあたしの手を引きながらアイスクリーム屋さんに連れて行ってくれた。
「わぁ、たくさんありますね!」
「どれでも好きなものを頼んでいいよ」
「どれにしようかなぁ」
「五段重ねにするか?」
「さすがにそんなに食べれませんよ……三段でいいです」
「そ、そうか」
あたしはバニラとチョコレート、それにラムレーズンを加えた三段アイスを買ってもらった。
「おいし♪」
「ふふっ」
「どうかしました?」
「いや、記憶がなくてもやっぱりうさはうさだと思ってな」
衛さんはクスッと笑いながら、アイスを食べるあたしを眺めていた。
それからあたしたちは衛さんのリードでデートを続けた。
ひと通り遊んでみたけれど、記憶が刺激されて何かを思い出すようなことはなかった。
「……そうか、わかった」
「誰と通信してたんですか?」
「アルテミスだよ……こっちに来てほしいって言われたんだ」
アルテミス。確か美奈Pの所にいる白猫って話だけど、はるかさんという人の所へ行ったと聞いた。もしかして何かわかったのかな。
「とにかく行こうか」
「はい」