想い出は月の中に
「ここ……ゲームセンターだよね?」
「ここの地下に基地があるの」
「基地って……あなた何者なの?」
「事情はあとで! とにかく入りましょう」
あたしたちはまだ開店していないゲームセンターの裏口からお店に入って、地下へ向かった。
「すご……」
司令室のドアを開けると、そこには難しそうなコンピュータがキラキラ光っていた。イルミネーションがお星様みたいでキレイだなんて感想は不謹慎だろうから、口には出さなかったけれど。
「ここへ向かいがてら、まもちゃんにも連絡したからもうじき来ると思うわ」
「まもちゃん?」
「本当に忘れてしまったのね……あなたの恋人よ?」
「えっ!?」
あたし、恋人なんていたんだ。まぁ花ざかりの高校生だし、そのくらい普通なのかもしれないけど。そんな話をしていると、ドアが勢いよく開いた。
「うさっ!」
「あ、えっと……」
「大丈夫か!? 記憶を失くしたって聞いたが!」
入るなりあたしの方へ一直線に来て、大きい両手であたしの肩を掴むこの男の人が、まさか。
「あ、あたしは大丈夫です……どこも痛くないし……」
「う、うさ……」
「ご覧の通りよ……あなたのことも覚えていないの」
「そう、なのか……」
「もし違ってたらごめんなさい……あなたが、あたしの恋人?」
心配そうな顔の男性が、あたしのことを見つめ続ける。何だろう、ルナといいお母さんといい、この人といい。あたしの顔って、そんなに変かなぁ。
「ルナ……」
「あたしもこれから全力で調べるから、まもちゃんはうさぎちゃんをお願い」
「わかった」
「あの……さっきの質問に答えてもらえたら嬉しいんですけど……」
あたしのお願いにハッとした男性は、あたしに向き直り改めて自己紹介を始めた。
「オレの名は地場衛……君の恋人だよ」
「やっぱり、そうだったんですか……」
整った顔立ちに高い身長。よくこんな人を掴んだものだなぁと自分自身に問いかける。でも軽い感じで付き合っている訳じゃないことだけは直感で理解できた。きっと大恋愛の末に恋人になれたんだろうなと何となく感じる。
「不安なことがあったら、何でもオレに頼ってくれ……よろしくな」
「あ、ありがとう……」
その頼もしい手をギュッと握り、ぬくもりを確かめる。
「うさ?」
「温かい……あなたの手……」
「……そうか」
小さく微笑む衛さんは、まるでピュアな心を持つ少年のようだった。
「亜美ちゃんたちにも連絡したから、まもちゃんから事情の説明をお願いね」
「あぁ」
「亜美ちゃん?」
「君の大切な仲間だよ……四人もすぐに駆け付けてくれる……」
何だろう。さっきから仲間とか司令室とか。ひょっとしてあたし、秘密戦隊とか軍隊にでも入っているのだろうか。
「うさぎっ!」
「うさぎちゃん!?」
再びドアが勢いよく開く。入って来たのは四人の女の子だった。
「どういうこと!? うさぎちゃんが記憶喪失って!」
「本当にあたしたちのことも忘れちゃったの!?」
「あっ……あたし……」
「ちょっと待ってくれ……今、うさも状況を理解するのに必死なんだ……あまり詰め寄らないでくれるか?」
「ごめん……」
衛さんが制してくれると、四人はあたしの顔をじっと見つめ始めた。何かもう、凝視されるのも慣れちゃったかな。
「衛さん……」
「今、ルナが調べてくれてる」
「そっか……無事に治るといいね」
何の話をしているのかわからなかったけれど、きっと心配してくれてるんだろうと思った。大切な仲間って言ってたし、自己紹介した方がいいかな。
「あ、あたし……月野うさぎって言うらしいです……初めまして……」
「何言ってるのよ、うさぎちゃん……あたしたちの仲で、そんなに畏まっちゃイヤよ?」
大きなリボンを付けた金髪ロングの子が、悲しそうに言う。始めに会話をしたのがこの子で、少し安心している自分がいた。もしかして親しい関係だったのかも。
「あたしは愛野美奈子……うさぎちゃんは美奈Pって呼んでる仲よ」
「あたしは水野亜美……勉強には自信があるから、うさぎちゃんの記憶を取り戻せるよう頑張るわ」
「ありがとう、美奈Pと亜美ちゃん」
二人にお礼を伝えると、残りの子たちも自己紹介をしてくれた。
「あたしは木野まこと、まこちゃんって呼ばれてるよ」
「火野レイよ……霊感が強いから、そっち方面からも原因を調べてみるわね」
「ありがとう、まこちゃんにレイちゃん」
全員と挨拶を終えると、衛さんがあたしの肩にポンと手を乗せる。何だかとっても温かい感触。全てを包み込んでくれるかのような優しいぬくもり。
「衛さん……」
「オレのことは、まもちゃんって呼んでくれないのか?」
「あっ……何か男の人だし、恥ずかしくて……」
「そっか……ムリに言わなくていいよ、衛さんも新鮮だしな」
「すみません」
申し訳なくて謝ると、衛さんは優しい笑みで返してくれた。
「ところで美奈子ちゃん……アルテミスは?」
「アルテミスなら、はるかさんたちの所へ向かったわ」
「はるかさん?」
「頼りになる仲間さ……あと四人もいるんだぞ?」
次々と出てくる人の名前を覚えるのに必死で、いつの間にか不安はどこかへ行ってしまっていた。
「でも、どうしてアルテミスがはるかさんたちの所へ?」
「新たな敵の侵入がないか、直接訊きに行ったの……特にほたるちゃんとか、不思議な力を持ってるし」
「そうか、みんな多方面から調べてくれてるんだな」
「何だかあたしのために、ありがとうございます」
「畏まるなよ、あたしたちの仲じゃないか」
恐縮しながらお礼を言うと、まこちゃんがウインクしながら答えてくれた。本当にみんな優しくて、頼りになる人たちだなぁ。
「じゃあ悪いけど亜美ちゃんも、こっちを手伝ってくれる?」
「えぇ、わかったわ」
ルナに呼ばれた亜美ちゃんはコンピュータの方へ向かい、何やら作業を始めたようだった。
「じゃあ、色々お話しよっか」
「お話?」
「何か話してるうちに思い出すかもしれないでしょ?」
「そうそう、とにかく記憶を掘り起こさないと」
「う、うん」
あたしは三人と、出会いから今までのことを話し始めた。衛さんは少し離れた場所から見守ってくれていた。
「ここの地下に基地があるの」
「基地って……あなた何者なの?」
「事情はあとで! とにかく入りましょう」
あたしたちはまだ開店していないゲームセンターの裏口からお店に入って、地下へ向かった。
「すご……」
司令室のドアを開けると、そこには難しそうなコンピュータがキラキラ光っていた。イルミネーションがお星様みたいでキレイだなんて感想は不謹慎だろうから、口には出さなかったけれど。
「ここへ向かいがてら、まもちゃんにも連絡したからもうじき来ると思うわ」
「まもちゃん?」
「本当に忘れてしまったのね……あなたの恋人よ?」
「えっ!?」
あたし、恋人なんていたんだ。まぁ花ざかりの高校生だし、そのくらい普通なのかもしれないけど。そんな話をしていると、ドアが勢いよく開いた。
「うさっ!」
「あ、えっと……」
「大丈夫か!? 記憶を失くしたって聞いたが!」
入るなりあたしの方へ一直線に来て、大きい両手であたしの肩を掴むこの男の人が、まさか。
「あ、あたしは大丈夫です……どこも痛くないし……」
「う、うさ……」
「ご覧の通りよ……あなたのことも覚えていないの」
「そう、なのか……」
「もし違ってたらごめんなさい……あなたが、あたしの恋人?」
心配そうな顔の男性が、あたしのことを見つめ続ける。何だろう、ルナといいお母さんといい、この人といい。あたしの顔って、そんなに変かなぁ。
「ルナ……」
「あたしもこれから全力で調べるから、まもちゃんはうさぎちゃんをお願い」
「わかった」
「あの……さっきの質問に答えてもらえたら嬉しいんですけど……」
あたしのお願いにハッとした男性は、あたしに向き直り改めて自己紹介を始めた。
「オレの名は地場衛……君の恋人だよ」
「やっぱり、そうだったんですか……」
整った顔立ちに高い身長。よくこんな人を掴んだものだなぁと自分自身に問いかける。でも軽い感じで付き合っている訳じゃないことだけは直感で理解できた。きっと大恋愛の末に恋人になれたんだろうなと何となく感じる。
「不安なことがあったら、何でもオレに頼ってくれ……よろしくな」
「あ、ありがとう……」
その頼もしい手をギュッと握り、ぬくもりを確かめる。
「うさ?」
「温かい……あなたの手……」
「……そうか」
小さく微笑む衛さんは、まるでピュアな心を持つ少年のようだった。
「亜美ちゃんたちにも連絡したから、まもちゃんから事情の説明をお願いね」
「あぁ」
「亜美ちゃん?」
「君の大切な仲間だよ……四人もすぐに駆け付けてくれる……」
何だろう。さっきから仲間とか司令室とか。ひょっとしてあたし、秘密戦隊とか軍隊にでも入っているのだろうか。
「うさぎっ!」
「うさぎちゃん!?」
再びドアが勢いよく開く。入って来たのは四人の女の子だった。
「どういうこと!? うさぎちゃんが記憶喪失って!」
「本当にあたしたちのことも忘れちゃったの!?」
「あっ……あたし……」
「ちょっと待ってくれ……今、うさも状況を理解するのに必死なんだ……あまり詰め寄らないでくれるか?」
「ごめん……」
衛さんが制してくれると、四人はあたしの顔をじっと見つめ始めた。何かもう、凝視されるのも慣れちゃったかな。
「衛さん……」
「今、ルナが調べてくれてる」
「そっか……無事に治るといいね」
何の話をしているのかわからなかったけれど、きっと心配してくれてるんだろうと思った。大切な仲間って言ってたし、自己紹介した方がいいかな。
「あ、あたし……月野うさぎって言うらしいです……初めまして……」
「何言ってるのよ、うさぎちゃん……あたしたちの仲で、そんなに畏まっちゃイヤよ?」
大きなリボンを付けた金髪ロングの子が、悲しそうに言う。始めに会話をしたのがこの子で、少し安心している自分がいた。もしかして親しい関係だったのかも。
「あたしは愛野美奈子……うさぎちゃんは美奈Pって呼んでる仲よ」
「あたしは水野亜美……勉強には自信があるから、うさぎちゃんの記憶を取り戻せるよう頑張るわ」
「ありがとう、美奈Pと亜美ちゃん」
二人にお礼を伝えると、残りの子たちも自己紹介をしてくれた。
「あたしは木野まこと、まこちゃんって呼ばれてるよ」
「火野レイよ……霊感が強いから、そっち方面からも原因を調べてみるわね」
「ありがとう、まこちゃんにレイちゃん」
全員と挨拶を終えると、衛さんがあたしの肩にポンと手を乗せる。何だかとっても温かい感触。全てを包み込んでくれるかのような優しいぬくもり。
「衛さん……」
「オレのことは、まもちゃんって呼んでくれないのか?」
「あっ……何か男の人だし、恥ずかしくて……」
「そっか……ムリに言わなくていいよ、衛さんも新鮮だしな」
「すみません」
申し訳なくて謝ると、衛さんは優しい笑みで返してくれた。
「ところで美奈子ちゃん……アルテミスは?」
「アルテミスなら、はるかさんたちの所へ向かったわ」
「はるかさん?」
「頼りになる仲間さ……あと四人もいるんだぞ?」
次々と出てくる人の名前を覚えるのに必死で、いつの間にか不安はどこかへ行ってしまっていた。
「でも、どうしてアルテミスがはるかさんたちの所へ?」
「新たな敵の侵入がないか、直接訊きに行ったの……特にほたるちゃんとか、不思議な力を持ってるし」
「そうか、みんな多方面から調べてくれてるんだな」
「何だかあたしのために、ありがとうございます」
「畏まるなよ、あたしたちの仲じゃないか」
恐縮しながらお礼を言うと、まこちゃんがウインクしながら答えてくれた。本当にみんな優しくて、頼りになる人たちだなぁ。
「じゃあ悪いけど亜美ちゃんも、こっちを手伝ってくれる?」
「えぇ、わかったわ」
ルナに呼ばれた亜美ちゃんはコンピュータの方へ向かい、何やら作業を始めたようだった。
「じゃあ、色々お話しよっか」
「お話?」
「何か話してるうちに思い出すかもしれないでしょ?」
「そうそう、とにかく記憶を掘り起こさないと」
「う、うん」
あたしは三人と、出会いから今までのことを話し始めた。衛さんは少し離れた場所から見守ってくれていた。