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変わっていく君と変わらない想い

side ほたる



「一旦、成長を戻す?」

 一日が終わり、ベッドに入って眠ろうと思ったとき。サターンから突然された提案に、目をパチクリさせながら言葉を返す。

「はい……最近、体が重いと感じませんか?」
「う~ん……言われてみれば、体育の時間は思うように体が動かないかも」

 目を瞑って、今日の体育の授業を振り返る。まぁ、元々運動は苦手だからそんなに気にしてなかったけど、サターンにそう言われると確かに体が重かったかもしれない。

「そうでしょう? きっと私が急激に成長を促したから……」
「もう、また自分を責めるの?」
「いえ、事実を言っているだけです」
「それで、なんで成長を戻すことに繋がるの?」

 あたしが質問をすると、サターンは一呼吸おいて続けた。

「1日だけ、4歳程度まで戻ってもらいたいんです」
「4歳……あたしがサターンに目覚める直前くらいよね?」
「はい……私の考えが正しければ、それでちゃんと体が適合するハズです」
「1日戻っただけで、何が変わるの?」
「本来はあの時……ネヘレニアとの戦いで覚醒したとき、もう一日経ってから戦士に覚醒させようと思っていたんです」
「そうなの?」
「はい、私なりの考えで成長をさせていたので……」
「ふ~ん……でも一日、早まった?」
「えぇ……思ったより早く、内部戦士たちがカルテットと戦いを始めたので……」
「あぁ、美奈お姉ちゃんが突っ込んじゃったんだっけ……」
「はい、その件はリーダーとしての正義感から動いたと思うのでよいのですが」
「とにかく、もう一回あの頃の年齢に戻って、1日過ごせば体が適合するのね?」
「そう踏んでいます」
「うん、いいよ……というか、別にデメリットないよね?」
「敵に襲われたら不安だったのですが……今は落ち着いていますしね」

 あたしは二つ返事で了承して、ベッドから立ち上がった。

「えっと……いつ戻るの?」
「日付が変わる瞬間にしましょう」
「えっ!? あと10分しかないじゃない!」
「何か不都合でもあるんですか?」
「急いでママたちに事情を説明しないと、みんな困るでしょ?」
「そ、そうでしたね」
「よかった……明日が土曜日で……」
「学校が休みのタイミングを狙ったので、そうなりました」
「とにかく、早く伝えに行かなきゃ!」

 あたしは足早にリビングへ向かった。まだみんな起きてるといいんだけど。

「パパ、ママ!」
「あら、ほたる……まだ起きてたの?」
「ほたる……明日が休みだからって、夜更かしする気だろ」

 不思議そうな顔で尋ねるみちるママと、ヤレヤレといった顔で苦笑いを浮かべるはるかパパ。

「違うの! ちょっと聞いてほしいことがあって……」
「どうしたの? 真剣な顔で」

 キッチンで紅茶を淹れていたせつなママも、あたしの声を聞いてリビングに来てくれた。

「丁度いいから、みんな聞いてくれる?」

 あたしは一旦呼吸を整えて、要点をまとめながらサターンの話を伝えた。

「じゃあ、もうすぐ4歳に戻るのね?」

 紅茶を飲みながら尋ねてくるみちるママ。なんだか嬉しそうにしているのは気のせいだろうか。

「うん、だから明日ちびうさちゃん達に伝えてほしいの……」
「遊ぶ約束でもしてたの?」
「うん、商店街のイベントに行こうって約束したの」
「へぇ、何のイベントなんだ?」
「お菓子屋さんがオープンするんだって……それで子どもは無料でお菓子をくれるっていうから」
「そうか……あんまり食べ過ぎるなよ?」
「もう……こんな感じじゃ、行けるかも分からないよ」
「まぁ、それは明日のほたるの様子を見てって感じね」
「それより、もう0時を回るわよ?」
「あっ、ホントだ」

 せつなママに言われて、時計を見ると0時になる直前だった。

「0時の時計を気にするなんて、シンデレラみたいですね」
「サターン、冗談言ってる場合じゃないでしょ? あたしはどうしたらいいの?」
「大丈夫……目を瞑って体を楽にしてください」

 言われた通り、ソファーに腰掛けてリラックスする。何だか体の奥が熱くなっていく感じかな。少し怖いかも。

「ほたる、大丈夫?」
「うん、平気だよ」

 みちるママが手を握ってくれたおかげで、安心することが出来た。そして体が光に包まれていくのが分かる。

 少しだけ不安だけど、何事も無ければいいな。そんな風に思いながら温かい光に身をゆだねた。
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