ハートに絡む棘
その日の夜は、あかりちゃんの家に泊まらせてもらうことになった。遊びに行って、いつものように会話が弾んで長居しすぎちゃって。
「ご家族に、気を遣わせちゃったかな?」
「そんなことないよ? みんなあかりに親友ができたって喜んでるから」
親友。友だちよりは上だけど、恋人よりは下。本当は関係に上下なんてないことはわかってる。だけど気にしてしまう。この人の、あかりちゃんの恋人になりたいから。
「ちなつちゃん……疲れてるみたいだから、もう寝よっか」
「うん……」
あかりちゃんのスヤスヤとした寝息が聞こえ始めると、私の中で何かが決壊したように涙が流れる。
「うっ……うぅ……」
もう耐えられないよ。苦しいよ。切ないよ。
目の前に大好きな人がいるのに、分かり合えないなんて。
「悲しかったら、思いっきり泣いていいんだよ?」
「あ、あかりちゃん……起きてたの……?」
「やっぱり……あかりが原因なんだよね……」
「ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの……」
そんなつもり。それってどれを差しているのだろう。
あかりちゃんを傷つけるつもりなんてなかった?
好きになるつもりなんてなかった?
自分で言った言葉すら、理解ができない。
「ちなつちゃんの心が軽くなるなら、離れようか?」
「いや……やだよっ!?」
「じゃあ、教えてくれる? どうしてあかりと居ると悲しいのか……」
「気持ち悪いって、思うよ……?」
「思わない」
「もう、私のこと友だちとして見れなくなるよ?」
「そんなことない」
私の問いにキッパリと自分の意志を見せるあかりちゃん。
あれ? あかりちゃんって、こんなに強い子だったっけ。
「どんな内容でも受け入れるから……話してくれる?」
真剣な眼差しで私を見つめる。
そうか、私のために気丈に振る舞ってくれてるんだ。私が傷つかないように、泣かないように。必死になってくれてるんだ、あかりちゃんも。
なら、私も勇気を出さなきゃ。
「わかった……話すね……」
私は覚悟を決めて、自分の中に溜まっていた想いを全て話した。
あかりちゃんは時折驚いた表情を見せたけど、私が話し終えるまで静かに聞いてくれた。
「そっか……そうだったんだ……」
「ごめんね……迷惑だよね……」
「迷惑なんて思ったこと、一度もないよ」
「だって……だって……」
「嬉しいよ……ちなつちゃんの気持ち……」
「あかり……ちゃん……」
「あかりもそういうことに疎いから、今すぐに答えを出すことはできないけど……」
「うん……」
「ちなつちゃんとずっと一緒に居たいって気持ちは、同じだから……」
そう言って両手を広げて、優しく私を抱きしめてくれる。
「あかりのこと、好きになってくれてありがとう……」
「私……このまま好きでいていいのかな……」
「いいんだと思う……人の気持ちは、誰にも止められないから……」
その言葉だけで、救われた気がした。
きっと私の告白を受けて、あかりちゃんは真剣に考えて答えを出してくれるだろう。何日も何回も考えて。
それで出た結果なら、受け入れられる。私のことを大切に想ってくれたことに変わりはないのだから。
「これが、恋なんだね……」
「何だか……ちなつちゃんの方が、先に大人になっていくね」
「ふふっ、あかりちゃんも早く大人にならないとね」
「えへへっ、そうだね」
そう言って、笑いあう。心から笑えたのは、いつぶりだろう。
笑顔を無くしたキッカケも、笑顔を取り戻したキッカケもあなただった。
だからやっぱり、私はあなたが好きなんだ。
これまでも、これからも。
心の棘は、もう抜けていた。
END
「ご家族に、気を遣わせちゃったかな?」
「そんなことないよ? みんなあかりに親友ができたって喜んでるから」
親友。友だちよりは上だけど、恋人よりは下。本当は関係に上下なんてないことはわかってる。だけど気にしてしまう。この人の、あかりちゃんの恋人になりたいから。
「ちなつちゃん……疲れてるみたいだから、もう寝よっか」
「うん……」
あかりちゃんのスヤスヤとした寝息が聞こえ始めると、私の中で何かが決壊したように涙が流れる。
「うっ……うぅ……」
もう耐えられないよ。苦しいよ。切ないよ。
目の前に大好きな人がいるのに、分かり合えないなんて。
「悲しかったら、思いっきり泣いていいんだよ?」
「あ、あかりちゃん……起きてたの……?」
「やっぱり……あかりが原因なんだよね……」
「ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの……」
そんなつもり。それってどれを差しているのだろう。
あかりちゃんを傷つけるつもりなんてなかった?
好きになるつもりなんてなかった?
自分で言った言葉すら、理解ができない。
「ちなつちゃんの心が軽くなるなら、離れようか?」
「いや……やだよっ!?」
「じゃあ、教えてくれる? どうしてあかりと居ると悲しいのか……」
「気持ち悪いって、思うよ……?」
「思わない」
「もう、私のこと友だちとして見れなくなるよ?」
「そんなことない」
私の問いにキッパリと自分の意志を見せるあかりちゃん。
あれ? あかりちゃんって、こんなに強い子だったっけ。
「どんな内容でも受け入れるから……話してくれる?」
真剣な眼差しで私を見つめる。
そうか、私のために気丈に振る舞ってくれてるんだ。私が傷つかないように、泣かないように。必死になってくれてるんだ、あかりちゃんも。
なら、私も勇気を出さなきゃ。
「わかった……話すね……」
私は覚悟を決めて、自分の中に溜まっていた想いを全て話した。
あかりちゃんは時折驚いた表情を見せたけど、私が話し終えるまで静かに聞いてくれた。
「そっか……そうだったんだ……」
「ごめんね……迷惑だよね……」
「迷惑なんて思ったこと、一度もないよ」
「だって……だって……」
「嬉しいよ……ちなつちゃんの気持ち……」
「あかり……ちゃん……」
「あかりもそういうことに疎いから、今すぐに答えを出すことはできないけど……」
「うん……」
「ちなつちゃんとずっと一緒に居たいって気持ちは、同じだから……」
そう言って両手を広げて、優しく私を抱きしめてくれる。
「あかりのこと、好きになってくれてありがとう……」
「私……このまま好きでいていいのかな……」
「いいんだと思う……人の気持ちは、誰にも止められないから……」
その言葉だけで、救われた気がした。
きっと私の告白を受けて、あかりちゃんは真剣に考えて答えを出してくれるだろう。何日も何回も考えて。
それで出た結果なら、受け入れられる。私のことを大切に想ってくれたことに変わりはないのだから。
「これが、恋なんだね……」
「何だか……ちなつちゃんの方が、先に大人になっていくね」
「ふふっ、あかりちゃんも早く大人にならないとね」
「えへへっ、そうだね」
そう言って、笑いあう。心から笑えたのは、いつぶりだろう。
笑顔を無くしたキッカケも、笑顔を取り戻したキッカケもあなただった。
だからやっぱり、私はあなたが好きなんだ。
これまでも、これからも。
心の棘は、もう抜けていた。
END
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