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銀の意思は海で眠る

after うさぎ



「うさぎちゃん……」
「大丈夫……行こう」
「月へ行くのね?」

 あの子が言っていた晴れの海へ。泣いてなんかいられない。セレニティが残した贈りものを受け取りに行くんだ。

「それも持っていくの?」
「念のためにね」

 あたしは宝石箱を手に取って、玄関へ向かった。

「寒いね」
「そうね」

 外へ出て変身しても身がすくむほどの寒風。けど弱音なんて吐いてる場合じゃない。

「こんな夜更けにどちらへ? お嬢さん」
「えっ?」
「よっ」

 声のする方を向くと、そこにはタキシード仮面に変身したまもちゃんが立っていた。

「どうして……」
「ルナから連絡をもらってたんだ。何かあったらすぐ駆けつけられるようにってな」
「まもちゃん。ルナ……」
「お節介だったかしら?」
「ううん。ありがと……」

 気を取り直したあたしたちは公園へ向かい、月へ飛び立った。





「ここが、晴れの海……」
「前にも来たわよね。覚えてる?」
「うん。みんなと来た」
「けど、こんなに広い砂の海でどうやって探すんだ?」

 まもちゃんが指さす先を見ると、一面に広がる砂が視界に広がる。

「うさぎちゃん! 宝石箱が……」

 ルナに言われて手元を見ると、箱が光り輝いていた。

「共鳴してるのか」
「そうなのかも」

 まるでダウジングのように光が強くなる位置を探して、歩き続ける。

「今までで一番光ってるな」
「ここにセレニティの箱が……」
「任せろ」

 まもちゃんが砂を掘って探ってくれる中、光り輝いたソレをあたしは見逃さなかった。

「あ、あったよ!」
「これか!」

 あたしの箱と共鳴するように輝く、古びた宝石箱。

「ほら。うさ……」
「ありがとう」

 持っていた箱を地面に置いて、セレニティの箱を受け取る。

「これが……あの子の……」

 息を飲んでフタを開けると、そこには薄れかかったリップでメッセージが書かれていた。



『Dear うさぎ 友だちになってくれてありがとう 大好きな"まもちゃん"と幸せにね』



「セレニティ……」

 最後まで、あたしの恋を応援してくれてたんだね。

「うさ……」
「泣かないよ……あの子の分まで生きる。そう決めたんだもの」
「強いな。うさは」

 強くなんかないよ。
 あたしはいつだって、みんなに支えられてる。

 だから。

「まもちゃん……」
「うさ……」

 今だけは、その胸にうずくまってもいいかな。



 真っ暗な月の世界で、過去の自分から受け取った宝物。

 それは優しくて、温かくて、悲しくて。

 きっとルナやまもちゃんがいなければ耐えられなかったと思う。

 でも、二人は確かにそばで支えてくれる。

 だからあたしは前を向いて生きられる。

 わずかな時間だけでも、繋がり合えた"友だち"の分まで。

 ありがとう。セレニティ。

 大好きだよ。



 END
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