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銀の意思は海で眠る

side うさぎ



「ビックリした……」

 さっきは本当に驚いた。自分の部屋に帰ってきて、今日まもちゃんにプレゼントしてもらった宝石箱をワクワクしながら開けたら過去の自分と繋がるなんて。

「上手く誤魔化せたよね」

 本当はノックなんて無かったんだけど、気持ちを整理する時間が欲しかったのと、状況を飲み込みたくて早めに通信を切ってしまった。

「やっぱり何も映らない……」

 セレニティと別れてから何度もフタを開けなおしたのだけど、繋がることはなかった。何か条件があるのかな? 二人同時にフタを開くとか。

「しばらくは様子見かな」

 秘密にする約束もしたし、特に過去や未来が変わる雰囲気もない。もし異常が起これば、その時はまもちゃんやルナたちに相談しよう。

「うさぎちゃん?」
「あ、ルナ……」

 振り向くと、ルナがドアの小口からこっちへ向かっていた。

「何かあったの?」
「ううん。そういう訳じゃないけど」
「そう……それより明日はテストの勉強会でしょう? 早く寝ないと」
「うん。そうだね……」
「うさぎちゃん?」

 ルナが首を傾げながらあたしを見つめる。

「ねぇ、訊いてもいい?」
「何を?」
「セレニティって、どんな子だったの?」

 あたしが質問すると、ルナはキョトンとした表情で口を小さく開けていた。

「どうしたの? 急に」
「ちょっと知りたいなって思ったの」
「そうねぇ……うさぎちゃんと一緒で好奇心旺盛、甘いもの大好き、危なっかしくてほっとけないけどみんなに好かれる。そんな人だったわ」

 窓から見える月を眺めながら想いを馳せるように言うルナ。あたしは耳が痛くて少し汗をかいたけど、自分にそっくりなあの子と友だちになれたことが嬉しくて口元が綻んだ。

「後は……知ってると思うけど、好きな人には一途で周りが見えなくなるところもあったから心配でしょうがなかったわ」
「あはは、何だかごめんね?」
「いいのよ……あの時はみんなも不安で、事実上エンディミオンとの逢瀬は黙認していたうえ陰では応援してたし」
「そ、そうなの?」

 意外な発言に驚いたあたしは、思わずルナに訊き返してしまう。

「えぇ。でなきゃクイーンがまもちゃんまで転生させる訳ないじゃない」
「そ、そっか」

 セレニティは見張られてるとか秘密にしてほしいと言っていたけれど、あまり周りに心を開いてないのかな? ひょっとしてエンディミオンしか見えてないとか。

 過去とはいえ、あたしのことだから十分にあり得る。もしまた話せる機会があったら今度は色々訊いてみよう。

「ありがとう、ルナ」
「いえいえ。じゃあ寝ましょうか」
「うん」

 あたしはルナを抱きながらベッドに転がり、部屋の明かりを消して瞼を閉じた。
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