このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

右手のナイフと左手のぬくもり

 次の日。やすなは日直があるということで、先に学校へ行っていた。なので久しぶりになる一人での登校。

「人助けか……」

 まだ昨日の感触が残っている左手を見る。最初は助けることなんて、できないかもしれない。だけど全力で頑張ろう。私を助けてくれたアイツに報いるために。

「ひっく……ひっく……」
「ん?」

 道路の端を見ると、幼稚園児くらいの少女が一人で泣いていた。ひょっとして迷子だろうか。

「どうしたんだ、迷子か?」
「お姉ちゃんは?」
「私はソーニャ、一緒におまわりさんのところまで行ってあげるよ」
「ほんとう?」
「あぁ」
「ありがとう、お姉ちゃん」

 そう笑顔で答えながら、左手を差し出す。すると少女は喜んで私の手を取った。
 温かい。これがぬくもり。私が動いたから、触れることができたぬくもり。この温度を忘れないようにしよう。そしていつか本当に、人を救えるようになったらまたアイツの手を握ろう。

 私の中に流れる、優しさのカケラを渡すために。



 END
3/3ページ
スキ