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空の向こうで待ってる

 毎晩、ベッドで眠る前に思うことがある。

「何で……友だちになってくれたのかなぁ……」

 自分から手を差し伸べておいて何だけれど、不思議に思っていた。

 運命の出逢いだって、思ったから?
 全力でぶつかり合ったから?
 あの時、手を掴んでくれたから?

 フェイトちゃんが私と同じ学校に通うようになってから、一年ほど経った。闇の書事件も終わり、管理局で働きながら日常を過ごすうちに、私はある疑問を抱いていた。

 フェイトちゃんは私のことを、どう思っているのだろう。

 最初は敵同士だった。そして悲しい出来事を乗り越えて「友だち」になった。そこからは「仲間」として一緒に戦って絆を育んできた、つもりだった。

「また……男子に声、かけられてたな……」

 元々綺麗な子だし、お姫様みたいなところがあるから男子が放っておくハズないとは思っていたけれど。

「ここまで人気者になっちゃうと、寂しいかな……」

 最近のフェイトちゃんの人気ぶりは凄いものがある。きっかけは体育祭だった。初めてのスポーツイベントということもあり、緊張気味にみんなの応援をしていたフェイトちゃん。だけど、私たちのグループが劣勢になると負けず嫌いに火が付いたのか、すずかちゃんと一緒に大活躍してグループを逆転勝利に導いてくれた。その後も体育の授業でオーバーヘッドキックをしたり、スリーポイントシュートを放ったりして男子たちの注目の的になる。
 その頃から、男子たちはお昼休みの度にフェイトちゃんをグラウンドに誘うようになった。すずかちゃんも運動神経は抜群だけど、お嬢様特有の気品さがあって声をかけにくいと思っている男子が多いらしい。何より、あのアリサちゃんが徹底的にガードしているし。その点、フェイトちゃんは誰に対してもフランクに接するから、より人気に火が付いたのだと思う。

 誰にでも、優しく接する。

 その事実が、私の心を不安にさせる。フェイトちゃんにとっては、私も「その中」の一人だから友だちで居てくれるのかな。私は「トクベツ」な関係にはなれなかったのかな。

「トクベツって、何だろう……」

 自分で考えていて、よく分からなくなる。私はフェイトちゃんと、どうなりたいんだろう。

 一生の友だち。
 生涯のパートナー。
 家族。

「なに、考えてるんだろ……」

 今日はもう寝よう。最近フェイトちゃんのことばかり考えているし、顔が熱くなるし、胸も痛むし。

「明日は、お昼休みに誘ってみようかな」

 フェイトちゃんなら、男子の誘いより私を受け入れてくれる。そんな淡い期待を抱きながら、私は目を閉じた。
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