繋いだ手
あの頃は今よりもずっと簡単に、手を繋ぐことができたのに。
「そろそろ、はやて達と合流するね」
「うん……」
中学校へ向かう途中。フェイトちゃんに言われて、繋いでいた手を離す。
一体いつから、みんなにバレないように恋人まがいのことをするようになったんだろう。恋人といってもフェイトちゃんはそう思っていない。友だち関係よりは上だとお互い認識しているけれど、正式に付き合っている訳ではなかった。ただ親友以上の特別な間柄でいたかったから、私も深く掘り下げないで曖昧な関係を続けていた。
「ねぇ……」
「ん?」
少し先を歩いていたフェイトちゃんが、私の呼びかけに綺麗な髪をなびかせながら振り向く。
「みんなの前だと……イヤ?」
「ちょっと……恥ずかしいかな」
「そっか……」
別にやましいことをしている訳じゃないのに。そう思ったけれど、周りに公表できない自分が愚痴をこぼす資格なんてない。そんな中途半端な自分にも、今の関係性にも嫌気がさしてしまう。
「ごめんね」
「フェイトちゃんが謝る事じゃないよ」
「なのはもね」
「にゃはは……あんまり自己嫌悪しないようにするよ」
お互いに好きでいるのに、素直になれない関係性。
みんなに隠しているという後ろめたさ。
そんな感情が頭の中をグルグル回っていた。
「なのは、フェイト!」
「おはよ~」
「おはよう、なのはちゃん、フェイトちゃん」
はやてちゃん達が私達を見つけて、挨拶をしてくれる。朝のこの時間だけでも、フェイトちゃんと二人きりで登校できたらいいのに。なんて思う私は3人に対して薄情だろうか。
「どうしたん? 元気ない顔しとるけど」
「ううん、何でもない……」
そうして、いつも通りに5人で登校する。こんな気持ちでいる私だけ、みんなの少し後ろを歩きながら。
「あっ……」
始業前、筆記用具を準備していたらシャーペンを落としてしまった。本当に今日はどうかしてる。そんな気持ちを振り払うようにペンを拾おうとしたら、フェイトちゃんが先に拾ってくれた。
「はい、なのは」
「ありが……」
ペンを受け取る際の、ほんの一瞬だった。少しだけ指先がフェイトちゃんの手と触れ合って、再びペンを落とす。
「なのは?」
「ご、ごめん……」
何でだろう。さっきまでフェイトちゃんと手を繋いでいたのに。今は指先が触れただけで心が飛び跳ねるようだった。
「みんなの……前だからかな……」
「本当に大丈夫?」
トクン!
心配そうに私の顔を覗き込む表情を見て、また鼓動が高鳴る。
「そっか……」
これが、恋なんだ。
今まで曖昧に自分を誤魔化してきたけれど、自覚してしまった。自分の気持ちに、本当の想いに。
「なのは……具合が悪いなら、保健室に行こうか?」
「ううん、そこじゃ治らない病気だから」
「えっ? やっぱりどこか悪いの!?」
「病には違いないけど、ある意味幸せな病気かな……」
「えっと……えっ?」
キョトンとしながら、頭の上にハテナマークを浮かべている様子が可愛くて、つい笑ってしまう。
「フェイトちゃんには、自分で気付いてほしいかな」
「私が……気付く?」
「ヒントはここまでです」
「と、とにかく具合が大丈夫ならいいけど……」
私はペンを拾いなおして、授業の準備を始めた。
「そろそろ、はやて達と合流するね」
「うん……」
中学校へ向かう途中。フェイトちゃんに言われて、繋いでいた手を離す。
一体いつから、みんなにバレないように恋人まがいのことをするようになったんだろう。恋人といってもフェイトちゃんはそう思っていない。友だち関係よりは上だとお互い認識しているけれど、正式に付き合っている訳ではなかった。ただ親友以上の特別な間柄でいたかったから、私も深く掘り下げないで曖昧な関係を続けていた。
「ねぇ……」
「ん?」
少し先を歩いていたフェイトちゃんが、私の呼びかけに綺麗な髪をなびかせながら振り向く。
「みんなの前だと……イヤ?」
「ちょっと……恥ずかしいかな」
「そっか……」
別にやましいことをしている訳じゃないのに。そう思ったけれど、周りに公表できない自分が愚痴をこぼす資格なんてない。そんな中途半端な自分にも、今の関係性にも嫌気がさしてしまう。
「ごめんね」
「フェイトちゃんが謝る事じゃないよ」
「なのはもね」
「にゃはは……あんまり自己嫌悪しないようにするよ」
お互いに好きでいるのに、素直になれない関係性。
みんなに隠しているという後ろめたさ。
そんな感情が頭の中をグルグル回っていた。
「なのは、フェイト!」
「おはよ~」
「おはよう、なのはちゃん、フェイトちゃん」
はやてちゃん達が私達を見つけて、挨拶をしてくれる。朝のこの時間だけでも、フェイトちゃんと二人きりで登校できたらいいのに。なんて思う私は3人に対して薄情だろうか。
「どうしたん? 元気ない顔しとるけど」
「ううん、何でもない……」
そうして、いつも通りに5人で登校する。こんな気持ちでいる私だけ、みんなの少し後ろを歩きながら。
「あっ……」
始業前、筆記用具を準備していたらシャーペンを落としてしまった。本当に今日はどうかしてる。そんな気持ちを振り払うようにペンを拾おうとしたら、フェイトちゃんが先に拾ってくれた。
「はい、なのは」
「ありが……」
ペンを受け取る際の、ほんの一瞬だった。少しだけ指先がフェイトちゃんの手と触れ合って、再びペンを落とす。
「なのは?」
「ご、ごめん……」
何でだろう。さっきまでフェイトちゃんと手を繋いでいたのに。今は指先が触れただけで心が飛び跳ねるようだった。
「みんなの……前だからかな……」
「本当に大丈夫?」
トクン!
心配そうに私の顔を覗き込む表情を見て、また鼓動が高鳴る。
「そっか……」
これが、恋なんだ。
今まで曖昧に自分を誤魔化してきたけれど、自覚してしまった。自分の気持ちに、本当の想いに。
「なのは……具合が悪いなら、保健室に行こうか?」
「ううん、そこじゃ治らない病気だから」
「えっ? やっぱりどこか悪いの!?」
「病には違いないけど、ある意味幸せな病気かな……」
「えっと……えっ?」
キョトンとしながら、頭の上にハテナマークを浮かべている様子が可愛くて、つい笑ってしまう。
「フェイトちゃんには、自分で気付いてほしいかな」
「私が……気付く?」
「ヒントはここまでです」
「と、とにかく具合が大丈夫ならいいけど……」
私はペンを拾いなおして、授業の準備を始めた。
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