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月下想葬

 太陽光が海に差してキラキラと光っている。まるで夜の海がなかったかのように。

「もう、いないんだよね……」

 東京へ向かう電車の窓から、遠ざかってゆく海を眺める。もう、あたしを見守ってくれたあの人はいない。

 あたしが立派なプリンセスになって、幸せに暮らすことがマリアージュへの恩返しになるだろうか。

 それとも。

「ん……」

 夜中まで戦っていたせいか、瞼が閉じてしまう。

 窓から注ぐ太陽の光が心地良い。

「少し、眠ろう」

 ガトンゴトンと揺れる電車の中、あたしは眠りに着くことにした。





「むにゃ……そろそろかな……」

 もうすぐ、十番の最寄り駅に着くところだった。時間はかかるけど、乗り換えなしの一本で行き来できるから便利だな。なんて思いながら電車を降りると。

「うさぎちゃん!」
「えっ?」

 改札の向こう側で、亜美ちゃんたち4人が待ってくれていた。

「みんな!」
「もう、一人旅なんて言うから心配したわよ?」
「ちゃんと戻ってくるか不安だったから、みんなで待つことにしたんだ」

 急いで改札を出ると、みんなからワチャワチャと突かれたり髪をクシャクシャにされる。

 こんな日常を、あの子とも過ごしてみたかった。

 そう、思うと。

「うさぎ……泣いてるの?」

 レイちゃんが心配そうにあたしの顔を覗く。

「あ、ごめん……」
「何か……あったのね?」
「うん……だけど……」
「言いたくないことなら、無理しないでいいのよ?」

 亜美ちゃんもあたしの異変に気付いて気を遣ってくれる。美奈Pとまこちゃんも心配しながらあたしを見ていた。

 こんなにも、あたしは幸せだったんだ。

 愛する人がいる。
 大切な仲間がいる。

 今、やっと分かった。マリアージュがあたしの前に出てきてくれた理由が。

「みんな……」
「どうしたの、うさぎ?」

「いつもそばにいてくれて、ありがとう」

 突然の言葉に、みんなはキョトンとした後、笑顔で頷いてくれた。

「行こう、みんな」

 力強く、一歩を踏み出す。

 もう、不安な歩みじゃない。

 背中を押してくれた「お姉ちゃん」からの想いを胸に留めながら、家に帰ろう。



 大好きな人たちと一緒に。



 END
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