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ハート・オブ・シスター

side サターン



 セーラーサターン。

 世界を終わらせるほどの力を持つわたし。本来なら前線に出て戦うべきだろう。

 けれど。

「ちーびうーさちゃーん!」
「は~い」

 今はこの幼い少女、ほたるの中に居る。初めは同じわたしだから構わない。そう思っていた。

「えへへ、行ってまいりまーす!」
「行ってくるね~」

 スモールレディと一緒に、元気に学校へ行くほたる。いつしか、わたしはこの子に戦ってほしくない。そう思うようになっていた。

『な~に辛気くさい顔してんのよ?』
『ナイン……』
『また、ほたるの心配してたんでしょ?』
『お見通しですね』
『そりゃ、わたしたちは運命共同体だもの』
『そうですね』

 そう。わたしたちは一つの体に三つの心を宿した共同体。誰が欠けても成立しない。だけど。

『提案が、あるんですが……』
『ん? 珍しいわね』
『戦いの時は……わたしかあなた、どちらかが表に出るようにしませんか?』
『うん……っていうか、元々そのつもりだけど……』
『そうですよね……』
『今さら、どうしたの?』
『いえ……ほたるには、戦ってほしくないので……』
『うん……むしろ戦わない方向に持っていくのが、わたしたちに出来ることじゃない?』
『それは……正しいのでしょうか……』
『どゆこと?』
『ほたるだって、戦士の運命の元に生まれてきた子です』
『それはサターン絡みの運命でしょ?』
『そうです』
『うーん……いくら運命だからって、こんな小さな子に背負わせるのは酷じゃない?』
『ですが、同い年のスモールレディは戦っています』
『あの子は未来のプリンセスだし、わたしたちみたいに特殊じゃないもの』

 特殊。その言葉が、胸に引っかかる。

『特殊な運命を持っているから……戦わなくてもよいと?』
『どうしたのよ、サターン?』
『えっ……』
『ガラにもないことばかり、言っちゃってさ』
『そうですね……少し疲れているのかもしれません……』
『あ、毎回チェスで本気出すから、頭が疲れたんでしょ?』
『ふふっ、そうかもしれません』
『少し休みなさいよ』
『はい、わかりました』

 わたしは少し微笑んで、眠りについた。
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