ハート・オブ・シスター
side うさぎ
ほたるちゃんの雰囲気が変わった。それはサターンのシリアスな雰囲気とも少し違っていて。どこか幼くて、けれどミステリアスな雰囲気だった。
ちびうさがハラハラしながら見つめているのがわかる。よし、ここは母親としていっちょ治めてみせますか。
「は、初めまして……」
「こんにちは、あなたがナイン?」
「えぇ……」
目線を下に向けるナイン。少し、怖がっているのがわかる。
「安心して? 誰もあなたのことをどうにかしようなんて思ってないわ」
「ほ、ホントに?」
「えぇ、むしろほたるの遊び相手になってくれて感謝してるわ」
怯えるナインを安心させるように、せつなさんがウインクをしながら言う。
「ほたるってばね、わたしがチェスをやろうって言っても相手にしてくれないのよ?」
「チェス?」
意外な言葉が出てきて、少し驚く。
「うん……だからサターンとばっかりやってるんだけど」
「だけど?」
「サターンのヤツったら、いっつも本気で勝ちにきて、まだ一勝もできてないの!」
ガッツポーズをしながら立ち上がるナイン。そんな彼女の可愛らしい仕草を見て。
「ぷっ……」
「くすっ……可愛いところがあるのね……」
みんなも、微笑んでいた。
「えっ、何? わたしヘンなこと言った?」
「ううん、楽しい子だなって」
「うん、楽しいこと大好き!」
屈託のない笑顔で言うナインに、昔の邪気を感じることはなかった。
「それにしても、サターンも子供っぽいところがあるのね?」
「そーだよ! アイツが一番負けず嫌いなんだ!」
「何だかとっても楽しそうね」
ナインの愛らしさやサターンの意外な一面を知れて、あたしたちは会話を膨らませる。
「ところで、チェスって心の中なのに、どうやってやるんだい?」
「うん、ほたるが創り出してくれるんだ」
「へぇ、頭の中で?」
「そう、わたしたちが退屈しないようにって」
「優しいのね、ほたるちゃん」
「まぁね! 自慢の妹だよ!」
ほたるちゃんのことを妹というナイン。三人の関係性が分かる一言に、みんな笑みを零していた。
「そうだ、知り合いからケーキをもらったんだけど」
ふいに、レイちゃんが冷蔵庫からショートケーキを出してくる。
「ケーキってなに?」
「デザートだよ、とっても美味しいんだ」
「一つしかないから、よければナインが食べてみない?」
「わたしが食べていーのか?」
「えぇ」
「じゃあ、もらう」
「ちょっと、手で行くの!?」
遠慮なく、ショートケーキを手づかみで食べるナインに、ちびうさが動揺する。
「もぐっ……」
「どう?」
長い沈黙の後。
「おいし~い!」
ナインが頬を押さえながら、昇天しそうな顔で口をモグモグさせる。その姿がほたるちゃんだから、何だか余計に可笑しく見えた。
「そんなに美味しかった?」
「うん! この世にこんなに美味しい物があったなんて、地球おそるべし!」
「何だか大袈裟だなぁ」
「でも、好物が見つかってよかったわね」
「あ~、満足!」
そう言うと、ナインはほたるちゃんの中に戻ったようだった。
「全く……勝手なんだから……」
戻ってきたほたるちゃんが腕組みをしながら言う。
「あ、戻ったの?」
「うん、もうサターンとチェスをやってるよ? 今なら勝てるとか言って」
呆れながら言うほたるちゃんの方が、何だかお姉さんみたいだった。
「ほたるちゃん、少しでも心や体に異常を感じたら、すぐに言うんだよ?」
「うん! ありがとう、うさぎお姉ちゃん」
笑顔で答えるほたるちゃん。もう、さっきまでの不安はなくなっているようだった。
「レイお姉ちゃんたちも、今日はありがとう!」
「いいのよ」
「実際、何にもしてないしね」
「それにほたるちゃんはあたしたちの妹みたいなもんだからさ」
「これからも、遠慮なく相談していいのよ」
「うん!」
今度は大好きな家族に振り向く。
「パパ……ママ……」
「これから、騒がしくなりそうだな」
「ほたるが三人も居るってことだからね」
「ショートケーキの作り方も、覚えておくわ」
「ありがとう!」
そして最後に。
「ちびうさちゃん」
「ん……」
バツが悪そうにしていたちびうさに、ほたるちゃんが続ける。
「ちびうさちゃんがあたしのことを心配してくれてるのは、痛いほどよく分かったよ」
「ほたるちゃん……」
「できれば、今度からはあたしのお姉ちゃんたちも気にかけてくれると嬉しいな」
「うん……三人とも、ほたるちゃんだもんね……」
「うん!」
何とか我が娘とも、和解できたようで一安心だった。
「じゃ、今日は出前でも取りましょーよ!」
「あら、もうそんな時間?」
そうしてその夜は楽しく夕食を取って、解散した。
ほたるちゃんの雰囲気が変わった。それはサターンのシリアスな雰囲気とも少し違っていて。どこか幼くて、けれどミステリアスな雰囲気だった。
ちびうさがハラハラしながら見つめているのがわかる。よし、ここは母親としていっちょ治めてみせますか。
「は、初めまして……」
「こんにちは、あなたがナイン?」
「えぇ……」
目線を下に向けるナイン。少し、怖がっているのがわかる。
「安心して? 誰もあなたのことをどうにかしようなんて思ってないわ」
「ほ、ホントに?」
「えぇ、むしろほたるの遊び相手になってくれて感謝してるわ」
怯えるナインを安心させるように、せつなさんがウインクをしながら言う。
「ほたるってばね、わたしがチェスをやろうって言っても相手にしてくれないのよ?」
「チェス?」
意外な言葉が出てきて、少し驚く。
「うん……だからサターンとばっかりやってるんだけど」
「だけど?」
「サターンのヤツったら、いっつも本気で勝ちにきて、まだ一勝もできてないの!」
ガッツポーズをしながら立ち上がるナイン。そんな彼女の可愛らしい仕草を見て。
「ぷっ……」
「くすっ……可愛いところがあるのね……」
みんなも、微笑んでいた。
「えっ、何? わたしヘンなこと言った?」
「ううん、楽しい子だなって」
「うん、楽しいこと大好き!」
屈託のない笑顔で言うナインに、昔の邪気を感じることはなかった。
「それにしても、サターンも子供っぽいところがあるのね?」
「そーだよ! アイツが一番負けず嫌いなんだ!」
「何だかとっても楽しそうね」
ナインの愛らしさやサターンの意外な一面を知れて、あたしたちは会話を膨らませる。
「ところで、チェスって心の中なのに、どうやってやるんだい?」
「うん、ほたるが創り出してくれるんだ」
「へぇ、頭の中で?」
「そう、わたしたちが退屈しないようにって」
「優しいのね、ほたるちゃん」
「まぁね! 自慢の妹だよ!」
ほたるちゃんのことを妹というナイン。三人の関係性が分かる一言に、みんな笑みを零していた。
「そうだ、知り合いからケーキをもらったんだけど」
ふいに、レイちゃんが冷蔵庫からショートケーキを出してくる。
「ケーキってなに?」
「デザートだよ、とっても美味しいんだ」
「一つしかないから、よければナインが食べてみない?」
「わたしが食べていーのか?」
「えぇ」
「じゃあ、もらう」
「ちょっと、手で行くの!?」
遠慮なく、ショートケーキを手づかみで食べるナインに、ちびうさが動揺する。
「もぐっ……」
「どう?」
長い沈黙の後。
「おいし~い!」
ナインが頬を押さえながら、昇天しそうな顔で口をモグモグさせる。その姿がほたるちゃんだから、何だか余計に可笑しく見えた。
「そんなに美味しかった?」
「うん! この世にこんなに美味しい物があったなんて、地球おそるべし!」
「何だか大袈裟だなぁ」
「でも、好物が見つかってよかったわね」
「あ~、満足!」
そう言うと、ナインはほたるちゃんの中に戻ったようだった。
「全く……勝手なんだから……」
戻ってきたほたるちゃんが腕組みをしながら言う。
「あ、戻ったの?」
「うん、もうサターンとチェスをやってるよ? 今なら勝てるとか言って」
呆れながら言うほたるちゃんの方が、何だかお姉さんみたいだった。
「ほたるちゃん、少しでも心や体に異常を感じたら、すぐに言うんだよ?」
「うん! ありがとう、うさぎお姉ちゃん」
笑顔で答えるほたるちゃん。もう、さっきまでの不安はなくなっているようだった。
「レイお姉ちゃんたちも、今日はありがとう!」
「いいのよ」
「実際、何にもしてないしね」
「それにほたるちゃんはあたしたちの妹みたいなもんだからさ」
「これからも、遠慮なく相談していいのよ」
「うん!」
今度は大好きな家族に振り向く。
「パパ……ママ……」
「これから、騒がしくなりそうだな」
「ほたるが三人も居るってことだからね」
「ショートケーキの作り方も、覚えておくわ」
「ありがとう!」
そして最後に。
「ちびうさちゃん」
「ん……」
バツが悪そうにしていたちびうさに、ほたるちゃんが続ける。
「ちびうさちゃんがあたしのことを心配してくれてるのは、痛いほどよく分かったよ」
「ほたるちゃん……」
「できれば、今度からはあたしのお姉ちゃんたちも気にかけてくれると嬉しいな」
「うん……三人とも、ほたるちゃんだもんね……」
「うん!」
何とか我が娘とも、和解できたようで一安心だった。
「じゃ、今日は出前でも取りましょーよ!」
「あら、もうそんな時間?」
そうしてその夜は楽しく夕食を取って、解散した。