ハート・オブ・シスター
side ほたる
次の日。ちびうさちゃんの号令で、みんなが火川神社に集まってくれていた。司令室だと落ち着いて話が出来ないということで、レイお姉ちゃんが火川神社の一室を貸してくれた流れだ。
「今日は……ありがとう」
「畏まっちゃって、どうしたのよ?」
「悩みがあるって聞いたけど、わたし達に出来ることなら何でも相談に乗るわ」
「ほら、ほたるちゃん」
「うん……」
ちびうさちゃんに促され、あたしは今までのことを全て話した。みんな瞳を開いて驚いていたけれど、口を挟まずに最後まで聞いてくれた。
「じゃあ、今ほたるちゃんの中にはサターンとそのナインが居るのね?」
「うん……」
「そっか……よく、話してくれたね……」
うさぎお姉ちゃんが優しく微笑みながら言う。けど怖かった。昨日みたいに、みんなに怒られるんじゃないかって。みんなでサターンとナインを消そうとするんじゃないかって。
「一つ訊きたいんだけど、今日のお話はほたるちゃんが話したいって思って話したの?」
「えっ……」
「もしかして、ちびうさに言われたからじゃない?」
「そうだよ……」
「ちょっとうさぎ! どういう意味よ!?」
突然自分の名前が出たからか、ちびうさちゃんが声を荒げながらうさぎお姉ちゃんに詰め寄る。
「別にお説教しようっていうんじゃないけど、ほたるちゃんはこの事はみんなに隠し通すって決めたんだよね?」
「うん……」
「でも、ちびうさに怒られて話した」
「そうだね……」
「何が言いたいのよ? うさぎ」
「あたしはね? ほたるちゃんの意思を尊重してほしいの」
「あたしの……意思?」
「うん、特に困ってることがなくて普通に生活出来るのなら、ムリに話す必要はなかったんじゃないかなって」
「なんで……」
「だってほたるちゃん……話してる時、とても辛そうだったから」
ズキッと胸が痛む。全てを見透かしているようなうさぎお姉ちゃんを見て、あたしはもう不安を白状することにした。
「不安、だったよね?」
「うん……みんなが、サターンやナインのことを殺そうとするんじゃないかって……」
あたしは体を震わせながら告白した。前世の、命を狙われていた時の記憶が甦ってきて。もう泣きそうだった。そんなあたしを見たうさぎお姉ちゃんが、あたしの体を抱きしめる。
「えっ……」
「大丈夫……もうほたるちゃんを苦しめる人なんて居ないよ……」
「あ……ぅ……」
「いいんだよ、思いっきり泣いても……」
「うわあああん!」
あたしはうさぎお姉ちゃんの温もりの中で泣き続けた。今まで隠していた罪悪感。みんなに心配をかけた情けなさ。そしてサターンとナインのことを理解してくれた安堵感から。
10分くらい泣き続けただろうか。ひとしきり泣いた後、あたしはうさぎお姉ちゃんの胸から離れてみんなに向き直った。
「落ち着いた? ほたる」
「うん……」
「何よ……何よ! これじゃあ、あたしが悪いみたいじゃない!?」
「ちびうさ……」
「あたしはほたるちゃんのことが心配なんだよ!? みんなは心配じゃないの!?」
「もちろん心配だよ? 今日話してくれたおかげで、対策を取ることだって出来るし」
「でも、話す必要ないってさっき言ったじゃない!」
「それは、ほたるちゃんが自分の意志で話してくれるなら相談に乗るけど、ちびうさに言われてつらそうに話すのは違うよって話だよ」
「じゃあ、ほたるちゃんが手遅れになったらどうするのよ!?」
「ほたるちゃんなら、手遅れになる前にあたしたちに話してくれるんじゃないかな?」
「そんなことない! ほたるちゃんはいつも自分一人で抱え込んじゃって、周りに迷惑かけないように頑張っちゃうんだから!」
「そんな時のために、サターンたちが居るんじゃないかな?」
「えっ……」
「ほたるちゃんは、文字通り一人じゃないのよ」
「一人じゃ……ない?」
「そう、いざとなったら冷静沈着なサターンと、思い切りのいいナインが助けてくれる……だから、きっと乗り越えられるんじゃないかな?」
「うさぎ……」
「もちろん、あたしたちやちびうさもいるしね!」
「今回、ほたるはその事に気付けてよかったんじゃないかしら?」
みちるママが言う。そうだ。あたしは一人じゃない。
サターンが居る。
ナインが居る。
みんなが居る。
だから、前を向いて歩いて行ける。
「ちびうさちゃん」
「ほ、ほたるちゃん」
「ありがとね?」
「えっ……」
「昨日、叱ってくれたことも……あたしを大切に想ってくれるところも……」
「ほたるちゃん……」
「ちびうさちゃんが友だちでいてくれて、よかった」
「うん……ひっく……あたしも、ありがとう……」
ちびうさちゃんも堤防が決壊しかのように、溢れ出る涙を流していた。
「何か……あたし達の出る幕、なかったわね」
「うさぎちゃんが全部やってくれたからね」
「成長したなぁ、うさぎちゃん」
「まぁ、今までがお子ちゃま過ぎただけだけどね」
「ちょっと、みんな言いたいこと言ってくれるわね!?」
美奈お姉ちゃんたちにからかわれて、プンプン怒るうさぎお姉ちゃん。何だかさっきまでのしっかりした様子とのギャップに可愛く見える。
「ん……」
「どうしたんだ? みちる」
「いえ……わたしは親なのに、ほたるのこと何にも気付いてあげられなくって情けないわ……」
「それは、わたしたちの反省点ね」
「これから、ケアしていけばいいのさ」
「そうね……」
みんなひとしきり落ち着いたら、話題はナインのことになった。
「ね、ナインとお話は出来ないの?」
「うん、あたしと交代すれば出てくるよ?」
「呼んでもらってもいい?」
「いいよ」
あたしが心の中を見ると、ナインはサターンの後ろに隠れて恥ずかしそうにしていた。
『ほら……あなたを呼んでいますよ?』
『な、何よ……わたしを消そうっていうんじゃないでしょーね?』
「そんなことないよ、みんなナインと話がしたいんだって」
『わかったわよ……』
次の日。ちびうさちゃんの号令で、みんなが火川神社に集まってくれていた。司令室だと落ち着いて話が出来ないということで、レイお姉ちゃんが火川神社の一室を貸してくれた流れだ。
「今日は……ありがとう」
「畏まっちゃって、どうしたのよ?」
「悩みがあるって聞いたけど、わたし達に出来ることなら何でも相談に乗るわ」
「ほら、ほたるちゃん」
「うん……」
ちびうさちゃんに促され、あたしは今までのことを全て話した。みんな瞳を開いて驚いていたけれど、口を挟まずに最後まで聞いてくれた。
「じゃあ、今ほたるちゃんの中にはサターンとそのナインが居るのね?」
「うん……」
「そっか……よく、話してくれたね……」
うさぎお姉ちゃんが優しく微笑みながら言う。けど怖かった。昨日みたいに、みんなに怒られるんじゃないかって。みんなでサターンとナインを消そうとするんじゃないかって。
「一つ訊きたいんだけど、今日のお話はほたるちゃんが話したいって思って話したの?」
「えっ……」
「もしかして、ちびうさに言われたからじゃない?」
「そうだよ……」
「ちょっとうさぎ! どういう意味よ!?」
突然自分の名前が出たからか、ちびうさちゃんが声を荒げながらうさぎお姉ちゃんに詰め寄る。
「別にお説教しようっていうんじゃないけど、ほたるちゃんはこの事はみんなに隠し通すって決めたんだよね?」
「うん……」
「でも、ちびうさに怒られて話した」
「そうだね……」
「何が言いたいのよ? うさぎ」
「あたしはね? ほたるちゃんの意思を尊重してほしいの」
「あたしの……意思?」
「うん、特に困ってることがなくて普通に生活出来るのなら、ムリに話す必要はなかったんじゃないかなって」
「なんで……」
「だってほたるちゃん……話してる時、とても辛そうだったから」
ズキッと胸が痛む。全てを見透かしているようなうさぎお姉ちゃんを見て、あたしはもう不安を白状することにした。
「不安、だったよね?」
「うん……みんなが、サターンやナインのことを殺そうとするんじゃないかって……」
あたしは体を震わせながら告白した。前世の、命を狙われていた時の記憶が甦ってきて。もう泣きそうだった。そんなあたしを見たうさぎお姉ちゃんが、あたしの体を抱きしめる。
「えっ……」
「大丈夫……もうほたるちゃんを苦しめる人なんて居ないよ……」
「あ……ぅ……」
「いいんだよ、思いっきり泣いても……」
「うわあああん!」
あたしはうさぎお姉ちゃんの温もりの中で泣き続けた。今まで隠していた罪悪感。みんなに心配をかけた情けなさ。そしてサターンとナインのことを理解してくれた安堵感から。
10分くらい泣き続けただろうか。ひとしきり泣いた後、あたしはうさぎお姉ちゃんの胸から離れてみんなに向き直った。
「落ち着いた? ほたる」
「うん……」
「何よ……何よ! これじゃあ、あたしが悪いみたいじゃない!?」
「ちびうさ……」
「あたしはほたるちゃんのことが心配なんだよ!? みんなは心配じゃないの!?」
「もちろん心配だよ? 今日話してくれたおかげで、対策を取ることだって出来るし」
「でも、話す必要ないってさっき言ったじゃない!」
「それは、ほたるちゃんが自分の意志で話してくれるなら相談に乗るけど、ちびうさに言われてつらそうに話すのは違うよって話だよ」
「じゃあ、ほたるちゃんが手遅れになったらどうするのよ!?」
「ほたるちゃんなら、手遅れになる前にあたしたちに話してくれるんじゃないかな?」
「そんなことない! ほたるちゃんはいつも自分一人で抱え込んじゃって、周りに迷惑かけないように頑張っちゃうんだから!」
「そんな時のために、サターンたちが居るんじゃないかな?」
「えっ……」
「ほたるちゃんは、文字通り一人じゃないのよ」
「一人じゃ……ない?」
「そう、いざとなったら冷静沈着なサターンと、思い切りのいいナインが助けてくれる……だから、きっと乗り越えられるんじゃないかな?」
「うさぎ……」
「もちろん、あたしたちやちびうさもいるしね!」
「今回、ほたるはその事に気付けてよかったんじゃないかしら?」
みちるママが言う。そうだ。あたしは一人じゃない。
サターンが居る。
ナインが居る。
みんなが居る。
だから、前を向いて歩いて行ける。
「ちびうさちゃん」
「ほ、ほたるちゃん」
「ありがとね?」
「えっ……」
「昨日、叱ってくれたことも……あたしを大切に想ってくれるところも……」
「ほたるちゃん……」
「ちびうさちゃんが友だちでいてくれて、よかった」
「うん……ひっく……あたしも、ありがとう……」
ちびうさちゃんも堤防が決壊しかのように、溢れ出る涙を流していた。
「何か……あたし達の出る幕、なかったわね」
「うさぎちゃんが全部やってくれたからね」
「成長したなぁ、うさぎちゃん」
「まぁ、今までがお子ちゃま過ぎただけだけどね」
「ちょっと、みんな言いたいこと言ってくれるわね!?」
美奈お姉ちゃんたちにからかわれて、プンプン怒るうさぎお姉ちゃん。何だかさっきまでのしっかりした様子とのギャップに可愛く見える。
「ん……」
「どうしたんだ? みちる」
「いえ……わたしは親なのに、ほたるのこと何にも気付いてあげられなくって情けないわ……」
「それは、わたしたちの反省点ね」
「これから、ケアしていけばいいのさ」
「そうね……」
みんなひとしきり落ち着いたら、話題はナインのことになった。
「ね、ナインとお話は出来ないの?」
「うん、あたしと交代すれば出てくるよ?」
「呼んでもらってもいい?」
「いいよ」
あたしが心の中を見ると、ナインはサターンの後ろに隠れて恥ずかしそうにしていた。
『ほら……あなたを呼んでいますよ?』
『な、何よ……わたしを消そうっていうんじゃないでしょーね?』
「そんなことないよ、みんなナインと話がしたいんだって」
『わかったわよ……』