このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

ハート・オブ・シスター

side ほたる



「大きい病院だなぁ」

 次の日。あたしが病院の受付付近に行くと、亜美お姉ちゃんが手を振りながらこちらに来てくれた。

「あ、亜美お姉ちゃん」
「おはよう、ほたるちゃん」
「今日はよろしくお願いします!」
「いえいえ、じゃあまわりましょうか」

 そうしてあたしは採血をしたり心電図を取ったりと、とにかく色々な検査をした。

『長いわね~』
『病院はそういう場所ですから』
『どこも悪いとこ、なければいいわね!』
『くすっ、そんなにほたるの体が心配ですか?』
『体じゃなくて、ほたる全部が心配なの!』
『全部?』
『そーよ! わたしたちはお姉さんなんだから、ほたるを護ってあげないと』
『ふふっ、そうですね』

 二人の心配に感謝をしつつ病院を巡っていると、最後の検査になった。

「心療内科?」
「えぇ……本当は健康診断には入ってないんだけど、今回は特別よ?」
「ふ~ん」

 心療内科。ここって、心の病気の人が受ける所じゃないのかな。あたし病気だと思われてるのかな?

「あ、気にしないでね? 念の為に受けられるものは受けておこうってだけだから」
「そっか」





 診療室のドアを開けると、綺麗な女医さんがニコッと微笑みながら迎えてくれた。

「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「では、初めの質問です……土萠さん、最近悩みはありますか?」
「悩み? う~ん」
「ふふっ、ムリに思い出さなくてもいいですよ?」
「あ、はい……」

『な~んだ、てっきりクイズとか出してくれると思ったのに』
『そういう検査もありますが、これはカウンセリングみたいですね』
『センセー、クイズ出してよ~』
「ナイン、ちょっと黙ってて……」
『ぶー』

「ふむ……」

 先生がカルテに何かを書き綴っている。ひょっとして、バレているのだろうか。不安が心を巡る中、次の質問であたしは凍り付いた。

「では……頭の中で、声が聞こえたりはしますか?」
「っ!?」

 どうしよう。余りにもピンポイントで指摘されて、動揺の色を隠せない。

『おい、やばくねー?』
『まぁ検査ですし……大丈夫じゃないでしょうか……』

「どうしました?」
「あ、いえっ! 聞こえないです!」
「そうですか……」

 心臓がドクンドクンする。この子たちのことがバレたら、きっとみんな消し去ろうとする。あの時みたいに。嫌だ。そんなの嫌だよ。

「じゃあ、最後の質問です」
「は、はい」
「ご自分のことは、好きですか?」
「えっ……」

 自身のことが好きかと訊かれ、思わず心の中の二人を見る。

『なによ?』
『どうかしましたか?』
「ううん、何でもない」

 そうだ。あたしたちは三心同体。全部含めて、あたしなんだ。

「どうですか? ご自分のこと、好きですか?」

 先生の質問に、あたしは胸を張って言う。

「大好きです!」
「ふふっ、ありがとうございました。」

 先生は優しく笑うと、あたしの頭を撫でてくれた。





「どうだった?」

 外で待っていた亜美お姉ちゃんが、感想を聞いてくる。

「うん、楽しかったよ」
「そう、よかった」
「今日はありがとうございました!」
「いえいえ……そうだ、ここのレストランでお昼を食べない?」
「えっ、いいの!?」
「えぇ」
「わ~い!」

 飛び跳ねて喜ぶあたしに、亜美お姉ちゃんがふわりとした優しい笑顔で応えてくれた。
3/19ページ
スキ