ハート・オブ・シスター
side サターン
『ナイン……』
『全部、聞こえてたわよ……』
『わたしたちは……』
『それはアト! 今はほたるを目覚めさせるのがサキ!』
『そうですね』
ナインの方が前向きだった。わたしも落ち込んでいる場合じゃない。
「では、具体的にどうすればほたるは目覚めるのでしょう?」
「サターンとナインが、ほたるちゃんにパワーを戻すのよ……ゆっくりとね」
「わたしたちが……パワーを……」
「えぇ……100%目覚める保証はないけれど、やってみる価値はあるわ」
「で、でも危険なんじゃ……」
「大丈夫です、スモールレディ……わたしたちを信じてください」
「サターン……」
「必ず、ほたるを助けます」
「うん……お願い……」
わたしはベッドに横になり、深層意識に戻った。
「お願い……ほたるちゃんを助けて……」
「信じましょう……二人を……」
『準備はいーか?』
『いつでも』
『命、かけるわよ……』
『当然です』
わたしとナインのパワーをほたるに戻す。ということは、エナジーが足りなくなったわたしたちもどうなるか分からない。
『本当に賭け、ですね……』
『また三人で、笑いあえたらいいわね』
『えぇ』
わたしたちは深層意識の中で眠っているほたるの体に触れて、力の還元を始めた。
『くっ!? エナジーが吸い取られる……』
『これが……元々ほたるが持っていたパワー……』
意識が、飛びそうになる。パワーの吸収が激しすぎて、体が張り裂けそうな感じだ。
『これだけのパワーを……この子の小さな体が持ってたっていうの……』
『今まで……よく耐えてくれました……』
『わたしたちに、弱音一つ吐かずにね……』
『強いんです……この子は……』
『あぁ……強くて、ガンコだ……』
ほたるの波長が戻りつつある。ようやく見えた回復の兆し。このままいけば、また三人で暮らせる。そう思っていたら。
『なっ!?』
『きゅ、急にパワーが……』
エナジーが吸収される速度が、グンと上がった。もうわたしとナインの残りエナジーも少ない。このまま吸い取られ続けたら、二人とも消滅する。
『あ~あ……』
『ナイン?』
『結局最期まで、サターンにはチェスで勝てなかったわね』
『何を……言ってるんですか?』
『あのケーキってやつ……もう一度、食べたかったなぁ』
『ナイン……まさか!?』
今生の悔いを告げるナイン。その顔は寂しげな、けれどどこか嬉しそうな表情だった。
『今まで、ありがとね……』
『ナイン!』
ナインは残っていたエナジーを全て凝縮させ、ほたるに還元を始めた。
『あなた一人では、逝かせません』
『サターン!?』
わたしも自分の全てを、ほたるに対する想いの全てをぶつけよう。世界を再生させる力を持っているのだ。目の前の小さな少女一人救えなくてどうする。
『二人で全力を出せば……生き残る可能性は増えます……』
『全く……サターンもガンコよね……』
『ほたるに似たんですよ』
『ま、わたしも人のこと言えないか』
お互いを見て、笑いあう。結局わたしたち姉妹は、似た者同士だったのかもしれない。
『ラストスパートです!』
『お願い……成功して!』
わたしたちの光が、ほたるを包み込む。
『はぁっ……はぁっ……』
『生きてますか……ナイン……』
『な、なんとか……』
光が収まり、ほたるの体がゆっくりと現れる。
『この感じ……』
『ほたるの波長が……戻った……』
『じゃ、じゃあ……』
『成功です……じきに目覚めるでしょう』
『よっしゃ!』
ナインと目を合わせて、ハイタッチする。これでほたるは目覚めて、またみんなと楽しい日々を過ごせる。けれど、そのためには。
『このままわたしたちがほたるから離れれば……この子はフツーの女の子として、暮らしていける……』
『えぇ……』
ナインの言いたいことは、わたしの想いと同じだった。
『お別れです……ほたる……』
『楽しかったわよ……元気でね……』
『そんなことしたら……本気で怒るよ?』
『えっ?』
『ほ、ほたる!?』
ほたるは既に、目覚めていた。そして真面目な表情でわたしたちに告げる。
『あたし達は、三心同体じゃなかったの?』
『で、でも……』
『ちびうさちゃんに言われたこと、気にしてるの?』
『き、聞いてたの?』
『うん……夢の中でみんなのこと、見てたから』
『じゃ、じゃあ知ってるでしょ!? わたしたちのせいで、ほたるが……』
『構わない』
『えっ……』
『この中の一人が欠けそうになったら、絶対に助けるし……もし誰かのせいで消えたとしても、それを受け入れる……』
『ほたる……』
『だから……あたしたちはずっと一緒よ』
『うっ……ぐすっ……』
『ありがとう……ほたる……』
『うん!』
ウインクをしながら笑顔で答えるほたる。今さらながらに気付く。わたしたちの妹が、こんなにも強かったことに。
『ナイン……』
『全部、聞こえてたわよ……』
『わたしたちは……』
『それはアト! 今はほたるを目覚めさせるのがサキ!』
『そうですね』
ナインの方が前向きだった。わたしも落ち込んでいる場合じゃない。
「では、具体的にどうすればほたるは目覚めるのでしょう?」
「サターンとナインが、ほたるちゃんにパワーを戻すのよ……ゆっくりとね」
「わたしたちが……パワーを……」
「えぇ……100%目覚める保証はないけれど、やってみる価値はあるわ」
「で、でも危険なんじゃ……」
「大丈夫です、スモールレディ……わたしたちを信じてください」
「サターン……」
「必ず、ほたるを助けます」
「うん……お願い……」
わたしはベッドに横になり、深層意識に戻った。
「お願い……ほたるちゃんを助けて……」
「信じましょう……二人を……」
『準備はいーか?』
『いつでも』
『命、かけるわよ……』
『当然です』
わたしとナインのパワーをほたるに戻す。ということは、エナジーが足りなくなったわたしたちもどうなるか分からない。
『本当に賭け、ですね……』
『また三人で、笑いあえたらいいわね』
『えぇ』
わたしたちは深層意識の中で眠っているほたるの体に触れて、力の還元を始めた。
『くっ!? エナジーが吸い取られる……』
『これが……元々ほたるが持っていたパワー……』
意識が、飛びそうになる。パワーの吸収が激しすぎて、体が張り裂けそうな感じだ。
『これだけのパワーを……この子の小さな体が持ってたっていうの……』
『今まで……よく耐えてくれました……』
『わたしたちに、弱音一つ吐かずにね……』
『強いんです……この子は……』
『あぁ……強くて、ガンコだ……』
ほたるの波長が戻りつつある。ようやく見えた回復の兆し。このままいけば、また三人で暮らせる。そう思っていたら。
『なっ!?』
『きゅ、急にパワーが……』
エナジーが吸収される速度が、グンと上がった。もうわたしとナインの残りエナジーも少ない。このまま吸い取られ続けたら、二人とも消滅する。
『あ~あ……』
『ナイン?』
『結局最期まで、サターンにはチェスで勝てなかったわね』
『何を……言ってるんですか?』
『あのケーキってやつ……もう一度、食べたかったなぁ』
『ナイン……まさか!?』
今生の悔いを告げるナイン。その顔は寂しげな、けれどどこか嬉しそうな表情だった。
『今まで、ありがとね……』
『ナイン!』
ナインは残っていたエナジーを全て凝縮させ、ほたるに還元を始めた。
『あなた一人では、逝かせません』
『サターン!?』
わたしも自分の全てを、ほたるに対する想いの全てをぶつけよう。世界を再生させる力を持っているのだ。目の前の小さな少女一人救えなくてどうする。
『二人で全力を出せば……生き残る可能性は増えます……』
『全く……サターンもガンコよね……』
『ほたるに似たんですよ』
『ま、わたしも人のこと言えないか』
お互いを見て、笑いあう。結局わたしたち姉妹は、似た者同士だったのかもしれない。
『ラストスパートです!』
『お願い……成功して!』
わたしたちの光が、ほたるを包み込む。
『はぁっ……はぁっ……』
『生きてますか……ナイン……』
『な、なんとか……』
光が収まり、ほたるの体がゆっくりと現れる。
『この感じ……』
『ほたるの波長が……戻った……』
『じゃ、じゃあ……』
『成功です……じきに目覚めるでしょう』
『よっしゃ!』
ナインと目を合わせて、ハイタッチする。これでほたるは目覚めて、またみんなと楽しい日々を過ごせる。けれど、そのためには。
『このままわたしたちがほたるから離れれば……この子はフツーの女の子として、暮らしていける……』
『えぇ……』
ナインの言いたいことは、わたしの想いと同じだった。
『お別れです……ほたる……』
『楽しかったわよ……元気でね……』
『そんなことしたら……本気で怒るよ?』
『えっ?』
『ほ、ほたる!?』
ほたるは既に、目覚めていた。そして真面目な表情でわたしたちに告げる。
『あたし達は、三心同体じゃなかったの?』
『で、でも……』
『ちびうさちゃんに言われたこと、気にしてるの?』
『き、聞いてたの?』
『うん……夢の中でみんなのこと、見てたから』
『じゃ、じゃあ知ってるでしょ!? わたしたちのせいで、ほたるが……』
『構わない』
『えっ……』
『この中の一人が欠けそうになったら、絶対に助けるし……もし誰かのせいで消えたとしても、それを受け入れる……』
『ほたる……』
『だから……あたしたちはずっと一緒よ』
『うっ……ぐすっ……』
『ありがとう……ほたる……』
『うん!』
ウインクをしながら笑顔で答えるほたる。今さらながらに気付く。わたしたちの妹が、こんなにも強かったことに。