ハート・オブ・シスター
side ちびうさ
「ねぇ……何かわかった?」
夜の司令室。あたしはコンピュータを操作している亜美ちゃんに、答えを急かすように言った。
「ごめんね……まだ情報が足りなくて……」
「ちびうさ、焦っちゃダメよ?」
「うん……」
ほたるちゃんが眠り続けて、丸一日が経とうとしていた。
「こんなに意識が戻らないなんて……おかしいよぉ……」
「ちびうさ……」
「せめて……サターンかナインに話を訊ければいいんだけど」
「あの子たちは、どうしてるんだろう?」
「やっぱり、眠ってるのかな?」
「いえ、わたしたちは健在です」
「えっ!?」
司令室のドアが開くと、そこにはほたるちゃんが立っていた。だけど口調から察するに、おそらくこの子はサターン。
「サターンなのね! ほたるちゃんは!? どうしちゃったの!?」
あたしはすがるようにサターンに詰め寄った。けれどサターンも期待した答えは返せない。そんな様子で口を開く。
「すみません……わたしたちにも分からないんです……」
「そ、そんな……」
「でも……表に出てきたってことは……」
「えぇ……わたしも、どうすればほたるが眠りから覚めるのか調べます」
「あなたが力になってくれたら、心強いわ」
「それなら、まず着替えなきゃね?」
「えっ……」
まこちゃんに言われると、サターンは自分の着ている衣服を見る。
「病衣のまま……でしたね」
ちょっと照れくさそうに言うサターンに、その場の雰囲気が少し明るくなる。
「あの……このような格好は恥ずかしいのですが……」
サターンはここぞとばかりにみちるさんが用意したフリフリの洋服を着させられて、困惑していた。
「あら、ほたるの普段着よ?」
「知っていますよ? これは特別な日に着る服だと……」
「こんな状況とはいえ、今は珍しくあなたが居るんだから特別な日よ?」
「ふぅ……」
軽くため息を吐くサターン。
「なんで……なんでみんな、そんな悠長にしてられるのよ!?」
冗談を言い合う空気に耐えられなくなったあたしは、思わず叫んでしまった。
「スモールレディ……」
「ほたるちゃんがあんな状態なのに……なんで笑っていられるのよ!?」
「ちびうさちゃん……焦っても、解決しないわ」
「そうだよ? それにほたるちゃんは死んじゃった訳じゃないし」
「それは……そうだけど……」
「とにかく、原因を突き止めましょう」
「えぇ」
「なによ……」
みんな、のん気な事ばかり言って。本当にほたるちゃんのことを心配してるの?
「やっぱり、あたしが助けなきゃ……」
「亜美……この波形を……」
「あ、本当!」
サターンと亜美ちゃんが、何かに気付いたように目を合わせる。
「どうしたの?」
「っていうことは……」
「原因が……判りそうです……」
「ほ、本当に!?」
「サターン……これを……」
「やはり……わたしたちでしたか……」
「どういうこと?」
うさぎの問いかけに、サターンが俯く。代わりに亜美ちゃんが説明を始めた。
「今までのほたるちゃんのデータを振り返ってたんだけど……サターンに覚醒してからと、ナインが生まれてからで、パワーの波形が変わってるの……」
「つまり……どゆこと?」
「要は……わたしたちとの融合によって、ほたるのパワーが分散してしまったんです」
「分散?」
「本来、一人分の蓄えしかないエネルギーを、わたしとナインに分け続けていたから……」
「っ!?」
あたしは驚愕した。そして怒りの感情が湧いてくる。
「やっぱり……あんたたちじゃない……」
「ちびうさ?」
「あたし、ずっと言ってたよね!? ほたるちゃんにどんな負担がかかってるか分からないって!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
「ほたるちゃんが倒れたのは、サターンとナインのせいじゃない!」
「ちびうさ!」
うさぎがあたしに怒ったけど、そんなことは気にしないで続ける。この事実を聞いた以上、もうあたしは止まれなかった。そして最低な言葉を口にする。
「申し訳……ありません……」
「謝って済む問題じゃないでしょ!?」
「返す言葉も……ありません……」
「出ていきなさいよ……ほたるちゃんから、出てけ!」
パァン!
あたしが叫び終わった後、頬に衝撃が走った。我に返って前を見ると、うさぎが心痛そうな表情で叩いた手を握りしめながらあたしを見ていた。
「今の言葉……ほたるちゃんが聞いたら、どう思う?」
「っ!?」
「サターンもナインも、ほたるちゃんの大事な人なんだよ?」
以前、ほたるちゃんに言われたことを思い出す。サターンの心もナインの心も、ほたるちゃんと一緒だということ。つまりあたしは、ほたるちゃん自身を否定した。
「うっ……うぅ……」
「スモールレディ……」
「あたしは……ただ……ほたるちゃんを助けたくて……」
ポロポロと、涙が零れる。
「ちびうさは、ほたるちゃんのことが大好きだもんね……ただ、その好きすぎる気持ちが先走っちゃっただけだよ……」
うさぎが諭すようにあたしを抱きしめてくれた。
「う……うわあああん!」
あたしは、ただ泣き続けることしか出来なかった。
「ねぇ……何かわかった?」
夜の司令室。あたしはコンピュータを操作している亜美ちゃんに、答えを急かすように言った。
「ごめんね……まだ情報が足りなくて……」
「ちびうさ、焦っちゃダメよ?」
「うん……」
ほたるちゃんが眠り続けて、丸一日が経とうとしていた。
「こんなに意識が戻らないなんて……おかしいよぉ……」
「ちびうさ……」
「せめて……サターンかナインに話を訊ければいいんだけど」
「あの子たちは、どうしてるんだろう?」
「やっぱり、眠ってるのかな?」
「いえ、わたしたちは健在です」
「えっ!?」
司令室のドアが開くと、そこにはほたるちゃんが立っていた。だけど口調から察するに、おそらくこの子はサターン。
「サターンなのね! ほたるちゃんは!? どうしちゃったの!?」
あたしはすがるようにサターンに詰め寄った。けれどサターンも期待した答えは返せない。そんな様子で口を開く。
「すみません……わたしたちにも分からないんです……」
「そ、そんな……」
「でも……表に出てきたってことは……」
「えぇ……わたしも、どうすればほたるが眠りから覚めるのか調べます」
「あなたが力になってくれたら、心強いわ」
「それなら、まず着替えなきゃね?」
「えっ……」
まこちゃんに言われると、サターンは自分の着ている衣服を見る。
「病衣のまま……でしたね」
ちょっと照れくさそうに言うサターンに、その場の雰囲気が少し明るくなる。
「あの……このような格好は恥ずかしいのですが……」
サターンはここぞとばかりにみちるさんが用意したフリフリの洋服を着させられて、困惑していた。
「あら、ほたるの普段着よ?」
「知っていますよ? これは特別な日に着る服だと……」
「こんな状況とはいえ、今は珍しくあなたが居るんだから特別な日よ?」
「ふぅ……」
軽くため息を吐くサターン。
「なんで……なんでみんな、そんな悠長にしてられるのよ!?」
冗談を言い合う空気に耐えられなくなったあたしは、思わず叫んでしまった。
「スモールレディ……」
「ほたるちゃんがあんな状態なのに……なんで笑っていられるのよ!?」
「ちびうさちゃん……焦っても、解決しないわ」
「そうだよ? それにほたるちゃんは死んじゃった訳じゃないし」
「それは……そうだけど……」
「とにかく、原因を突き止めましょう」
「えぇ」
「なによ……」
みんな、のん気な事ばかり言って。本当にほたるちゃんのことを心配してるの?
「やっぱり、あたしが助けなきゃ……」
「亜美……この波形を……」
「あ、本当!」
サターンと亜美ちゃんが、何かに気付いたように目を合わせる。
「どうしたの?」
「っていうことは……」
「原因が……判りそうです……」
「ほ、本当に!?」
「サターン……これを……」
「やはり……わたしたちでしたか……」
「どういうこと?」
うさぎの問いかけに、サターンが俯く。代わりに亜美ちゃんが説明を始めた。
「今までのほたるちゃんのデータを振り返ってたんだけど……サターンに覚醒してからと、ナインが生まれてからで、パワーの波形が変わってるの……」
「つまり……どゆこと?」
「要は……わたしたちとの融合によって、ほたるのパワーが分散してしまったんです」
「分散?」
「本来、一人分の蓄えしかないエネルギーを、わたしとナインに分け続けていたから……」
「っ!?」
あたしは驚愕した。そして怒りの感情が湧いてくる。
「やっぱり……あんたたちじゃない……」
「ちびうさ?」
「あたし、ずっと言ってたよね!? ほたるちゃんにどんな負担がかかってるか分からないって!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
「ほたるちゃんが倒れたのは、サターンとナインのせいじゃない!」
「ちびうさ!」
うさぎがあたしに怒ったけど、そんなことは気にしないで続ける。この事実を聞いた以上、もうあたしは止まれなかった。そして最低な言葉を口にする。
「申し訳……ありません……」
「謝って済む問題じゃないでしょ!?」
「返す言葉も……ありません……」
「出ていきなさいよ……ほたるちゃんから、出てけ!」
パァン!
あたしが叫び終わった後、頬に衝撃が走った。我に返って前を見ると、うさぎが心痛そうな表情で叩いた手を握りしめながらあたしを見ていた。
「今の言葉……ほたるちゃんが聞いたら、どう思う?」
「っ!?」
「サターンもナインも、ほたるちゃんの大事な人なんだよ?」
以前、ほたるちゃんに言われたことを思い出す。サターンの心もナインの心も、ほたるちゃんと一緒だということ。つまりあたしは、ほたるちゃん自身を否定した。
「うっ……うぅ……」
「スモールレディ……」
「あたしは……ただ……ほたるちゃんを助けたくて……」
ポロポロと、涙が零れる。
「ちびうさは、ほたるちゃんのことが大好きだもんね……ただ、その好きすぎる気持ちが先走っちゃっただけだよ……」
うさぎが諭すようにあたしを抱きしめてくれた。
「う……うわあああん!」
あたしは、ただ泣き続けることしか出来なかった。