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喜色で描く心のキャンバス

「火野さん」

 次の日。
 いつものように学院の敷地内を歩いていると、一昨日の子が声を掛けてくる。

「あら、あなた……」
「素敵な表情をされてますね」
「何だかあなたに踊らされていたみたいね?」
「結果オーライということでお許しくださいな」

 少し間が空いた後、お互いにクスリと笑う。

「おかげさまで、大切なことに気付けたわ」
「伺ってもいいですか?」
「色よ」
「いろ?」



 まっさらだったキャンバスに描かれた色。

 それは子どもが描いたように好き放題塗られたものだけど。

 赤と黄色で彩られ、交差する線はまるで。

 あたしと美奈が手を繋いでいるようだった。



「もう真っ白じゃなくなったの」
「これから、描いていくんですね」
「えぇ、大切な人と一緒に」

 それが友人としてなのか、仲間としてなのか、その先の形なのかは分からない。

 だけど。

 心の中にいたあたしは、もう独りじゃなかった。



 END
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