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その言葉がほしかった(ほたちび)

 逆転したのはいつからだろう。初めて出逢ったとき、寂しそうな瞳をしていたから。自分と同じ孤独を知っていると思ったから。だから友達になりたかった。

「ちびうさちゃん」

 あの頃からは想像もつかないくらい明るい笑顔であたしの名前を呼んでくれる。それが少しだけ、痛かった。

「どうしたの? 泣きそうな顔してる」



「何でも、ない……」

 元気のないあたしを気遣ってくれる優しさ。自分より他人を優先できる余裕。楽しそうに話す大好きな家族のこと。
 次第に逸れていくほたるちゃんの気持ちが怖かった。前はあたしだけを見てくれていたのに。

「ただの嫉妬だから……」
「しっと?」
「あたしね、ほたるちゃんが思うような良い子じゃないんだよ」

 自分だけを見てほしいなんて、ワガママかな?



「あっ……」

 鼻をすする音が情けない。幸せになっていく友達を祝福できない自分が憎らしかった。

「大丈夫だよ」

 白く華奢な人差し指で、濡れた頬を拭ってくれる。

「どんなちびうさちゃんだって、あたしが護ってみせるから」

 違うの。護りたかったのはあたしの方なのに。今も昔も、ほたるちゃんのことを。



「本音を聞いたら、きっと嫌いになるよ?」
「なるかどうかは、あたしが決める」

 真っすぐで力強い瞳。その吸い込まれそうな深い色は、昔と変わらない。

「どんな話だったとしても、あたしはちびうさちゃんの友達だよ」
「ありがとう。あたしね、ほたるちゃんのこと……」

「……ばか」

 あたしを抱き寄せながら呟いた声。それは怒っているようにも、喜んでいるようにも聞こえた。
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