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今夜も眠れない(まもうさ)

~天然王子と恋する小動物~

 今日はまもちゃんの家に初めて正式に泊まる日。あたしたちは夕食を終え、紅茶を飲みながら軽く雑談した後、ベッドに転がっていた。

 あたしはこれから愛を育めるのかと思うと、嬉しさと恥ずかしさで天にも昇る気持ちだった。

「まもちゃん……」
「どうした?」
「今日は素敵な夜だね……」
「あぁ、満月がキレイだ」

 うさの方がキレイだよ。なんてセリフは我慢する。きっとこれからたくさん聞けるだろうし。

 あたしは高鳴る鼓動を抑えながら、まもちゃんのパジャマの裾をギュッと掴んだ。

「うさ?」
「いいよ……」
「なにがだ?」
「何って……準備……」
「寝るのに準備が要るのか?」
「……へっ?」

 まもちゃんの言っている意味が分からない。いま寝るって言った?

「今日はいっぱい食べたから、ぐっすり眠れるな」

 ちょ、ちょっと待って。まさかこのまま本当に夢の世界へ旅立つつもりなの?

「ま、まもちゃん……あたし、もうそんな歳じゃないんだよ?」
「そんな歳?」
「大人の階段、上ってるの」
「あぁ、うさは立派なレディだ」

 どうしよう。あたしの意思が通じない。いくらマジメだからって、ここまで鈍感な人いる?

「まもちゃん!」
「どうした?」
「うさぎって、寂しいと死んじゃうんだよ?」
「寂しい?」
「気付いて……ほしいな……」
「そうか……そうだったんだな」
「まもちゃん……やっとわかって……」
「寂しくて家に帰りたかったんだな……」
「……えっ?」
「家族と一緒に居たい気持ち、わかるよ」

 優しい笑みの天然王子様を見て、今日はムリだと観念した。
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