眠れぬ夜は誰のせい?

 今日も変わらない一日だった。いつものように登校して、帰りはみんなと合流した後ワイワイ騒いで。それはとても幸せなことだけれど、どこか満たされない自分もいて。その理由は。

「じゃあ、また明日ね!」
「あ、うん……」

 普段通りの笑顔で別れの挨拶をする美奈。

「明日は推しアイドルのコンサートに行くから一日いないんだー」

 脳裏に過ぎったのはカフェでお喋りしている時の言葉。明日は会えない。つまり、私の誕生日にあの子はいない。それが何よりも残念だった。

「待って!」
「ん? どしたの?」
「いや……何か忘れたりしてない?」

 自分でも白々しいセリフだと思う。だけど本当に明日会えないなら、今渡してくれたって。

「いやねーレイちゃん、もちろん推しグッズはリュックに詰め込んだわよ」
「そうじゃなくって」

 見たところ通学カバンは膨らんでいない。そしてカバンの他には何も持っていない。

「ゴメン……私がバカだった」
「ちょっと、レイちゃん!?」

 心の中に感情の波が押し寄せてきたので、私は走ってその場を後にした。



 何を期待したんだろう。

「大好きの言葉?」

 祝ってもらいたかった。

「どんな物でも嬉しいのに」

 そばにいてほしかった。

「私よりアイドルの方が大事よ」

 夕暮れの公園で、そんな感情が溢れてくる。

「らしくないわね。切り替えて明日は年を重ねなきゃ」

 少し自嘲気味に呟いた後、夕飯の支度をするため自宅へ戻ることにした。
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