愛のリンク
side エリオス
「こちらは明るいな」
十番町へ転移して空を眺める。その眩しい太陽はこちらが日中であることを物語っていた。
「よい天気だ……プリンセスの心も晴れていればよいのですが」
向こうでは騒ぎにならないよう深夜に儀式を行っていたので、時差を考えるとこちらは午前中か。まだプリンセスは学校で授業を受けているはず。
「とりあえず十番高校へ行ってみよう」
わたしは以前訪れた際の土地勘を頼りにプリンセスが通う高校へ歩を進めた。
「さて、どこにいらっしゃるのだろう」
ハーバード大学の時はプリンスのパワーを感じ取れたのですぐに会うことができたが、この場所はいくつかのパワーが交ざっていて把握しにくい。
「まずは入ってみるか」
正面から入ると守衛に見つかってしまう。少し回り込んで壁を乗り越えよう。
「ふぅ」
わたしは跳躍を繰り返して屋上まで辿り着いていた。しかしここからが難題だ。少年の姿で校舎を徘徊していたら、きっと大騒ぎになるだろう。どうしたものか。
「あれ?」
「えっ?」
屋上の扉が勢いよく開く。目を向けると、そこにはヴィーナスが菓子パンを片手に持ち立っていた。
「エリオス!? なんでいるの?」
「お久しぶりです。実は……」
わたしが事情を説明すると、彼女は胸に手を当てて言った。
「それならうさぎをココへ連れて来てあげるわ!」
「よろしいのですか?」
「もっちろん」
「助かります」
菓子パンをブンブン回しながら意気揚々と戻って行くヴィーナス。授業を抜け出して屋上で食事をするつもりだったのだろうか。わたしは邪魔をして悪かったなという気持ちと、事を荒立てずにプリンセスと会えることへの安堵感が入り混じった状態で空を見上げた。
「少し、風がざわついているな……」
「おっまたせー」
「ちょ、美奈P!? エリオスがどうしたって……」
「プリンセス!」
再び扉が勢いよく開く。出てきたのはヴィーナスに手を引かれたプリンセスだった。目が合うとプリンセスは私の方へ駆けてきた。
「エリオス……?」
「はい」
「どうしてここに……まさかまもちゃんに何かあったんじゃ!?」
そう思われるのも当然だろう。以前の出会いがそうだったのだから。しかし今回は目の前の方を安心させるため。
「いえ、プリンスはハーバード大学で元気に暮らしていますよ」
「そっか……よかったぁ」
胸に手を当てて安堵するプリンセス。いけない、いきなり不安にさせてしまった。わたしは場を仕切りなおしてプリンスの意思を伝えることにした。
「まもちゃん……あたしのためにわざわざエリオスを呼んでくれたんだ」
「はい」
「えへへっ、嬉しいな」
「ふふっ」
よかった。どうやら何も起こらずに役目を終えられそうだ。そう思った瞬間。
「あっ……」
「プリンセス?」
プリンセスの瞳から涙が零れ落ちる。
「なんで……涙が……」
「大丈夫ですか!?」
「どうしたの!?」
離れた場所で待機していたヴィーナスが慌ててこちらへ駆けて来る。
「分かりません。突然このような状態に」
「うさぎ!」
ヴィーナスがプリンセスの肩を掴んで呼びかける。
「美奈P……あたし、まもちゃんの温もりを感じたの……」
「えっ?」
「そしたらね、涙が止まらなくなって……」
そういうことか。直接触れてすらいないのに、わたしからプリンスのパワーを感じ取ってしまわれた。ゴールデンクリスタルの共鳴を行った直後だからか、余計パワーが溢れていたに違いない。それがプリンセスの銀水晶と共鳴してしまった。
「う……うわあああっ!?」
「プリンセス!?」
両手で頭を押さえて錯乱した様子を見せるプリンセス。まずい、このままでは最悪の事態になってしまう。
「うさぎっ!?」
銀色の光が辺りを包み込む。眩しくて目を閉じると、間隔の短い足音が遠くなっていくのが聞こえた。
「光が……止んだ……」
「うさぎがいないわ!?」
「早く見つけないと大変なことになります! どこへ向かったか心当たりはありませんか!?」
「体育倉庫の裏側……寂しい時はいつもあそこで泣いてたの」
「ありがとうございます!」
「待って! エリオスが行ったら、また共鳴しちゃうんじゃ……」
「大丈夫です。必ずプリンセスを救ってみせます!」
「……頼んだわ」
「はい!」
わたしは体育倉庫の場所を訊いて、その場を後にした。
「こちらは明るいな」
十番町へ転移して空を眺める。その眩しい太陽はこちらが日中であることを物語っていた。
「よい天気だ……プリンセスの心も晴れていればよいのですが」
向こうでは騒ぎにならないよう深夜に儀式を行っていたので、時差を考えるとこちらは午前中か。まだプリンセスは学校で授業を受けているはず。
「とりあえず十番高校へ行ってみよう」
わたしは以前訪れた際の土地勘を頼りにプリンセスが通う高校へ歩を進めた。
「さて、どこにいらっしゃるのだろう」
ハーバード大学の時はプリンスのパワーを感じ取れたのですぐに会うことができたが、この場所はいくつかのパワーが交ざっていて把握しにくい。
「まずは入ってみるか」
正面から入ると守衛に見つかってしまう。少し回り込んで壁を乗り越えよう。
「ふぅ」
わたしは跳躍を繰り返して屋上まで辿り着いていた。しかしここからが難題だ。少年の姿で校舎を徘徊していたら、きっと大騒ぎになるだろう。どうしたものか。
「あれ?」
「えっ?」
屋上の扉が勢いよく開く。目を向けると、そこにはヴィーナスが菓子パンを片手に持ち立っていた。
「エリオス!? なんでいるの?」
「お久しぶりです。実は……」
わたしが事情を説明すると、彼女は胸に手を当てて言った。
「それならうさぎをココへ連れて来てあげるわ!」
「よろしいのですか?」
「もっちろん」
「助かります」
菓子パンをブンブン回しながら意気揚々と戻って行くヴィーナス。授業を抜け出して屋上で食事をするつもりだったのだろうか。わたしは邪魔をして悪かったなという気持ちと、事を荒立てずにプリンセスと会えることへの安堵感が入り混じった状態で空を見上げた。
「少し、風がざわついているな……」
「おっまたせー」
「ちょ、美奈P!? エリオスがどうしたって……」
「プリンセス!」
再び扉が勢いよく開く。出てきたのはヴィーナスに手を引かれたプリンセスだった。目が合うとプリンセスは私の方へ駆けてきた。
「エリオス……?」
「はい」
「どうしてここに……まさかまもちゃんに何かあったんじゃ!?」
そう思われるのも当然だろう。以前の出会いがそうだったのだから。しかし今回は目の前の方を安心させるため。
「いえ、プリンスはハーバード大学で元気に暮らしていますよ」
「そっか……よかったぁ」
胸に手を当てて安堵するプリンセス。いけない、いきなり不安にさせてしまった。わたしは場を仕切りなおしてプリンスの意思を伝えることにした。
「まもちゃん……あたしのためにわざわざエリオスを呼んでくれたんだ」
「はい」
「えへへっ、嬉しいな」
「ふふっ」
よかった。どうやら何も起こらずに役目を終えられそうだ。そう思った瞬間。
「あっ……」
「プリンセス?」
プリンセスの瞳から涙が零れ落ちる。
「なんで……涙が……」
「大丈夫ですか!?」
「どうしたの!?」
離れた場所で待機していたヴィーナスが慌ててこちらへ駆けて来る。
「分かりません。突然このような状態に」
「うさぎ!」
ヴィーナスがプリンセスの肩を掴んで呼びかける。
「美奈P……あたし、まもちゃんの温もりを感じたの……」
「えっ?」
「そしたらね、涙が止まらなくなって……」
そういうことか。直接触れてすらいないのに、わたしからプリンスのパワーを感じ取ってしまわれた。ゴールデンクリスタルの共鳴を行った直後だからか、余計パワーが溢れていたに違いない。それがプリンセスの銀水晶と共鳴してしまった。
「う……うわあああっ!?」
「プリンセス!?」
両手で頭を押さえて錯乱した様子を見せるプリンセス。まずい、このままでは最悪の事態になってしまう。
「うさぎっ!?」
銀色の光が辺りを包み込む。眩しくて目を閉じると、間隔の短い足音が遠くなっていくのが聞こえた。
「光が……止んだ……」
「うさぎがいないわ!?」
「早く見つけないと大変なことになります! どこへ向かったか心当たりはありませんか!?」
「体育倉庫の裏側……寂しい時はいつもあそこで泣いてたの」
「ありがとうございます!」
「待って! エリオスが行ったら、また共鳴しちゃうんじゃ……」
「大丈夫です。必ずプリンセスを救ってみせます!」
「……頼んだわ」
「はい!」
わたしは体育倉庫の場所を訊いて、その場を後にした。