聖夜の絆は永遠の輝き
side はるか
「そう怒るなよ、みちる」
「だって……」
助手席で顔を膨らませている姿も愛おしい。なんて思ってしまうのは、惚気にもほどがあるかな。
「あんなに前からお願いされてたのに」
「探し回ってはいたんだぜ? でもコレといったのがなくてさ」
そう。イヴ当日の今日に至っても、まだほたるのクリスマスプレゼントである宇宙事典は買えていなかった。
「あれだけ大きい本屋さんを巡ったのに?」
「ほたるの知性レベルに合っていて、且つ夢を与える内容のやつがいいんだ」
「はぁ……全く親バカなんだから」
「大事そうにケーキの箱を抱えてる君が言う?」
「形が崩れたらほたるが悲しむじゃない」
「ふふっ」
どっちが親バカなんだか。まぁ僕ら三人は方向性こそ違うけど、似たり寄ったりの溺愛っぷりだからなぁ。
「お、あそこの書店に寄ってもいいか?」
「結構年季の入ったお店ね」
「ああいう店にこそ良いモノが置いてあったりするんだよ」
「くすっ、そうかもね」
僕は近くの駐車場に車を停めて、みちると古びた書店へ入ることにした。
「いらっしゃいませ」
中へ入ると腰の曲がったお婆さんがにこやかに出迎えてくれた。
「こんにちは」
「ウチみたいな店へ立ち寄られるってことは、レアものをお探しかな?」
「そうなんです。娘へのプレゼントで、宇宙の事典を探していて……」
「大きい書店には、小難しい本か思いっきり子ども向けのものしかなくて……」
僕らが事情を説明すると、お婆さんは通路の奥から分厚い本を一冊、手に抱えて持ってきてくれた。
「これは?」
「アメリカの研究読本を和訳したものなんだけどね、中身は壮大なのに読みやすいのよ」
「へぇ」
二人で受け取った本を覗き込む。内容はお婆さんの言う通り、宇宙について詳しく書かれているのに専門用語を多用せず理解しやすい文章だった。
「いいな、コレ」
「そうね。この本を買いましょうよ」
「あぁ。おいくら?」
「毎度ありがとうございます」
お会計を済ませると、お婆さんは手慣れた様子でラッピングをしてくれた。
「ありがとう」
「いえいえ、素敵な聖夜を」
ロマンティックな方ね。なんて呟くみちると談笑しながら車へ戻り、エンジンをかける。
「これで、後はディナーを作るだけだな」
「そうね……って、あら?」
「どうしたの?」
「せつなから電話が……」
少しだけ残念な予感がする。こういう時の勘ってよく当たるんだよな。
「せつな、今日は遅くなるって……」
困った表情で言うみちるを見て、ウチのお姫様にどう説明するか悩む。
「分かってくれるわ。あの子、大人だもの」
「サンタさんを信じてるのにか?」
「そういうところは子どもだけれど……」
「まぁ、今夜は三人でイヴを過ごそう」
「そうね……」
きっと一緒に聖夜を過ごすことが出来ないせつなも同じような表情をしているだろう。みんな優しくて傷つきやすい。それが素敵なところでもあるけど、僕らは四人で笑える家族でいたい。それなら。
「みちる」
「えっ?」
「ちょっと付き合ってくれるか?」
「そう怒るなよ、みちる」
「だって……」
助手席で顔を膨らませている姿も愛おしい。なんて思ってしまうのは、惚気にもほどがあるかな。
「あんなに前からお願いされてたのに」
「探し回ってはいたんだぜ? でもコレといったのがなくてさ」
そう。イヴ当日の今日に至っても、まだほたるのクリスマスプレゼントである宇宙事典は買えていなかった。
「あれだけ大きい本屋さんを巡ったのに?」
「ほたるの知性レベルに合っていて、且つ夢を与える内容のやつがいいんだ」
「はぁ……全く親バカなんだから」
「大事そうにケーキの箱を抱えてる君が言う?」
「形が崩れたらほたるが悲しむじゃない」
「ふふっ」
どっちが親バカなんだか。まぁ僕ら三人は方向性こそ違うけど、似たり寄ったりの溺愛っぷりだからなぁ。
「お、あそこの書店に寄ってもいいか?」
「結構年季の入ったお店ね」
「ああいう店にこそ良いモノが置いてあったりするんだよ」
「くすっ、そうかもね」
僕は近くの駐車場に車を停めて、みちると古びた書店へ入ることにした。
「いらっしゃいませ」
中へ入ると腰の曲がったお婆さんがにこやかに出迎えてくれた。
「こんにちは」
「ウチみたいな店へ立ち寄られるってことは、レアものをお探しかな?」
「そうなんです。娘へのプレゼントで、宇宙の事典を探していて……」
「大きい書店には、小難しい本か思いっきり子ども向けのものしかなくて……」
僕らが事情を説明すると、お婆さんは通路の奥から分厚い本を一冊、手に抱えて持ってきてくれた。
「これは?」
「アメリカの研究読本を和訳したものなんだけどね、中身は壮大なのに読みやすいのよ」
「へぇ」
二人で受け取った本を覗き込む。内容はお婆さんの言う通り、宇宙について詳しく書かれているのに専門用語を多用せず理解しやすい文章だった。
「いいな、コレ」
「そうね。この本を買いましょうよ」
「あぁ。おいくら?」
「毎度ありがとうございます」
お会計を済ませると、お婆さんは手慣れた様子でラッピングをしてくれた。
「ありがとう」
「いえいえ、素敵な聖夜を」
ロマンティックな方ね。なんて呟くみちると談笑しながら車へ戻り、エンジンをかける。
「これで、後はディナーを作るだけだな」
「そうね……って、あら?」
「どうしたの?」
「せつなから電話が……」
少しだけ残念な予感がする。こういう時の勘ってよく当たるんだよな。
「せつな、今日は遅くなるって……」
困った表情で言うみちるを見て、ウチのお姫様にどう説明するか悩む。
「分かってくれるわ。あの子、大人だもの」
「サンタさんを信じてるのにか?」
「そういうところは子どもだけれど……」
「まぁ、今夜は三人でイヴを過ごそう」
「そうね……」
きっと一緒に聖夜を過ごすことが出来ないせつなも同じような表情をしているだろう。みんな優しくて傷つきやすい。それが素敵なところでもあるけど、僕らは四人で笑える家族でいたい。それなら。
「みちる」
「えっ?」
「ちょっと付き合ってくれるか?」