ふたりの果実
「まこちゃん、林檎を入れてみたらどうかな?」
昔、エンディミオンと食べた果実。それがなんだか意味のあるもののように感じて、あたしは思いつきを口にした。
「えっ?」
まこちゃんは目を大きく開いて、あたしを見た。変な事言っちゃったかな……? いくらなんでも、あたしも林檎の入ったシチューなんて聞いた覚えも、見た覚えも無い。
「ごめん! シチューに林檎なんて変だよね!」
あたしは自分の思いつきを慌てて否定する。そうだよ、やっぱり変だよね。
そう思っていたら、まこちゃんはあたしの両手を取って、首を横に振った。
「いや、それだよ、林檎だよ! 思い出した!!」
「えっ、そうなの?」
「確か、あの会談の前に、地球国の手土産に金色の林檎を箱いっぱいに貰ったんだよ! スイーツだと食べ飽きてるだろうと思って、シチューに入れてみたんだ!!」
地球国からの金色の林檎。色は違うけど、もしかして、前世のあたしが林檎を気に入ったから、エンディミオンが贈ってくれたのかもしれない。案外、今日のあたし、冴えてるのかも。
「ねえ、もう一度作ってみていいかい? 今度はうさぎも手伝ってよ」
まこちゃんはキラキラとした目であたしのことを見ていた。こんなにやる気に満ちたまこちゃんが作るんだもん。反対なんて絶対にできない。
「うん! もちろん!!」
「じゃ、林檎をこれで擦りおろして。半分は鶏肉にまぶして、もう半分は仕上げに鍋へ入れるんだ」
「おっけー!」
まこちゃんは冷蔵庫から赤い林檎一個を取り出してあたしに渡してくれた。
あたしはまこちゃんから下ろし金を借りて、全部擦り潰した。あたしが林檎をすりおろしたら、まこちゃんはテキパキと具材を用意していた。まこちゃんは一口大に切った鶏肉の上に林檎をまぶして和えて10分ほど置いて、後はさっきと同じように材料を煮る。そして、沸騰したら火を止めて林檎とミルクを投入し、蓋をして一煮立ちさせるとシチューは完成した。
まこちゃんは鍋の蓋を開けて、小皿二つに完成したシチューを取り分けてくれた。
「うん、これだこれ。うさぎも試食してみて」
試食後のまこちゃんは納得の様子。あたしは期待に胸を膨らませて、シチューを口に入れた。
「わあ! さっきのも美味しかったけど、こっちの方が好きだわ! あー、まもちゃんにも食べさせてあげたいなー」
さっきとは違ってお肉が柔らかくて、歯で軽く押さえただけで簡単に解れる。それに、ほんのり甘酸っぱくて食が進んで、お代わりしたくなる味だった。まこちゃんも親指を立てて、「いいね」のポーズを取るぐらい自信があるみたい。
「待ってな。スープジャー貸すよ」
まこちゃんはキッチンの上の戸棚の扉を開けて、二つのスープジャーをあたしの目の前に出した。
「いいの!?」
「ああ。これでカレシを驚かせてやりなよ!」
まこちゃんはウインクして、あたしの肩を叩いた。
「ありがとう、まこちゃん!!」
まこちゃんは二人分のシチューをスープジャーへ掬うと、可愛い花柄のポーチに入れてあたしに渡してくれた。何から何までまこちゃんに頼りっぱなしで悪いって言ったけれど、「あたしも久々に昔の味を再現できたから、感謝したいぐらいだよ」と言いながら、玄関であたしを見送ってくれた。
昔、エンディミオンと食べた果実。それがなんだか意味のあるもののように感じて、あたしは思いつきを口にした。
「えっ?」
まこちゃんは目を大きく開いて、あたしを見た。変な事言っちゃったかな……? いくらなんでも、あたしも林檎の入ったシチューなんて聞いた覚えも、見た覚えも無い。
「ごめん! シチューに林檎なんて変だよね!」
あたしは自分の思いつきを慌てて否定する。そうだよ、やっぱり変だよね。
そう思っていたら、まこちゃんはあたしの両手を取って、首を横に振った。
「いや、それだよ、林檎だよ! 思い出した!!」
「えっ、そうなの?」
「確か、あの会談の前に、地球国の手土産に金色の林檎を箱いっぱいに貰ったんだよ! スイーツだと食べ飽きてるだろうと思って、シチューに入れてみたんだ!!」
地球国からの金色の林檎。色は違うけど、もしかして、前世のあたしが林檎を気に入ったから、エンディミオンが贈ってくれたのかもしれない。案外、今日のあたし、冴えてるのかも。
「ねえ、もう一度作ってみていいかい? 今度はうさぎも手伝ってよ」
まこちゃんはキラキラとした目であたしのことを見ていた。こんなにやる気に満ちたまこちゃんが作るんだもん。反対なんて絶対にできない。
「うん! もちろん!!」
「じゃ、林檎をこれで擦りおろして。半分は鶏肉にまぶして、もう半分は仕上げに鍋へ入れるんだ」
「おっけー!」
まこちゃんは冷蔵庫から赤い林檎一個を取り出してあたしに渡してくれた。
あたしはまこちゃんから下ろし金を借りて、全部擦り潰した。あたしが林檎をすりおろしたら、まこちゃんはテキパキと具材を用意していた。まこちゃんは一口大に切った鶏肉の上に林檎をまぶして和えて10分ほど置いて、後はさっきと同じように材料を煮る。そして、沸騰したら火を止めて林檎とミルクを投入し、蓋をして一煮立ちさせるとシチューは完成した。
まこちゃんは鍋の蓋を開けて、小皿二つに完成したシチューを取り分けてくれた。
「うん、これだこれ。うさぎも試食してみて」
試食後のまこちゃんは納得の様子。あたしは期待に胸を膨らませて、シチューを口に入れた。
「わあ! さっきのも美味しかったけど、こっちの方が好きだわ! あー、まもちゃんにも食べさせてあげたいなー」
さっきとは違ってお肉が柔らかくて、歯で軽く押さえただけで簡単に解れる。それに、ほんのり甘酸っぱくて食が進んで、お代わりしたくなる味だった。まこちゃんも親指を立てて、「いいね」のポーズを取るぐらい自信があるみたい。
「待ってな。スープジャー貸すよ」
まこちゃんはキッチンの上の戸棚の扉を開けて、二つのスープジャーをあたしの目の前に出した。
「いいの!?」
「ああ。これでカレシを驚かせてやりなよ!」
まこちゃんはウインクして、あたしの肩を叩いた。
「ありがとう、まこちゃん!!」
まこちゃんは二人分のシチューをスープジャーへ掬うと、可愛い花柄のポーチに入れてあたしに渡してくれた。何から何までまこちゃんに頼りっぱなしで悪いって言ったけれど、「あたしも久々に昔の味を再現できたから、感謝したいぐらいだよ」と言いながら、玄関であたしを見送ってくれた。