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ふたりの果実

 この日の放課後。早速あたしはまこちゃんと一緒に、スーパーへ向かった。まこちゃんは慣れた様子で、次々と玉ねぎやじゃがいも、ミルク等の食材をかごに入れて、まだ空が明るいうちに買い物を終えていた。
 あたしたちは、まこちゃんの手作りのエコバッグに入れた材料を手に、まこちゃんのおウチへ向かう。
 そして、まこちゃんとあたしはエプロンを身に着けると、キッチンに立っていた。

「じゃ、早速始めようか?」

 まこちゃんが腕まくりをする。あたしもちゃんとメモを取ろうと、紙とペンを手にした。

「はーい、よろしくお願いします。まこちゃんセンセー!」

「おっけー」

 そう言うと、まこちゃんは手際良く野菜と鶏肉を切っていった。具はできるだけ大きさを揃えていくこと、玉ねぎは繊維を切るようにすると柔らかくなること……料理初心者のあたしに一つ一つ丁寧にコツを教えてくれた。
 そして、あっという間に、ホワイトシチューの仕込みが終わり、まこちゃんはバターと小麦粉を炒めた。そして、全ての具材を順番に鍋へ投入する。灰汁を取って、沸騰したら蓋をして15分くらい煮込むといよいよ完成した。

「さて、出来たかな」

 まこちゃんは蓋を開けた。あたしもまこちゃんの傍で鍋の中を覗き込んだ。鍋の中では透明になった玉ねぎとじゃがいも、くたくたになった鶏肉がぐらぐらと踊っていた。

「具材はちゃんと煮えたね。仕上げに牛乳を入れてひと煮立ちさせたら、完成だよ!」

 まこちゃんが鍋へ牛乳をくるくると回し入れると、お昼に亜美ちゃんに見せてもらった写真とそっくりなシチューが完成した。

「見た目はいいけど、後は味か……」

 まこちゃんはお玉でシチューを掬い上げて、小皿2つによそった。

「いただきます」

 あたしとまこちゃんは、小皿を口につけて、同時にシチューの出来栄えを舌で確かめた。

「美味しい!! さっすがまこちゃん!」

 具材は少し溶けかかるくらい煮込まれていて、あたしの好みの柔らかさだった。何より、このスープがクリーミーで少し甘くて優しい味で、とっても美味しい! けれど、まこちゃんは首を傾げていた。

「うーん、何か足りない気がするな。あの時の味とは程遠い気がする。もう少しさっぱりしていたはずだよ」

「えっ、見た目は完璧だし、味も美味しいよ!」

「見た目が再現出来てるなら、隠し味を忘れてると思うんだ。このシチューの味の決め手をね」

「隠し味……かぁ」

 まこちゃんの言う隠し味……いったい何なんだろう? シチューの味を少しさっぱりさせる食べ物。前世の時に食べてたものなのかな?
 あたしはまこちゃんの傍で目を閉じて、前世の事を思い出そうとした。
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