約束のタルト
「セレニティ」
「どうしたの? ジュピター」
いつものようにこっそり抜け出して地球へ降りようと思っていたところで名前を呼ばれる。振り向くとそこにはジュピターが可愛らしい包みを片手で持ちながら立っていた。
「それは?」
「今日も行くのでしょう? お菓子を焼いたんです。よかったら二人で」
「わぁ、ありがとう!」
大喜びで包みを受け取ると、ジュピターはみんなには内緒ですよ。と人差し指を口元で立てながら呟いた。
「本当にありがとう。行ってくるわ」
「せめてこの時間くらいは、ね……」
逢瀬の森へ行くと、珍しく彼女の方が先に待っていた。
「エンディミオン」
「早いね、セレニティ」
「ふふっ、今日はお土産があるのよ」
「おみやげ?」
彼女は嬉しそうに湖のほとりにある切り株の上へ、持っていた包みを広げた。
「へぇ、タルトか」
そこにはリンゴを薄切りにして薔薇の形を模したタルトが、甘い香りと共に湖畔を彩っていた。
「ジュピターが作ってくれたの。二人で食べてって」
「ならお言葉に甘えようかな」
ご丁寧にナイフとフォークも用意されていたので、六等分に切り分けてあげた。
「じゃあ、いただきます」
「オレも……」
二人して大口を開けながらタルトを頬張る。
「おいしい!」
「本当においしいな。さすが守護戦士イチの料理人だ」
「薔薇を崩すのがもったいないわ」
「なら一口で薔薇の部分を食べたらいい」
「もう、そんな大食いじゃありません」
「あははっ」
「ふふっ」
静かな森に笑顔の花が咲く。こんな幸せな時間がずっと続けばいいのに。そう思っていたらふと口から出た言葉。
「いつの日か……森の中でコソコソするんじゃなく、みんなに祝福されながら幸せな食卓を囲もう」
「エンディミオン……」
それは叶わない願いだとお互いに薄々感じていた。けれど約束は次に繋がる。意志を確かめ合って絆を結べば、いつかは成し遂げられる。
「えぇ。その時は美味しい食事をたくさん作ってね?」
「オレが作るのか? いいよ。その時はきっと、君を満足させる料理を用意してみせる」
「えへへっ、楽しみだわ」
彼女の笑顔がぼやける。声も遠のいていく。
ここは……オレは……
「どうしたの? ジュピター」
いつものようにこっそり抜け出して地球へ降りようと思っていたところで名前を呼ばれる。振り向くとそこにはジュピターが可愛らしい包みを片手で持ちながら立っていた。
「それは?」
「今日も行くのでしょう? お菓子を焼いたんです。よかったら二人で」
「わぁ、ありがとう!」
大喜びで包みを受け取ると、ジュピターはみんなには内緒ですよ。と人差し指を口元で立てながら呟いた。
「本当にありがとう。行ってくるわ」
「せめてこの時間くらいは、ね……」
逢瀬の森へ行くと、珍しく彼女の方が先に待っていた。
「エンディミオン」
「早いね、セレニティ」
「ふふっ、今日はお土産があるのよ」
「おみやげ?」
彼女は嬉しそうに湖のほとりにある切り株の上へ、持っていた包みを広げた。
「へぇ、タルトか」
そこにはリンゴを薄切りにして薔薇の形を模したタルトが、甘い香りと共に湖畔を彩っていた。
「ジュピターが作ってくれたの。二人で食べてって」
「ならお言葉に甘えようかな」
ご丁寧にナイフとフォークも用意されていたので、六等分に切り分けてあげた。
「じゃあ、いただきます」
「オレも……」
二人して大口を開けながらタルトを頬張る。
「おいしい!」
「本当においしいな。さすが守護戦士イチの料理人だ」
「薔薇を崩すのがもったいないわ」
「なら一口で薔薇の部分を食べたらいい」
「もう、そんな大食いじゃありません」
「あははっ」
「ふふっ」
静かな森に笑顔の花が咲く。こんな幸せな時間がずっと続けばいいのに。そう思っていたらふと口から出た言葉。
「いつの日か……森の中でコソコソするんじゃなく、みんなに祝福されながら幸せな食卓を囲もう」
「エンディミオン……」
それは叶わない願いだとお互いに薄々感じていた。けれど約束は次に繋がる。意志を確かめ合って絆を結べば、いつかは成し遂げられる。
「えぇ。その時は美味しい食事をたくさん作ってね?」
「オレが作るのか? いいよ。その時はきっと、君を満足させる料理を用意してみせる」
「えへへっ、楽しみだわ」
彼女の笑顔がぼやける。声も遠のいていく。
ここは……オレは……
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