夕暮れの嘘は恋のはじまり

 気を失った彼女を膝枕で包みながら、起きるのを待っていると。

「ちなつちゃん?」
「おはよう。あかりちゃん」
「ふふっ。今は夕方だよ?」

 やっと目覚めた眠り姫。
 絆を繋いでくれたあの子はもういない。

「どうして泣いてるの?」
「泣いてないよ」
「……嘘つき」

 そうだよ。
 私は不器用な大嘘つき。
 大切な人を傷つけて。
 その子から助けてもらって。
 やっと手に入れた勇気だから。

 ちゃんと、伝えるね。

「あかりちゃん」
「なぁに?」
「……大好き」

 少しだけ屈んでキスをする。

 温かくて、優しい感触の唇。

 だけど、さっきまでのあかりちゃんとは違う香り。



 "やっと言えたね"



 そう聞こえた瞬間、私にとって本当の恋が始まったように思えた。



 END
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