Chapter.46[ガルバディア]
~第46章 part.2~
太陽が顔を出すと、昨夜の冷え込みが嘘のように気温が上昇していく。
まだまだ体感温度としては低いのかもしれない。
だが、一晩中砂漠の冷気に当てられてきた身体には、太陽の温もりは心地よかった。
あの砂漠の景色からは想像もできない豊かな自然が広がり、緑が溢れていた。
その緑に混じって、やがて色とりどりの花が景色に色を添える。
「わあ、やっぱりいいなここ。気持ちいい!」
「お、村が見えてきたぞ!」
車を進めていくと、その先に民家らしきものがぽつぽつと目に付くようになっていた。
長い道のりだったが、漸く目的の村に到着したようだ。
セルフィはほっとした。
心の底から安堵した気持ちが沸きあがってくる。
まだまだ安心はできないと、やらなければならないことや、子供たちのこともある。
油断してはいけないとわかってはいるのだが、それでも何度か訪れたことのあるこの村に到着したことで、彼女の安堵感は大きいものになっていた。
「あっ!」
不意に耳障りな音と共に体が揺さぶられる。
ゼルが車を急停止させたのだ。
バランスを失って倒れそうになる己と体と、膝に乗せていたスコールの頭を無意識のうちに抱え込む。
「何、どうしたの~?」
今の拍子で流石にアーヴァインも目を覚ましてしまったようだ。
寝ぼけた声で身を起こして辺りを見回している。
「ゼル、急に止まらないで!びっくりしたじゃ……どうしたの?」
「…ガルバディアのヘリだ…」
「…え…」
全容が見えるわけではなく、まだまだ遠い位置にあるのだが、それでも目に付く、ガルバディアの国旗がでかでかと描かれた、特徴的な軍用機。
アーヴァインは勿論、ゼルにもセルフィにも見覚えがありすぎた。
「…どういうことだ」
「どうもこうも、言ってる場合じゃないでしょ! ガルバディアの人がいるのなら好都合じゃない!」
「…セフィ、そんな、あぶな…」
「アーヴィン、今、誰の服着てるの?」
「あ…」
アーヴァインとゼル、そしてスコールも、今はガルバディア軍の制服に身を包んでいる。
セルフィだけは看護士の服だったが、それにもちゃんとガルバディアの印が刺繍されたものだ。
外見は、ガルバディアの軍用車に乗ったガルバディアの兵士とナース。
このままこんなところで立ち往生しているほうがかえって怪しいだろう。
周囲に気を配りながら、ゼルはゆっくりと車を進めることにした。
花畑のあちこちから、村人だろう、何人かの頭がこちらを見つめている姿が見えた。
だが、特に気にした様子も無く、暫くするとまたすぐ作業に戻っていった。
屋敷が大分近づいてきたときだ。
自分たちと同じような軍服に身を包んだ兵士らしき人物が2人、屋敷を守るかのように立っているのが見えた。
思わずゼルとアーヴァインは警戒の色を濃くする。
2人は、車の行く手を遮るかのように立ち塞がった。
ゼルが静かに車を停車させると、車の中を覗き込んできた。
もともと運転席側の窓ガラスは無くなっていたので…
「なんだ?」
「…あのさ、ここに医者いるか?」
「なんだ、怪我人か?」
「まあな」
更にもう少し身を乗り出して、後部座席を確認した兵士は、そこでニコリと笑顔を見せたナースに口元を緩めた。
「ナースとここまでドライブかよ。羨ましい限りだな。…一応、所属と名前聞かせてくれ」
「ああ」
ゼルとアーヴァインがどこからかカードのようなものを取り出した。
それを兵士に手渡している。
アーヴァインが後ろを振り返ってセルフィに声を掛ける。
「ミズ・ジェームス、彼の胸ポケットを」
「えっ、は、はい」
言われた通りに、スコールが着ている服を漁っていると左胸のポケットの中の小さな隠しポケットにカードが入っていた。
それを前部座席に向かって差し出す。
「………第48部隊…? あんたら、ドールから来たのか?砂漠を渡って? …なんだってわざわざこんなところに…。デリングシティのほうが近かっただろうに」
「ちょっと別の任務があってね~。後ろの二人はたまたま拾っただけなんだよね~。…で、彼を診てもらおうかと思ってさ」
「んで、医者はいるのか?」
「あぁ、いるぞ。何があったか知らんが、早く診てもらえ。こっちから連絡しておく」
「助かるよ~」
「サンキュー」
「ありがとう」
セルフィの笑顔の謝礼で、兵士は僅かに動揺を浮かばせたようだ。
もっとも、マスクで顔は見えなかったが、その頬が微かに染まっていたのは彼本人しか知らないことだ。
再び車を走らせ始めたゼルがバックミラーで確認すると、先ほどの兵士が携帯用の通信機でどこかへ連絡している姿が見えた。
「…よかった、頂戴した服が仕事中の奴ので」
「まったくだよ~」
「…アーヴィン、…ジェームズって、誰…?(怒)」
「えっ、いや~、適当に出た名前だよ~。…ちなみに、スコールの服の持ち主さんはアグリーさんって人みたい」
「それ、厭味!?」
「おーい、痴話喧嘩は別んとこでやってくれ…」
間もなく車は屋敷の前に到着した。
→part.3
太陽が顔を出すと、昨夜の冷え込みが嘘のように気温が上昇していく。
まだまだ体感温度としては低いのかもしれない。
だが、一晩中砂漠の冷気に当てられてきた身体には、太陽の温もりは心地よかった。
あの砂漠の景色からは想像もできない豊かな自然が広がり、緑が溢れていた。
その緑に混じって、やがて色とりどりの花が景色に色を添える。
「わあ、やっぱりいいなここ。気持ちいい!」
「お、村が見えてきたぞ!」
車を進めていくと、その先に民家らしきものがぽつぽつと目に付くようになっていた。
長い道のりだったが、漸く目的の村に到着したようだ。
セルフィはほっとした。
心の底から安堵した気持ちが沸きあがってくる。
まだまだ安心はできないと、やらなければならないことや、子供たちのこともある。
油断してはいけないとわかってはいるのだが、それでも何度か訪れたことのあるこの村に到着したことで、彼女の安堵感は大きいものになっていた。
「あっ!」
不意に耳障りな音と共に体が揺さぶられる。
ゼルが車を急停止させたのだ。
バランスを失って倒れそうになる己と体と、膝に乗せていたスコールの頭を無意識のうちに抱え込む。
「何、どうしたの~?」
今の拍子で流石にアーヴァインも目を覚ましてしまったようだ。
寝ぼけた声で身を起こして辺りを見回している。
「ゼル、急に止まらないで!びっくりしたじゃ……どうしたの?」
「…ガルバディアのヘリだ…」
「…え…」
全容が見えるわけではなく、まだまだ遠い位置にあるのだが、それでも目に付く、ガルバディアの国旗がでかでかと描かれた、特徴的な軍用機。
アーヴァインは勿論、ゼルにもセルフィにも見覚えがありすぎた。
「…どういうことだ」
「どうもこうも、言ってる場合じゃないでしょ! ガルバディアの人がいるのなら好都合じゃない!」
「…セフィ、そんな、あぶな…」
「アーヴィン、今、誰の服着てるの?」
「あ…」
アーヴァインとゼル、そしてスコールも、今はガルバディア軍の制服に身を包んでいる。
セルフィだけは看護士の服だったが、それにもちゃんとガルバディアの印が刺繍されたものだ。
外見は、ガルバディアの軍用車に乗ったガルバディアの兵士とナース。
このままこんなところで立ち往生しているほうがかえって怪しいだろう。
周囲に気を配りながら、ゼルはゆっくりと車を進めることにした。
花畑のあちこちから、村人だろう、何人かの頭がこちらを見つめている姿が見えた。
だが、特に気にした様子も無く、暫くするとまたすぐ作業に戻っていった。
屋敷が大分近づいてきたときだ。
自分たちと同じような軍服に身を包んだ兵士らしき人物が2人、屋敷を守るかのように立っているのが見えた。
思わずゼルとアーヴァインは警戒の色を濃くする。
2人は、車の行く手を遮るかのように立ち塞がった。
ゼルが静かに車を停車させると、車の中を覗き込んできた。
もともと運転席側の窓ガラスは無くなっていたので…
「なんだ?」
「…あのさ、ここに医者いるか?」
「なんだ、怪我人か?」
「まあな」
更にもう少し身を乗り出して、後部座席を確認した兵士は、そこでニコリと笑顔を見せたナースに口元を緩めた。
「ナースとここまでドライブかよ。羨ましい限りだな。…一応、所属と名前聞かせてくれ」
「ああ」
ゼルとアーヴァインがどこからかカードのようなものを取り出した。
それを兵士に手渡している。
アーヴァインが後ろを振り返ってセルフィに声を掛ける。
「ミズ・ジェームス、彼の胸ポケットを」
「えっ、は、はい」
言われた通りに、スコールが着ている服を漁っていると左胸のポケットの中の小さな隠しポケットにカードが入っていた。
それを前部座席に向かって差し出す。
「………第48部隊…? あんたら、ドールから来たのか?砂漠を渡って? …なんだってわざわざこんなところに…。デリングシティのほうが近かっただろうに」
「ちょっと別の任務があってね~。後ろの二人はたまたま拾っただけなんだよね~。…で、彼を診てもらおうかと思ってさ」
「んで、医者はいるのか?」
「あぁ、いるぞ。何があったか知らんが、早く診てもらえ。こっちから連絡しておく」
「助かるよ~」
「サンキュー」
「ありがとう」
セルフィの笑顔の謝礼で、兵士は僅かに動揺を浮かばせたようだ。
もっとも、マスクで顔は見えなかったが、その頬が微かに染まっていたのは彼本人しか知らないことだ。
再び車を走らせ始めたゼルがバックミラーで確認すると、先ほどの兵士が携帯用の通信機でどこかへ連絡している姿が見えた。
「…よかった、頂戴した服が仕事中の奴ので」
「まったくだよ~」
「…アーヴィン、…ジェームズって、誰…?(怒)」
「えっ、いや~、適当に出た名前だよ~。…ちなみに、スコールの服の持ち主さんはアグリーさんって人みたい」
「それ、厭味!?」
「おーい、痴話喧嘩は別んとこでやってくれ…」
間もなく車は屋敷の前に到着した。
→part.3