Chapter.45[バラム]
~第45章 part.2~
学園長への報告も済ませ、エレベータを降りたシュウを待っていたのは、数人の生徒達だった。
「トゥリープ教官はどこに行かれたんですか?」
「先輩!ディン先生は!?」
真面目なシュウは1つ1つの質問に答えていたが、その様子を見ていた生徒達も次々に集まり、あっという間にシュウは取り囲まれてしまった。
流石にシュウにも対応しきれず右往左往するしかなかった。
すると、背の高い教官が生徒達を掻き分けるようにシュウの元へやってきた。
「はいみんな、ここまでだ! 質問、意見のある者は掲示板に書き込んでくれ。シュウ先輩は1人しかいないんだ。そんなに1度には応えられない。今日はここまで!」
不満を顕にしながらも、生徒達はその場から散っていき、シュウはほっと安堵した。
「…ありがと、ニーダ」
「シュウは昔からそうだもんな。特にキスティスがいないと頑張りすぎる!」
「そうかな?」
「そうだよ! …今度、ドライヴでもしない?」
「ゴメンだわ! あなた、何の運転させてもガーデン動かしてるつもりなんだもの。乗ってるこっちの身にもなってよ!」
「あはははは…! でもさ、本当、疲れてるみたいだ。少し休んだら?」
「…そうね。今何時?」
「3時半、……あぁ、もうすぐ4時だね」
「…そう、じゃ6時になったら起こしてくれる?私の目覚まし、壊れてるのよ」
「王子様のキスで目覚めるの?」
「…バカ! 誰が王子様よ!」
ニーダのふざけ半分の言葉は、普段の時に聞けば苛つくだけのものだったが、今回ばかりは本当に疲れているようだ。
なんとなく気が紛れたのか、少し気分が楽になった気がした。
その後、シュウは教官寮の自室に戻り、先程ニーダが提案した掲示板を開いて驚いた。
全生徒が一斉に書き込んだのではないかと思える莫大な量と、容疑者となった生徒に対するその酷い内容に眩暈がした。
「(・・・・・・!!! 答えるまでもないわね…。じき閉鎖するしかないかな…?)」
その全てが中傷とは限らないので、きちんとした質問だけをピックアップして1人1人に答えていたが、やがて机に倒れこむように眠ってしまった。
何かを叩くような音が聞こえた。
夢 …?
『ドンドンドン!!!』
「(…?)」
『シュウ!起きろ! ドンドンドンドン…!!』
「!!!」
誰かが部屋の扉を叩いている。
目を開けて、自分が眠ってしまっていたことに気が付いた。
『シュウ!いいか?入るぞ?』
短くエアが漏れる音に続き、部屋の扉が開けられた。
「…どうしたの?」
まだ半分寝ぼけたまま、凄い剣幕で部屋に入ってきたニーダを見つめて、もうそんなに時間が経ったのかと考えた。
「シュウ!大変だ! TVをつけろ!」
「…TVなんて無いわ」
「TVも無いのか!? ……仕方ない、俺の部屋に来い!!」
「あっ、ちょっと!!」
ニーダは有無を言わせぬままシュウの腕を取り、椅子から立ち上げるとそのまま自分の部屋に向かって歩き出した。
男子寮は、中庭を挟んだ向かい側だ。そこまでの間、シュウはずっとニーダに連行される形で歩かされていた。
部屋の前まで来ると、そこでやっと手を離して自室の扉を開け、中にシュウを招き入れた。
すぐにTVのスイッチを入れる。
「…汚い部屋ねぇ…」
「いいから!これを見ろ!」
「何? ………、………どういう、こと…!?」
報道番組が、デリングシティで起こった官僚殺害と時を同じくしてトラビアガーデンで大規模な事故があった旨を伝えていた。
「トラビアガーデンで、…事故…? どういうこと? まさかリノアが…」
「リノア…?」
「あなたも知ってるでしょ? ガーデンが動き出した時に、スコール達と一緒にいた黒髪の子」
ニーダは必死に当時のことを思い出そうとした。
確か、学園長派とマスター派に分断してガーデン内が混乱した時、突然ガーデンが動き出し、そしてF.H.へ。
そこの職人が修理してくれた起動装置と、操縦の仕方を教わったのがニーダだ。
そういえば、あの時、見かけない子がいたような…?黒い髪の、青い服を着た子…だったよな…
「…あぁ、あの子か~。でもその子がどうかしたのか?」
「…あなたに話してもいいものかしら…?」
「ここまで来たんなら、話せよ」
「……魔女、なのよ」
「へ~、魔女。 ……、……、……魔女!? え? だって、もう魔女は…」
「…にぶいわね。 知ってるでしょ? 魔女は力を継承する」
「それじゃ、そのリノアって子が魔女の力を継承したんだな! …?? なんでシュウ、彼女のこと知ってるんだ?トラビアにいるって」
「キスティスに聞いてたのよ。 …まずいわ。ガーデンが危ないかも…」
「…?? なんでさ?」
シュウはニーダに一々説明しなくてはならないことに苛立った。
にぶい奴、とは思っていたがこれほどの重大な局面でもそんな態度を取られることが許せなかった。
「リノアはスコールのクライアントなのよ」
「それで?」
「もう!! 本当ににぶいわね! まだわかんないの? スコールはクライアントの依頼をまだ果たしてないの。
ってことは、スコールはまだこのガーデンに在籍する現役SeeDなのよ。
もし魔女であるリノアが捕まったんだとしたら、彼女を守ろうとスコールは必ず動くわ。
確かにスコールは強いけど、たった1人でガルバディアの大軍を相手に守りきれるとは限らない。彼も一緒に捕らえられるとしたら身元を調べられるわ」
「ああ!! それでスコールがSeeDだってことがバレれば…!!」
「…やっとわかったのね。…ええ、魔女を守っているSeeDが在籍するガーデンは、魔女を擁護していると思われる。ガルバディア軍は一気に潰しにかかるでしょうね」
「それ、凄いやばい状況じゃないか!!」
「だから、そう言ってるじゃない! すぐに学園長室へ!」
→part.3
学園長への報告も済ませ、エレベータを降りたシュウを待っていたのは、数人の生徒達だった。
「トゥリープ教官はどこに行かれたんですか?」
「先輩!ディン先生は!?」
真面目なシュウは1つ1つの質問に答えていたが、その様子を見ていた生徒達も次々に集まり、あっという間にシュウは取り囲まれてしまった。
流石にシュウにも対応しきれず右往左往するしかなかった。
すると、背の高い教官が生徒達を掻き分けるようにシュウの元へやってきた。
「はいみんな、ここまでだ! 質問、意見のある者は掲示板に書き込んでくれ。シュウ先輩は1人しかいないんだ。そんなに1度には応えられない。今日はここまで!」
不満を顕にしながらも、生徒達はその場から散っていき、シュウはほっと安堵した。
「…ありがと、ニーダ」
「シュウは昔からそうだもんな。特にキスティスがいないと頑張りすぎる!」
「そうかな?」
「そうだよ! …今度、ドライヴでもしない?」
「ゴメンだわ! あなた、何の運転させてもガーデン動かしてるつもりなんだもの。乗ってるこっちの身にもなってよ!」
「あはははは…! でもさ、本当、疲れてるみたいだ。少し休んだら?」
「…そうね。今何時?」
「3時半、……あぁ、もうすぐ4時だね」
「…そう、じゃ6時になったら起こしてくれる?私の目覚まし、壊れてるのよ」
「王子様のキスで目覚めるの?」
「…バカ! 誰が王子様よ!」
ニーダのふざけ半分の言葉は、普段の時に聞けば苛つくだけのものだったが、今回ばかりは本当に疲れているようだ。
なんとなく気が紛れたのか、少し気分が楽になった気がした。
その後、シュウは教官寮の自室に戻り、先程ニーダが提案した掲示板を開いて驚いた。
全生徒が一斉に書き込んだのではないかと思える莫大な量と、容疑者となった生徒に対するその酷い内容に眩暈がした。
「(・・・・・・!!! 答えるまでもないわね…。じき閉鎖するしかないかな…?)」
その全てが中傷とは限らないので、きちんとした質問だけをピックアップして1人1人に答えていたが、やがて机に倒れこむように眠ってしまった。
何かを叩くような音が聞こえた。
夢 …?
『ドンドンドン!!!』
「(…?)」
『シュウ!起きろ! ドンドンドンドン…!!』
「!!!」
誰かが部屋の扉を叩いている。
目を開けて、自分が眠ってしまっていたことに気が付いた。
『シュウ!いいか?入るぞ?』
短くエアが漏れる音に続き、部屋の扉が開けられた。
「…どうしたの?」
まだ半分寝ぼけたまま、凄い剣幕で部屋に入ってきたニーダを見つめて、もうそんなに時間が経ったのかと考えた。
「シュウ!大変だ! TVをつけろ!」
「…TVなんて無いわ」
「TVも無いのか!? ……仕方ない、俺の部屋に来い!!」
「あっ、ちょっと!!」
ニーダは有無を言わせぬままシュウの腕を取り、椅子から立ち上げるとそのまま自分の部屋に向かって歩き出した。
男子寮は、中庭を挟んだ向かい側だ。そこまでの間、シュウはずっとニーダに連行される形で歩かされていた。
部屋の前まで来ると、そこでやっと手を離して自室の扉を開け、中にシュウを招き入れた。
すぐにTVのスイッチを入れる。
「…汚い部屋ねぇ…」
「いいから!これを見ろ!」
「何? ………、………どういう、こと…!?」
報道番組が、デリングシティで起こった官僚殺害と時を同じくしてトラビアガーデンで大規模な事故があった旨を伝えていた。
「トラビアガーデンで、…事故…? どういうこと? まさかリノアが…」
「リノア…?」
「あなたも知ってるでしょ? ガーデンが動き出した時に、スコール達と一緒にいた黒髪の子」
ニーダは必死に当時のことを思い出そうとした。
確か、学園長派とマスター派に分断してガーデン内が混乱した時、突然ガーデンが動き出し、そしてF.H.へ。
そこの職人が修理してくれた起動装置と、操縦の仕方を教わったのがニーダだ。
そういえば、あの時、見かけない子がいたような…?黒い髪の、青い服を着た子…だったよな…
「…あぁ、あの子か~。でもその子がどうかしたのか?」
「…あなたに話してもいいものかしら…?」
「ここまで来たんなら、話せよ」
「……魔女、なのよ」
「へ~、魔女。 ……、……、……魔女!? え? だって、もう魔女は…」
「…にぶいわね。 知ってるでしょ? 魔女は力を継承する」
「それじゃ、そのリノアって子が魔女の力を継承したんだな! …?? なんでシュウ、彼女のこと知ってるんだ?トラビアにいるって」
「キスティスに聞いてたのよ。 …まずいわ。ガーデンが危ないかも…」
「…?? なんでさ?」
シュウはニーダに一々説明しなくてはならないことに苛立った。
にぶい奴、とは思っていたがこれほどの重大な局面でもそんな態度を取られることが許せなかった。
「リノアはスコールのクライアントなのよ」
「それで?」
「もう!! 本当ににぶいわね! まだわかんないの? スコールはクライアントの依頼をまだ果たしてないの。
ってことは、スコールはまだこのガーデンに在籍する現役SeeDなのよ。
もし魔女であるリノアが捕まったんだとしたら、彼女を守ろうとスコールは必ず動くわ。
確かにスコールは強いけど、たった1人でガルバディアの大軍を相手に守りきれるとは限らない。彼も一緒に捕らえられるとしたら身元を調べられるわ」
「ああ!! それでスコールがSeeDだってことがバレれば…!!」
「…やっとわかったのね。…ええ、魔女を守っているSeeDが在籍するガーデンは、魔女を擁護していると思われる。ガルバディア軍は一気に潰しにかかるでしょうね」
「それ、凄いやばい状況じゃないか!!」
「だから、そう言ってるじゃない! すぐに学園長室へ!」
→part.3