Chapter.31[大陸横断鉄道~ドール]
~第31章 part.3~
「何度言ったら分かるんだ!ダメなものはダメだ!」
「だから、それなりの代金は払うってば~」
「金の問題じゃねぇんだよ」
「…そんなに大事なものなんだ」
「持ってても意味はねぇがな…」
「だったら!」
あまり綺麗とは言い難い小さなパブ。
そこで言い合っているのはこの店の主人らしき男と、やっとここに辿り着いたアーヴァインとセルフィ。
レンタカーショップで聞いたこの店を探すのは簡単だったが、例のアイテムを譲り受けるのは簡単にはいきそうもなかった。
「お2人さん、あんたらじゃ話になんないよ。カードをただの遊びだと思ったら大間違いなんだぜ。アイテムが欲しけりゃ、カードで勝負だ」
「…う~ん、困ったな~、僕はカードわかんないし…。セフィは?」
「あたしもよくわかんない。あの子らが面白半分でやってるのは見たことあるんやけど…」
「だったら、とっとと帰んな!カードもできねぇ奴にはゴミ1つもやる訳にゃいかねーぜ」
突然、出入り口のドアが強引に開かれた。
先ほど到着し、たまたまこの会話を聞いてしまったのだ。
勢いよく開かれたドアに、その場にいた者達の視線を集める。
「その勝負、俺に預けて貰おうか!」
「ゼル!?…なんで?」
「…ゼル、だと…?」
「久しぶりだな、“疾風のニック”」
突然の乱入者に誰もが驚いた。
怪訝そうな顔を浮かべる店にいた男達と、状況が理解できない2人の教官。
真剣な顔付きで歩み寄るゼルは、アーヴァインとセルフィを背に退けて店の男達の前に立った。
「…お前は、“不死身のゼル”…!」
互いに睨みあう両者は、ニヤリと口端を引き上げた。
「その名で呼ばれるのも久しぶりだぜ、元気そうじゃねぇか、不死身のゼル」
「あぁ、俺もそうさ」
状況を飲み込めずにポカンと呆けてしまっていた2人がゼルに声を掛ける。
「…ゼル…!? なんでここに? …って言うか、何それ?」
「詳しい話は後で。一先ずこの勝負、俺に任せてくれるか?」
ニックと呼ばれた店のオーナーらしき男の影から、1人の青年が近付いてきた。
手にしていたカードの束を弄んでいる。
よほど腕に自信があるのか、ニヤニヤと薄笑いを浮かべながらゼルを挑発する。
「店長、俺にやらせて下さいよ…」
「やめておけ、お前では勝てん」
「んなこと、やってみなくちゃ分からないじゃないですか!…店長の知り合いなんですか!?」
「…因縁のな」
「どんな因縁か知らねぇが、まずは俺が相手だ。不死身のゼルとやら」
「おもしろい。受けてやるぜ」
ゼルのほうもやる気満々だ。
「…ルールは?」
「俺はどれでも構わないぜ」
「じゃあ、勝手に決めさせて貰うぜ。俺が得意としてるのは“ランダムハンド”以外だ。…どうだ?」
「…自分でセレクトできるのは、俺も嬉しいな。よし、いいぞ」
「いざ!」
「勝負!」
この男の実力はどの程度通じるものなのか、それは伺い知ることはできないが、ゼルの前に崩れ落ちた彼の顔は悔しさに染まっていた。
次の相手はお前だ、と言わんばかりに店長を睨みつけるゼル。
しかし、ニックは動かない。カードを出す素振りも見せず、ただじっとゼルの熱く燃える目を眩しそうに見つめた。
「…? どうしたんだ、ニック。 あの風を切るようなガーデン一の速さのカード捌きが自慢だっただろ?」
「…俺は、もう、お前のように何度も立ち上がる力なんてないのさ」
「どうしたんだ、『CC団裏のエース』ともあろう奴が…」
「懐かしいな、裏のエース…。そういうお前は『影のセブンスプレイヤー』だったか? …ガーデンで毎日面白おかしく過ごし、俺に挑戦してきた奴は数知れず。
語り継がれるCC団の幹部達への挑戦は、俺たちカードプレイヤーにとっては誇りのようなものだった。そしていつしか裏のエースなんて座につくこともできた。
だが卒業し、ガーデンを去ると誰も俺に挑戦してくる奴なんていなくなった。俺は大人になり、この親父の店を継ぎ、そして社会というものの厳しさを知った。
もう、カードに浮かれてる場合じゃねぇってことを嫌ってほど思い知った」
「…寝ながらでもカードを手放さなかったお前が、まさかこんなことになっていたとは…」
「どれだけカードへの情熱が熱く注がれようとも、所詮それはお遊戯でしかねぇ。」
「…ニック…」
「だが、いくら忘れようとしても、忘れることなんて、できなかった…! 俺がガーデンにいた頃のドールとは違う。世界のあちこちから集まるカード野郎の手元に
何度イラつきを覚えたことか・・・!お前のように負けても負けても立ち上がる根性なんて全くない奴に何度拳を食らわせてやろうと思ったことか・・・!」
「て、店長、まさか店長がそんな思いをしていたなんて…」
「また、カードをやれよ、ニック」
「…ゼル…」
「あ~、いい雰囲気のところ割って入って申し訳ないんだけど…」
カウンターで事の成り行きを見守っていたアーヴァインが、頃合を見計らったかのように声を掛ける。
「…えーと、2人の気持ちもなんとなく分かるし、できれば邪魔したくないんだけど…」
「私達、ちょ~っと急いでるんやけど…」
「!」
「?」
その一言で我に返ったニックが、2人のほうに向き直る。
「…そうだったな、こっちだ」
店の奥の倉庫のような小さな部屋に案内される。鍵を開いたニックが扉を開けると、そこにはたくさんのアイテムが山のように積まれていた。
「なにこれ~~~!!!」
「整理してなくてスマン。どれでも1つ持っていっていいぞ」
この山の中からたった1つのアイテムを探し出すのは至難の業だ。
2人が必死にあちこち探している姿を、ゼルはただじっと待ち、眺めた。
手伝いたくとも、2人が探しているものすら知らないのだ。
「なぁ、何のアイテム探してるんだ?なんか、重要なもんか?」
2人は手を止め、顔を見合わせる。
「え~と、どこから説明知ればいいかな?」
「ゼルはさ、リノアがトラビアにいること、知ってるんだよな?」
「おう、キスティスが参加した作戦のやつだろ。こないだまでニュースでやってたやつ。…それに、昨日の研究所の事件のニュースも見たぜ。まさかとは思うけど、
スコールが絡んでんのかなってくらいには思ってる」
「??」
「スコールのことやないで。リノアのことや」
「はぁ!? 俺、スコールにお前達2人をサポートしてくれって言われたんだぜ」
「スコールに!?」
「スコール、無事だったんだ! …あれ、でもスコールってこのこと知らないはずなんだよね?アーヴィン」
「うん、まだ話してないよ」
「? お前ら何言ってるのかわかんねーよ」
ゼルと会話を続けながらも、2人は探す手を休めない。そこに山と詰まれたアイテムはほとんどがガラクタやどうでもいいようなものばかりで、実際に役に立つと思われる
もののほうが遥かに少ない。
「えーとね、簡潔に説明すると、リノアの魔力を抑えてるアイテムの効果が切れて、力が溢れ出してるみたいだから、なるべく早くそのアイテムを見つけてトラビアにいる
リノアに届けたいんだよ」
「で、エスタのオダイン館長からここのカード好きな人にあげたて言うから探しにきたんや」
「リノアの力が!?大変じゃねーか! …そうか、スコール、たぶんそのこと何かで知ったんだな。俺に首尾よくいったらトラビアに連絡入れるように言ってたからさ。
…リノアんとこ飛んでったんだろうな」
「キスティに連絡取ったのかもね~」
「あぁ、そうかも」
たくさんのガラクタが無造作に放り込まれた大きな箱をひっくり返し、その奥にあった小さな箱を見止める。
僅かに擦れて消えかかってはいるが、オダイン研究所のマークが刻印されている。
「あっ、あった!きっとこれだ!」
「早いとこ連絡しよう!きっと2人とも待ってるぞ」
「そうそう、早くしないとあのおじゃ館長に研究されちゃう」
「何度言ったら分かるんだ!ダメなものはダメだ!」
「だから、それなりの代金は払うってば~」
「金の問題じゃねぇんだよ」
「…そんなに大事なものなんだ」
「持ってても意味はねぇがな…」
「だったら!」
あまり綺麗とは言い難い小さなパブ。
そこで言い合っているのはこの店の主人らしき男と、やっとここに辿り着いたアーヴァインとセルフィ。
レンタカーショップで聞いたこの店を探すのは簡単だったが、例のアイテムを譲り受けるのは簡単にはいきそうもなかった。
「お2人さん、あんたらじゃ話になんないよ。カードをただの遊びだと思ったら大間違いなんだぜ。アイテムが欲しけりゃ、カードで勝負だ」
「…う~ん、困ったな~、僕はカードわかんないし…。セフィは?」
「あたしもよくわかんない。あの子らが面白半分でやってるのは見たことあるんやけど…」
「だったら、とっとと帰んな!カードもできねぇ奴にはゴミ1つもやる訳にゃいかねーぜ」
突然、出入り口のドアが強引に開かれた。
先ほど到着し、たまたまこの会話を聞いてしまったのだ。
勢いよく開かれたドアに、その場にいた者達の視線を集める。
「その勝負、俺に預けて貰おうか!」
「ゼル!?…なんで?」
「…ゼル、だと…?」
「久しぶりだな、“疾風のニック”」
突然の乱入者に誰もが驚いた。
怪訝そうな顔を浮かべる店にいた男達と、状況が理解できない2人の教官。
真剣な顔付きで歩み寄るゼルは、アーヴァインとセルフィを背に退けて店の男達の前に立った。
「…お前は、“不死身のゼル”…!」
互いに睨みあう両者は、ニヤリと口端を引き上げた。
「その名で呼ばれるのも久しぶりだぜ、元気そうじゃねぇか、不死身のゼル」
「あぁ、俺もそうさ」
状況を飲み込めずにポカンと呆けてしまっていた2人がゼルに声を掛ける。
「…ゼル…!? なんでここに? …って言うか、何それ?」
「詳しい話は後で。一先ずこの勝負、俺に任せてくれるか?」
ニックと呼ばれた店のオーナーらしき男の影から、1人の青年が近付いてきた。
手にしていたカードの束を弄んでいる。
よほど腕に自信があるのか、ニヤニヤと薄笑いを浮かべながらゼルを挑発する。
「店長、俺にやらせて下さいよ…」
「やめておけ、お前では勝てん」
「んなこと、やってみなくちゃ分からないじゃないですか!…店長の知り合いなんですか!?」
「…因縁のな」
「どんな因縁か知らねぇが、まずは俺が相手だ。不死身のゼルとやら」
「おもしろい。受けてやるぜ」
ゼルのほうもやる気満々だ。
「…ルールは?」
「俺はどれでも構わないぜ」
「じゃあ、勝手に決めさせて貰うぜ。俺が得意としてるのは“ランダムハンド”以外だ。…どうだ?」
「…自分でセレクトできるのは、俺も嬉しいな。よし、いいぞ」
「いざ!」
「勝負!」
この男の実力はどの程度通じるものなのか、それは伺い知ることはできないが、ゼルの前に崩れ落ちた彼の顔は悔しさに染まっていた。
次の相手はお前だ、と言わんばかりに店長を睨みつけるゼル。
しかし、ニックは動かない。カードを出す素振りも見せず、ただじっとゼルの熱く燃える目を眩しそうに見つめた。
「…? どうしたんだ、ニック。 あの風を切るようなガーデン一の速さのカード捌きが自慢だっただろ?」
「…俺は、もう、お前のように何度も立ち上がる力なんてないのさ」
「どうしたんだ、『CC団裏のエース』ともあろう奴が…」
「懐かしいな、裏のエース…。そういうお前は『影のセブンスプレイヤー』だったか? …ガーデンで毎日面白おかしく過ごし、俺に挑戦してきた奴は数知れず。
語り継がれるCC団の幹部達への挑戦は、俺たちカードプレイヤーにとっては誇りのようなものだった。そしていつしか裏のエースなんて座につくこともできた。
だが卒業し、ガーデンを去ると誰も俺に挑戦してくる奴なんていなくなった。俺は大人になり、この親父の店を継ぎ、そして社会というものの厳しさを知った。
もう、カードに浮かれてる場合じゃねぇってことを嫌ってほど思い知った」
「…寝ながらでもカードを手放さなかったお前が、まさかこんなことになっていたとは…」
「どれだけカードへの情熱が熱く注がれようとも、所詮それはお遊戯でしかねぇ。」
「…ニック…」
「だが、いくら忘れようとしても、忘れることなんて、できなかった…! 俺がガーデンにいた頃のドールとは違う。世界のあちこちから集まるカード野郎の手元に
何度イラつきを覚えたことか・・・!お前のように負けても負けても立ち上がる根性なんて全くない奴に何度拳を食らわせてやろうと思ったことか・・・!」
「て、店長、まさか店長がそんな思いをしていたなんて…」
「また、カードをやれよ、ニック」
「…ゼル…」
「あ~、いい雰囲気のところ割って入って申し訳ないんだけど…」
カウンターで事の成り行きを見守っていたアーヴァインが、頃合を見計らったかのように声を掛ける。
「…えーと、2人の気持ちもなんとなく分かるし、できれば邪魔したくないんだけど…」
「私達、ちょ~っと急いでるんやけど…」
「!」
「?」
その一言で我に返ったニックが、2人のほうに向き直る。
「…そうだったな、こっちだ」
店の奥の倉庫のような小さな部屋に案内される。鍵を開いたニックが扉を開けると、そこにはたくさんのアイテムが山のように積まれていた。
「なにこれ~~~!!!」
「整理してなくてスマン。どれでも1つ持っていっていいぞ」
この山の中からたった1つのアイテムを探し出すのは至難の業だ。
2人が必死にあちこち探している姿を、ゼルはただじっと待ち、眺めた。
手伝いたくとも、2人が探しているものすら知らないのだ。
「なぁ、何のアイテム探してるんだ?なんか、重要なもんか?」
2人は手を止め、顔を見合わせる。
「え~と、どこから説明知ればいいかな?」
「ゼルはさ、リノアがトラビアにいること、知ってるんだよな?」
「おう、キスティスが参加した作戦のやつだろ。こないだまでニュースでやってたやつ。…それに、昨日の研究所の事件のニュースも見たぜ。まさかとは思うけど、
スコールが絡んでんのかなってくらいには思ってる」
「??」
「スコールのことやないで。リノアのことや」
「はぁ!? 俺、スコールにお前達2人をサポートしてくれって言われたんだぜ」
「スコールに!?」
「スコール、無事だったんだ! …あれ、でもスコールってこのこと知らないはずなんだよね?アーヴィン」
「うん、まだ話してないよ」
「? お前ら何言ってるのかわかんねーよ」
ゼルと会話を続けながらも、2人は探す手を休めない。そこに山と詰まれたアイテムはほとんどがガラクタやどうでもいいようなものばかりで、実際に役に立つと思われる
もののほうが遥かに少ない。
「えーとね、簡潔に説明すると、リノアの魔力を抑えてるアイテムの効果が切れて、力が溢れ出してるみたいだから、なるべく早くそのアイテムを見つけてトラビアにいる
リノアに届けたいんだよ」
「で、エスタのオダイン館長からここのカード好きな人にあげたて言うから探しにきたんや」
「リノアの力が!?大変じゃねーか! …そうか、スコール、たぶんそのこと何かで知ったんだな。俺に首尾よくいったらトラビアに連絡入れるように言ってたからさ。
…リノアんとこ飛んでったんだろうな」
「キスティに連絡取ったのかもね~」
「あぁ、そうかも」
たくさんのガラクタが無造作に放り込まれた大きな箱をひっくり返し、その奥にあった小さな箱を見止める。
僅かに擦れて消えかかってはいるが、オダイン研究所のマークが刻印されている。
「あっ、あった!きっとこれだ!」
「早いとこ連絡しよう!きっと2人とも待ってるぞ」
「そうそう、早くしないとあのおじゃ館長に研究されちゃう」