Chapter.29[エスタ~トラビア]
~第29章 part.2~
持ってきたもう1組の着替えを持って、ウェンディはスコールが眠る部屋へ静かに入っていった。
ベッドでは、夢に魘されているのか苦しそうな唸り声を低く上げているスコールがいる。
近付き、声を掛ける。
「スコール様!」
突然、物凄い力で腕を掴まれた!
その痛みにウェンデイは顔を歪める。
「…スコール様?」
目を覚ましたスコールが、自分がしでかしたことに気付き謝罪する。
喉の渇きを覚え、枕元に用意された水を飲み干す。
「起こしてすみません。2時間経ちましたので」
「いや、こちらこそ悪かった。…大丈夫か?」
「悪い夢でも見られたんですか?」
「………」
部屋の電話が鳴り、受け取ったウェンディがそれをスコールに手渡した。
「ガーデンからです」
「…スコールだ」
『…キスティスよ』
「!!どうして本当のことを言わなかった!」
『知ってたと思ってたのよ!作戦の始まる前に、レジスタンスの1人にあなたに伝えるように頼んだの。だから…』
「…あの時か…。わかった、もう済んだことだ」
いつもの額に手を当てる仕草をしてスコールが答える。
『ごめんなさい、スコール。…それで、今回連絡したのはアーヴァインとセルフィの件なんだけど…』
「あのガキ共か、子供だけでこんなことさせるなんて、何を考えているんだ」
『確かにそうだけど、それとは別件』
「?」
『実は昨夜トラビアから通信が入ったの。リノアの様子がおかしいって。
私、あなたがいないことでリノアが寂しがっている、くらいにしか捉えていなかったんだけどちょっと気になって…。
今日も昼頃にセルフィから聞かれたのよ。オダイン館長の所在について。
どうしてあの2人が彼のことなんて聞いたのかその時は分からなかったんだけど、もしかして、リノアに何かあったんじゃないかしら。
あなた、彼らに会ったんでしょ?何か聞いてない?』
「リノアに!? …そんなことは聞いてない」
『…また話の途中で走りだしちゃったクチね…。彼女、今トラビアガーデンにいるわ』
「わかった。俺もオダインに連絡を取る。知らせてくれて助かった」
『じゃ、これで貸し借りなしね』
「あぁ」
キスティスとの会話の余韻もまだ消えぬ内から、スコールは別のところに電話をかける。
最初に電話の応対をした女性オペレータにオダインを呼び出してもらうが、その当人は中々出ない。
スコールはイラついていた。
やっと出たオダインに思わず怒鳴ってしまう。
スコールを怖い奴と思い込んでるオダインは、スコールと話すのをあまり好ましく思っていない。
電話に出ることを渋っているうちに益々スコールを怒らせているということに気付くのはいつのことだろうか?
2人が会いに来たこと、本物のリノアは別のところにいること、そしてそのリノアが今どんな状態にあるのか、オダインブランドに関することなど洗いざらい吐かされた。
『…それからお前と相談したいとも言ってたでおじゃる』
「何を?」
『オダインブランドに関する事柄でおじゃろう』
「2人はどこへ?」
『ドールでおじゃる。ドールのある男にアイテムを1つプレゼントしたことがあると言ったら、飛び出して行ったでおじゃる』
「ドール!? ドールのどこだって?」
『パブでおじゃる。カードゲーム好きな男だったでおじゃる』
「カードゲーム!? プレゼントってまさか……負けたのか…」
『う、うるさいでおじゃる!もう話すことはないでおじゃる!』
「わかった、礼を言う。ラグナにも一言言っておこう」
『感謝する気持ちがあるのなら、オダインにリノアの研究をさせるでおじゃる!』
「もう引退したんだろ? …それに、研究所はもうない」
『研究所くらいすぐにまた作るでおじゃる!オダインは凄いのでおじゃる!』
「わかった。オダインはすごい、じゃあな」
オダインとの会話を早々に切り上げ、すぐにまた別のところに通信を入れる。
「スコールだ。ディン教官を呼んでくれ」
『……はい、ゼル・ディンです』
「スコールだ」
『ええっ!! スコール? マジで!? 俺にかけてきたのってマジでスコール!? 久しぶりだな~!
あっ、もしかしてキスティスか?あいつ忙しいもんな』
「ゼル、頼みたいことがある」
『えっ、俺!? スコールが俺に頼み? いや、参ったな~』
「無理なら他を当たる」
『ちょ、ちょっと待てよ。引き受ける!俺に任しときな!』
「まだ内容も話していない」
『俺に頼むってことは、俺にしかできねぇってことだろ? やってやるぜ! …で、何をすればいいんだ?』
「カードゲームだ」
『…はっ? スコール、カード始めたのか?興味ないとか言ってさ、実は興味あったんだ。
いいぜ、この俺に挑戦とは余程自信があるんだな』
「…相手は俺じゃない。ドールにいる」
『ドール?』
「本当の目的は、その男が持つアイテムだ。アーヴァインとセルフィが向かっているが、早くても到着するのは明日の朝だ。
詳しくは2人から聞いて欲しい」
『つまり、そのアイテムはカードゲームじゃねぇと手に入らねぇってことか』
「そうだ。お前の強さを見込んで頼む」
『そう言われると引き下がれねぇな~。よし、やってやるぜ。…で、2人はいつ着くって?』
「夕方エスタを出発する列車に乗ったと思われる。
ティンバーに到着するのは夜明け前、そこからドールまではもう少しかかるだろう。首尾よく行ったら連絡をくれ。俺はトラビアにいる」
通信機のスイッチを切ってから、溜息を1つ。
「(相変わらず熱くて煩い奴…)」
→part.3
持ってきたもう1組の着替えを持って、ウェンディはスコールが眠る部屋へ静かに入っていった。
ベッドでは、夢に魘されているのか苦しそうな唸り声を低く上げているスコールがいる。
近付き、声を掛ける。
「スコール様!」
突然、物凄い力で腕を掴まれた!
その痛みにウェンデイは顔を歪める。
「…スコール様?」
目を覚ましたスコールが、自分がしでかしたことに気付き謝罪する。
喉の渇きを覚え、枕元に用意された水を飲み干す。
「起こしてすみません。2時間経ちましたので」
「いや、こちらこそ悪かった。…大丈夫か?」
「悪い夢でも見られたんですか?」
「………」
部屋の電話が鳴り、受け取ったウェンディがそれをスコールに手渡した。
「ガーデンからです」
「…スコールだ」
『…キスティスよ』
「!!どうして本当のことを言わなかった!」
『知ってたと思ってたのよ!作戦の始まる前に、レジスタンスの1人にあなたに伝えるように頼んだの。だから…』
「…あの時か…。わかった、もう済んだことだ」
いつもの額に手を当てる仕草をしてスコールが答える。
『ごめんなさい、スコール。…それで、今回連絡したのはアーヴァインとセルフィの件なんだけど…』
「あのガキ共か、子供だけでこんなことさせるなんて、何を考えているんだ」
『確かにそうだけど、それとは別件』
「?」
『実は昨夜トラビアから通信が入ったの。リノアの様子がおかしいって。
私、あなたがいないことでリノアが寂しがっている、くらいにしか捉えていなかったんだけどちょっと気になって…。
今日も昼頃にセルフィから聞かれたのよ。オダイン館長の所在について。
どうしてあの2人が彼のことなんて聞いたのかその時は分からなかったんだけど、もしかして、リノアに何かあったんじゃないかしら。
あなた、彼らに会ったんでしょ?何か聞いてない?』
「リノアに!? …そんなことは聞いてない」
『…また話の途中で走りだしちゃったクチね…。彼女、今トラビアガーデンにいるわ』
「わかった。俺もオダインに連絡を取る。知らせてくれて助かった」
『じゃ、これで貸し借りなしね』
「あぁ」
キスティスとの会話の余韻もまだ消えぬ内から、スコールは別のところに電話をかける。
最初に電話の応対をした女性オペレータにオダインを呼び出してもらうが、その当人は中々出ない。
スコールはイラついていた。
やっと出たオダインに思わず怒鳴ってしまう。
スコールを怖い奴と思い込んでるオダインは、スコールと話すのをあまり好ましく思っていない。
電話に出ることを渋っているうちに益々スコールを怒らせているということに気付くのはいつのことだろうか?
2人が会いに来たこと、本物のリノアは別のところにいること、そしてそのリノアが今どんな状態にあるのか、オダインブランドに関することなど洗いざらい吐かされた。
『…それからお前と相談したいとも言ってたでおじゃる』
「何を?」
『オダインブランドに関する事柄でおじゃろう』
「2人はどこへ?」
『ドールでおじゃる。ドールのある男にアイテムを1つプレゼントしたことがあると言ったら、飛び出して行ったでおじゃる』
「ドール!? ドールのどこだって?」
『パブでおじゃる。カードゲーム好きな男だったでおじゃる』
「カードゲーム!? プレゼントってまさか……負けたのか…」
『う、うるさいでおじゃる!もう話すことはないでおじゃる!』
「わかった、礼を言う。ラグナにも一言言っておこう」
『感謝する気持ちがあるのなら、オダインにリノアの研究をさせるでおじゃる!』
「もう引退したんだろ? …それに、研究所はもうない」
『研究所くらいすぐにまた作るでおじゃる!オダインは凄いのでおじゃる!』
「わかった。オダインはすごい、じゃあな」
オダインとの会話を早々に切り上げ、すぐにまた別のところに通信を入れる。
「スコールだ。ディン教官を呼んでくれ」
『……はい、ゼル・ディンです』
「スコールだ」
『ええっ!! スコール? マジで!? 俺にかけてきたのってマジでスコール!? 久しぶりだな~!
あっ、もしかしてキスティスか?あいつ忙しいもんな』
「ゼル、頼みたいことがある」
『えっ、俺!? スコールが俺に頼み? いや、参ったな~』
「無理なら他を当たる」
『ちょ、ちょっと待てよ。引き受ける!俺に任しときな!』
「まだ内容も話していない」
『俺に頼むってことは、俺にしかできねぇってことだろ? やってやるぜ! …で、何をすればいいんだ?』
「カードゲームだ」
『…はっ? スコール、カード始めたのか?興味ないとか言ってさ、実は興味あったんだ。
いいぜ、この俺に挑戦とは余程自信があるんだな』
「…相手は俺じゃない。ドールにいる」
『ドール?』
「本当の目的は、その男が持つアイテムだ。アーヴァインとセルフィが向かっているが、早くても到着するのは明日の朝だ。
詳しくは2人から聞いて欲しい」
『つまり、そのアイテムはカードゲームじゃねぇと手に入らねぇってことか』
「そうだ。お前の強さを見込んで頼む」
『そう言われると引き下がれねぇな~。よし、やってやるぜ。…で、2人はいつ着くって?』
「夕方エスタを出発する列車に乗ったと思われる。
ティンバーに到着するのは夜明け前、そこからドールまではもう少しかかるだろう。首尾よく行ったら連絡をくれ。俺はトラビアにいる」
通信機のスイッチを切ってから、溜息を1つ。
「(相変わらず熱くて煩い奴…)」
→part.3