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Chapter.24[エスタ]

第24章part5


「…話せ」
市街地へ入り、車は一般道を進む。
「彼女は、トラビアにいます」
「トラビア…!?」
頭の上を、轟音を上げてラグナロクが飛び去った。
そしてそれを追うかのように、何台ものヘリが同じ方向に飛んでゆく。
「えっと、何から話せばいいのか…。この作戦は、さっき言われた通り、全てカーウェイ教官の指示で行われたもの。
 …ガルバディアは、ガーデンか軍かは分かりませんが、レジスタンスの中に送られた密偵により、魔女のことを知りました。何年か前にあった一掃作戦の時です。
 その後、軍は政府やガーデンの力を借り、魔女がリノアだということを突き止めた。なんせ中々表に出ないから、あちらさんは苦労したそうです。
 そしてこの魔女拉致計画が浮上。実行された。10年前、当時の魔女戦争の時の軍の指揮を執っていた経歴から、再び彼にその命が下され、カーウェイ教官は軍に戻るようにとの打診まで受けたそうです…
 ガルバディア政府は、魔女を恐れていた。…いえ、進行形ですね。10年前と同じことが起こるのを防ごうとしたんです。魔女を殺すことはできない。ならばまた永遠に封印してしまえ、そう考えたんです」
「…カーウェイは…?」
「軍に戻ることを断った彼には、この魔女拉致計画を実行するしかなかった。そこで、10年前の魔女戦争の時に裏で暗躍したSeeDを…」
「…わかった。もういい。…自らが指揮を執ることでリノアを守ろうとしたのか。人形を身代わりにして…」
「リノアって、マジで魔女だったんだ…」
「しっ!ホープ兄さん、聞こえちゃう!」
「…ところで、このガキ共は何だ?」
ハンドルに乗せた手とは逆の手の親指で後部座席を指し示す。
「ガキっていうなよな。あんたのこと、おっさんって呼ぶぜ」
「ホープ兄さん!! …す、すいません」
「(…おっさん…)」
「あ、ナイト、この2人は…」
「ホープ・キニアス、アーヴァインの息子か…?」
「!!俺のこと知ってんのか!?」
「当然だ。お前達の両親の結婚式の時には、お前はすでに腹の中にいた」
「ええ~~~~っ!!!」
3人の合唱に、思わず耳を塞いでしまう。
「(…やれやれ)どころで、ボルドとラグナはなぜいない?」
「ナイト、TV見てないんですか?」
「あぁ」
「ガルバディア大統領、ボルド・ヘンデル氏は昨夜銃撃され、入院中です」
「魔女派の仕業らしいぜ」
2人も後部座席から身を乗り出すように会話に参加してくる。
「魔女派…?」
「命に別状は無いそうですが、その後すぐにガルバディア政府に対して宣戦布告を発表した電波ジャックがあったんです。」
「ガルバディア政府は混乱してるようですね」
「よっぽど嫌われてるんだな、そいつ」
「………」
「クーデターを起こす用意もあるとかなんとか…。そいつの名前……ウィッシュ、何と言ってたかな?」
「ハリー・アバンシアです」
「あぁ、それそれ、ハリ…」
「ハリー・アバンシアだと!?」
「知ってるのか?」
「…ラグナは?」
ランスはウィッシュのほうを向いたが、お手上げのポーズをしている。
「エスタ大統領のほうは、何も知らないんだ。ニュースでは、急な予定変更としか…」
「…またか…」
そう呟いて溜息を零した。

スコールの運転する車は、リフターの往来する街の中でも平気で進んでいく。
中心部にその存在を誇張しているかのように立つ官邸に到着すると、スコールは車を止めた。
高い塀の間には鉄格子のような頑丈な門と、そこを守る門番。
スコールが止めた車のほうへ近づいてくる。
「スコールさん、マズいですよ…」
「なにやってるんだよ!」
手に何やら怪しげな機械を持った男が近づいてきた。
車のウィンドウを開けて、スコールが顔を出す。
「失礼」
スコールの目にペンライトのようなものを近づけ、男は何やら機械と照合しているようだ。
「コードを」
「RAIN72625スコール・レオンハート」
「…失礼しました。どうぞ」
男が車から離れると、鉄格子の門がゆっくりと開いていく。
3人は訳がわからずポカンとしている。
驚きに声も出ないのだ。
そのまま屋敷の庭を通り、玄関とおぼしき建物の正面に車を止めたスコールは車を降りてしまった。
「レンタカーなんだ。返しておいてくれ」
どこからともなく声が聞こえる。
『かしこまりました』
3人も、スコールの後について、屋敷の中に入っていく。しかし、未だに何がなんだかわからない。
なぜこんなところに来たのか?
そもそもここはどこなのか?
スコールが1つの部屋の前で立ち止まる。
「ここで待っててくれ。自由に使っていい。俺は少し休む」
「…あ、ナイト、これは一体どういうことなのか、説明を…」
「スコールさんて、すごいお金持ちなんですか!?」
「っていうか、ここ、大統領官邸じゃなかったか!?」
3人の驚きの声に、また呆れたように溜息交じりで答える。
「…なんだ、知らなかったのか」

使用人らしき男が電話を持って現れた。
「スコールだ。 ……ああ。 ……ラグナ、今どこにいる? ……エルオーネも一緒か ……そうちょくちょくいなくなるのも困るだろう。
 ……ああ、聞いた。明日行く。 …あぁ、わかった」
電話を返したスコールは3人に向き直った。
「お前達も少し休め。何かあったら部屋の電話を使え」
そう言い残して、スコールは屋敷の奥へ消えていった。

「さっきから思ってたんですけど、スコールさん、大統領のこと呼び捨てでしたよね…」
「ラグナって、やっぱレウァール大統領のこと、だよな…?」
「…ナイト、あなたは一体何者なんですか…」
大きなワゴンを押して、中年の女性がやってきた。
「いらっしゃいませ、お坊ちゃん方。さ、中へどうぞ」
ワゴンに押されるように、部屋の中に押し込まれる。
広い立派な屋敷に似合いの調度品で飾られた客室のようだ。
3人は思わず感嘆の声を漏らす。
「昨日のホテルも凄かったですけど…」
「こっちはもっとすげーな!豪華だ!」
「……あの・・・」
「お坊ちゃん方のお世話をさせて頂きます、ウェンディと申します。何かご入用のものがございましたら何なりとお申し付け下さいませ」
メイドのエプロンの裾をちょっと摘んでの優雅なお辞儀を披露した。
「ナイトは、スコールは大統領とどんな関係なんです?」
ランスの質問に、2人の少年も興味津々だ。
「まぁ、ご存じなかったのですか?スコール様は、レウァール大統領のご子息ですよ」




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